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編入試験!⑴
「ねぇ、コウちゃん。…コッチ向いてよ。コウちゃんってば」
「…なんだよ」
貼り付いた笑顔。サラサラとした銀色の髪。二つに分けたお下げの髪型。深緑の色の髪飾りが二つ、髪の束ごとに付けてある。
どう見てもオンナにしか見えない。
ユファラナ・ベイ。
この男の名だ。
名前まで女々しい。
「あの力は外では使っちゃダメだからね。口外もしないこと。わかった?」
ユファラナは唇に人差し指を当てて、シーッとポーズした。
…けっ。
「…うるせーな。俺に一人で外に出る機会なんてねーだろ。どうせお前が一日中見張ってる」
そう言うと、ユファラナは何故か固まった。いつもの貼り付いた笑顔を剥がして、真顔で。
「…?…なんだよ」
「…ううん。……そうだね」
そう言うと、ユファラナは俺から顔を逸らした。
⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎
首都クートジスォ。
そこかしこに自己主張の激しいビルたちが建ち並ぶ。
出店のような時代遅れのラーメン屋は、今日もめいっぱい声を張り上げてシャカシャカと手を動かしていた。
時代遅れといっても商売は成り立っている。レトロな雰囲気が好きな客もいるものだ。
「らっしゃいらっしゃい!ここでしか食べれない、タピオカラーメンやってんよー!」
一方、こちらにも時代に乗り遅れた少年が一人。
「…わっかんねぇ~」
彼は身体に見合わない大きな迷彩柄のリュックサックと、何に使うのやら、細長いヒモのような白いものを手に巻きつけている。
…うっへぇ~なんだこれ…迷路かよここ。
てかビルでか!なんか人とか車、うじゃうじゃいるし…。
俺は片手に持った地図と、もう一度真剣に睨み合った。
…やっぱ、わかんねぇ。
そろそろ時間やべーぞ。
「どこだ、ここ」
全体的に薄汚い印象を持たせるその少年は、この街では異端である。
道行く人々は、彼を何秒か見つめては去っていった。
くっそ、チラチラ見んなうっとーしい。
「ぐおおおおぅぎゅるぅるるる…」
突如鳴り響く獣の呻き声のような音。
うおっ、なんだ?!
………あ。
「…腹、へったなあ」
⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎
「こんにちはー!」
馬鹿で無垢ながきんちょの可愛い笑顔。
…を演じて俺はラーメン屋に入った。
ウエエエエ~…俺キモいキモいキモいキモい!
俺は身分を隠さなきゃならない。何もわかってなさそうな無害なポワワン子供を演じて、周りから舐められていた方が安全だ。
…と、ユファラナが言っていた。
あいつの言う事を聞くのは不本意だけ
ど、実際その通りだと思う。
そのラーメン屋に入った途端、俺に数々の誘惑が襲いかかってきた。
この香り。麺を啜る音。
ヤバイ。腹が今にもえぐれて死にそう。
「おう、らっしゃいボウズ!一人かい?」
「うん!」
「そうかそうか、偉いなあ。何食う?」
腹一杯食って腹満たしてーよ…とは言っても、そんな金も時間もないのだ。
「一番安いのお願い」
「安いのでいいのかい」
俺はカウンターの丸椅子に座った。キイキイ軋む音が心地良い。
少し待つと、海苔を大量に散らしたラーメンが出てきた。見たところ、海苔以外何も乗っていない。
「ほいお待ちどお!海苔たっぷりラーメンだ」
「ありがとおじちゃん」
ラーメンが到着するやいなや、俺は水を飲むかのごとくラーメンを口いっぱいにかき込んだ。
「おいおいボウズ、そんな急がんでもラーメンは逃げねぇぞ」
「おなかすいてるの。それに、時間がないんだ」
「時間?なんかあんのか?」
俺は高速でラーメンを噛み砕いて飲み込んだ。
「僕、入学試験受けるんだ。獅子学園ってとこ。でも行き方分かんなくって迷っちゃったの」
そう言うと、俺と一つ椅子をまたいで座っていた女がピクッと反応する。
…なんだ?
