制御不能なS級魔法使いは、パーティーのお荷物 ― ストレス解消に神々の領域で無双してきます ―

霧島

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2-3 魔王蒸発

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🔥第2章 S級案件“魔王復活”

2-3 魔王蒸発

 大地を焼き尽くした火の海の中央。
 灰と硫黄の臭いが漂う中で、ゆっくりと“それ”が姿を現した。

 焦土の裂け目から立ち昇る黒い炎。
 そこに現れたのは、無数の魔力をまとった巨躯――魔王デスレクス。

「……我が軍を滅ぼしたのは……貴様か?」
 低く響く声が空を震わせる。
 ただ声を聞いただけで、勇者たちは膝をついた。

 だが、ひとりだけ平然としている少女がいた。

「え? あ、魔王さんですね! 初めまして!」
「貴様、人間か……?」
「はいっ!」
「……なぜ笑う」
「いやぁ~、初対面の人と話すときは、笑顔が大事って言われまして!」

 魔王は一瞬、返す言葉を失った。
 炎と殺気をまといながらも、なぜか話のペースを乱される。


---

「……貴様が我が軍を焼き払ったのだな」
「たぶん、そうだと思います!」
「たぶん!?」
「Lv2ファイヤーボール撃ったら、みんな溶けちゃって……」
「……“溶けた”だと?」
「うん、たぶん綺麗に!」
「綺麗にってなんだ!?」

 魔王は怒りの咆哮を上げた。
 炎の柱が天へと伸び、大地が裂ける。

「貴様ごとき人間が我を愚弄するか! その身を灰にしてやろう!!」

 魔王が右手を掲げ、闇のエネルギーを解き放つ。
 黒い閃光が空を裂き、地面をえぐりながらダイアを飲み込む。

 勇者たちは目を覆った。

「だ、ダイアさん!? まさか……!」
 次の瞬間、風が吹き抜ける。

「うわぁ~、髪の毛がちょっと焦げました!」

 無傷。

 ダイアはほこりをはたきながら立ち上がった。
「すごい魔法ですね! でも、火力がもうちょっと欲しいかも?」
「“もうちょっと”!?」

 魔王は信じられないものを見る目で、目を見開いた。
 魔力感知の視界に映る“彼女の魔力量”が――自分の数千倍。

「馬鹿な……人間の器で、なぜこの魔力……」
「えーと、生まれつき?」
「“生まれつき”!? それで説明がつくと思っているのか!?」


---

 魔王の怒りは頂点に達した。
 周囲の火炎が逆流し、空間ごと歪む。
「貴様の存在は、この世の理を乱す! 滅ぶがいい――《ヘル・インフェルノォォォ!!》」

 地平線まで覆う、超広域の滅界炎。
 空が裂け、大気が焦げる。

 だが。

「おー、すごい! 見た目派手ですね!」
「なっ……なぜ無傷なんだ!!」
「暑いけど、まぁサウナみたいなもんですよ!」
「サウナぁぁぁ!? この世の終焉をサウナ扱いだとぉぉぉ!!!」


---

 ダイアはくるりと髪を結び直し、軽く手を前に出した。
「じゃあ、ちょっと反撃してみますね!」
「貴様ごときに何が――」

「ファイヤーボール Lv2!」

 ぽん、と可愛らしい音とともに、小さな炎の球が生まれた。
 勇者たちが思わず息をのむ。
「……小さい?」
「……あれ、見た目ほどでも――」

 ――ズォォォォォォン!!!

 次の瞬間、太陽がもう一つ生まれた。

 轟音。閃光。
 空が赤く染まり、地平線が白く焼ける。
 衝撃波が山々を押し潰し、海を割った。


---

 ギルド本部。

「ギルマス!! また観測不能です!!!」
「おい今度はどこだ!?」
「……北半球です!」
「範囲がでけぇぇぇぇぇぇ!!!」

 リナが震える声で報告する。
「魔王軍の本拠地、完全消滅……! あの……地図からも消えました……!」
「地図が!? 地図って消えるの!?」
「燃えました!!!」
「うわあああああああ!!!」


---

 戦場。

 ダイアは服の裾を整え、ふぅと息をついた。
 空気が灼けるように熱い。
 だがその中で、黒い影がわずかに残っていた。

「……こ、こんな……神の火か……?」
 魔王デスレクスの身体が崩れ落ち、蒸発していく。
「せめて……名を……」
「えっ、名ですか? ダイアですっ!」
「覚えて……おこう……ダイ……ア……」
 そのまま、影は完全に消えた。


---

 静寂。
 灰の雨が降り注ぎ、風が吹く。

 勇者レオンが呟いた。
「……まさか、魔王が……一撃で……」
「うん、ちょっと強かったけど、Lv3までは使ってませんよ?」
「Lv3になったら何が起きるんだ……?」
「うーん、たぶん“世界がリセット”されるかも?」
「冗談ですよね!?」
「たぶん!」


---

 一方、王都ギルド。

「ダイアから通信入りました!」
『ギルマスー! 終わりましたー!』
「終わったってどっちが!?」
『魔王さん、蒸発しました!』
「やっぱりぃぃぃぃ!!!」

 バルドは頭を抱えて叫んだ。
「国が半分燃えてるぞぉぉぉ!!!」
『えっ、やっぱり強すぎました?』
「やっぱりじゃねぇぇぇぇぇ!!」
 リナがメモを取りながら呟く。
「魔王、ザコキャラ化。ダイア、災害級確定……」
「モブどころか、世界のバグだよぉぉぉ!!!」


---

 炎のあとには、ぽつりと立つダイアの影。
 その表情は、どこか満足げだった。

「やっぱり、全力で撃つと気持ちいいですね!」
 遠くで勇者が呟く。
「魔王……人類史上最大の脅威……わずか三分で終了……」
「次のボス、もういませんかね?」
「お願いだからいないで……」

 だがその頭上、空の向こうから――。

> 「……人間にしては上出来だ。」



 不穏な笑い声が響く。

「え? 今の、誰?」
 彼女は小首を傾げて笑った。

 ――神々の領域にて、次なる“観測外の存在”が、静かに目を覚まそうとしていた。


---

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