「獅子学園?!そりゃ本気かいな、ボウズ」
「ん?なんかおかしーい?」
「いや、そういうわけじゃないが…あそこってあれだろ、ライオンマティ直属の養成所で競争率が物凄いっていう……ボウズ、そんな若ぇのに工作員目指そうだなんて、偉いなあ」
「エヘヘヘヘ」
…へぇ、そんな凄いとこなのか。
ま、興味ないけど。
「にしても、こんな時期に入学試験なんて珍しいな」
「うん、僕が受けるの編入試験だから」
と、またラーメンをかき込み、水でムリヤリ押し込む。
「ほーお、編入ねぇ…ま、頑張りな!」
「ありがとう。ごちそうさま。500トールでいいんだよね。えっと、さいふさいふ…」
あー、どれが何トールだか分かんねー…めんどくせぇ。
「おう。ちょい待てボウズ」
「ん?なに…うおっ、もががッ」
いきなり菜箸が目の前に現れて、チャーシューが口に突っ込まれた。
…うまっ。
「餞別ってやつだ。食っとけ、金は取らん」
「…ありぶぁと、おっひゃん」
せんべつってなんだ?まあいいや、タダってことだよな。よっしゃ。
にしても、海苔ラーメンもチャーシューもうまかった。
「ねぇおじさん、ここから獅子学園への行き方知ってる?」
「おうよ、地図持ってるか?見せてみろ」
俺は、ズボンの後ろポケットに入れておいたクシャクシャの地図を取り出して、カウンターに広げた。
おっちゃんは裏の部屋から青いペンを持ってきて、地図に矢印を描いて何個か目印を丸で囲んでくれた。
「こっからそんな遠くねぇから、これがありゃ迷うこたないさ。頑張ってこい」
「うん、ありがとう!また来るよ。じゃーね」
無邪気に笑う俺。
うええ~、自分の今の顔を想像すると吐き気がする…
俺はラーメン屋を出て、急いで獅子学園に向かった。
⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎
ラーメン屋で先程から座っていた女が口を開く。
「…餞別ねぇ。馬鹿なことするわね。あの子の様子だと、全然何もわかってなさそうじゃない。言ってあげれば良かったのに」
「なんて言うんだよ、ボウズみたいなひょろっとチビッコは入学どころか試験さえ受けらんねぇぞ、ってか?」
「そうよ。そうやって偽善で夢を持たせるのは酷だわ」
「はっはっは、いいんだよ、夢くれぇ持たせてやりゃあ。そのうち自分でも気付く。それに、若ぇうちは幾らでもチャレンジできる。いっぺんのされてみるこった」
「ふふ、またあの子が来たら、その時は慰めてあげなさいよ」
⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎
改めて言う。
俺はライオンマティ養成所、ついては獅子学園に試験を受けに行く。
………まぁ、暇つぶしだ。
やることねぇから。
ライオンマティっていうのは、この国の国家最高任務を受け持つ、まあとにかくすごい奴らのことらしい(会ったことないし俺もよくわかってない)。
そのライオンマティになる為に集められたのが、獅子学園ってわけだ。
つまり、獅子学園も国立で、すごい奴が沢山集まるらしい。
ま、俺は興味ないけど(2回目)。
大体試験って言っても、一体何をやるのかサッパリわからない。
…ああ。
めんどくせぇな。
「…なんだよ」
貼り付いた笑顔。サラサラとした銀色の髪。二つに分けたお下げの髪型。深緑の色の髪飾りが二つ、髪の束ごとに付けてある。
どう見てもオンナにしか見えない。
ユファラナ・ベイ。
この男の名だ。
名前まで女々しい。
「あの力は外では使っちゃダメだからね。口外もしないこと。わかった?」
ユファラナは唇に人差し指を当てて、シーッとポーズした。
…けっ。
「…うるせーな。俺に一人で外に出る機会なんてねーだろ。どうせお前が一日中見張ってる」
そう言うと、ユファラナは何故か固まった。いつもの貼り付いた笑顔を剥がして、真顔で。
「…?…なんだよ」
「…ううん。……そうだね」
そう言うと、ユファラナは俺から顔を逸らした。
⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎
首都クートジスォ。
そこかしこに自己主張の激しいビルたちが建ち並ぶ。
出店のような時代遅れのラーメン屋は、今日もめいっぱい声を張り上げてシャカシャカと手を動かしていた。
時代遅れといっても商売は成り立っている。レトロな雰囲気が好きな客もいるものだ。
「らっしゃいらっしゃい!ここでしか食べれない、タピオカラーメンやってんよー!」
一方、こちらにも時代に乗り遅れた少年が一人。
「…わっかんねぇ~」
彼は身体に見合わない大きな迷彩柄のリュックサックと、何に使うのやら、細長いヒモのような白いものを手に巻きつけている。
…うっへぇ~なんだこれ…迷路かよここ。
てかビルでか!なんか人とか車、うじゃうじゃいるし…。
俺は片手に持った地図と、もう一度真剣に睨み合った。
…やっぱ、わかんねぇ。
そろそろ時間やべーぞ。
「どこだ、ここ」
全体的に薄汚い印象を持たせるその少年は、この街では異端である。
道行く人々は、彼を何秒か見つめては去っていった。
くっそ、チラチラ見んなうっとーしい。
「ぐおおおおぅぎゅるぅるるる…」
突如鳴り響く獣の呻き声のような音。
うおっ、なんだ?!
………あ。
「…腹、へったなあ」
⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎
「こんにちはー!」
馬鹿で無垢ながきんちょの可愛い笑顔。
…を演じて俺はラーメン屋に入った。
ウエエエエ~…俺キモいキモいキモいキモい!
俺は身分を隠さなきゃならない。何もわかってなさそうな無害なポワワン子供を演じて、周りから舐められていた方が安全だ。
…と、ユファラナが言っていた。
あいつの言う事を聞くのは不本意だけ
ど、実際その通りだと思う。
そのラーメン屋に入った途端、俺に数々の誘惑が襲いかかってきた。
この香り。麺を啜る音。
ヤバイ。腹が今にもえぐれて死にそう。
「おう、らっしゃいボウズ!一人かい?」
「うん!」
「そうかそうか、偉いなあ。何食う?」
腹一杯食って腹満たしてーよ…とは言っても、そんな金も時間もないのだ。
「一番安いのお願い」
「安いのでいいのかい」
俺はカウンターの丸椅子に座った。キイキイ軋む音が心地良い。
少し待つと、海苔を大量に散らしたラーメンが出てきた。見たところ、海苔以外何も乗っていない。
「ほいお待ちどお!海苔たっぷりラーメンだ」
「ありがとおじちゃん」
ラーメンが到着するやいなや、俺は水を飲むかのごとくラーメンを口いっぱいにかき込んだ。
「おいおいボウズ、そんな急がんでもラーメンは逃げねぇぞ」
「おなかすいてるの。それに、時間がないんだ」
「時間?なんかあんのか?」
俺は高速でラーメンを噛み砕いて飲み込んだ。
「僕、入学試験受けるんだ。獅子学園ってとこ。でも行き方分かんなくって迷っちゃったの」
そう言うと、俺と一つ椅子をまたいで座っていた女がピクッと反応する。
…なんだ?
「獅子学園?!そりゃ本気かいな、ボウズ」
「ん?なんかおかしーい?」
「いや、そういうわけじゃないが…あそこってあれだろ、ライオンマティ直属の養成所で競争率が物凄いっていう……ボウズ、そんな若ぇのに工作員目指そうだなんて、偉いなあ」
「エヘヘヘヘ」
…へぇ、そんな凄いとこなのか。
ま、興味ないけど。
「にしても、こんな時期に入学試験なんて珍しいな」
「うん、僕が受けるの編入試験だから」
と、またラーメンをかき込み、水でムリヤリ押し込む。
「ほーお、編入ねぇ…ま、頑張りな!」
「ありがとう。ごちそうさま。500トールでいいんだよね。えっと、さいふさいふ…」
あー、どれが何トールだか分かんねー…めんどくせぇ。
「おう。ちょい待てボウズ」
「ん?なに…うおっ、もががッ」
いきなり菜箸が目の前に現れて、チャーシューが口に突っ込まれた。
…うまっ。
「餞別ってやつだ。食っとけ、金は取らん」
「…ありぶぁと、おっひゃん」
せんべつってなんだ?まあいいや、タダってことだよな。よっしゃ。
にしても、海苔ラーメンもチャーシューもうまかった。
「ねぇおじさん、ここから獅子学園への行き方知ってる?」
「おうよ、地図持ってるか?見せてみろ」
俺は、ズボンの後ろポケットに入れておいたクシャクシャの地図を取り出して、カウンターに広げた。
おっちゃんは裏の部屋から青いペンを持ってきて、地図に矢印を描いて何個か目印を丸で囲んでくれた。
「こっからそんな遠くねぇから、これがありゃ迷うこたないさ。頑張ってこい」
「うん、ありがとう!また来るよ。じゃーね」
無邪気に笑う俺。
うええ~、自分の今の顔を想像すると吐き気がする…
俺はラーメン屋を出て、急いで獅子学園に向かった。
⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎
ラーメン屋で先程から座っていた女が口を開く。
「…餞別ねぇ。馬鹿なことするわね。あの子の様子だと、全然何もわかってなさそうじゃない。言ってあげれば良かったのに」
「なんて言うんだよ、ボウズみたいなひょろっとチビッコは入学どころか試験さえ受けらんねぇぞ、ってか?」
「そうよ。そうやって偽善で夢を持たせるのは酷だわ」
「はっはっは、いいんだよ、夢くれぇ持たせてやりゃあ。そのうち自分でも気付く。それに、若ぇうちは幾らでもチャレンジできる。いっぺんのされてみるこった」
「ふふ、またあの子が来たら、その時は慰めてあげなさいよ」
⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎
改めて言う。
俺はライオンマティ養成所、ついては獅子学園に試験を受けに行く。
………まぁ、暇つぶしだ。
やることねぇから。
ライオンマティっていうのは、この国の国家最高任務を受け持つ、まあとにかくすごい奴らのことらしい(会ったことないし俺もよくわかってない)。
そのライオンマティになる為に集められたのが、獅子学園ってわけだ。
つまり、獅子学園も国立で、すごい奴が沢山集まるらしい。
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