ライオンマティ

rin of the chanchan

文字の大きさ
3 / 4

編入試験!⑴

「ねぇ、コウちゃん。…コッチ向いてよ。コウちゃんってば」

「…なんだよ」

貼り付いた笑顔。サラサラとした銀色の髪。二つに分けたお下げの髪型。深緑の色の髪飾りが二つ、髪の束ごとに付けてある。

どう見てもオンナにしか見えない。

ユファラナ・ベイ。
この男の名だ。

名前まで女々しい。

「あの力は外では使っちゃダメだからね。口外もしないこと。わかった?」

ユファラナは唇に人差し指を当てて、シーッとポーズした。



…けっ。



「…うるせーな。俺に一人で外に出る機会なんてねーだろ。どうせお前が一日中見張ってる」

そう言うと、ユファラナは何故か固まった。いつもの貼り付いた笑顔を剥がして、真顔で。

「…?…なんだよ」

「…ううん。……そうだね」

そう言うと、ユファラナは俺から顔を逸らした。




⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎

首都クートジスォ。

そこかしこに自己主張の激しいビルたちが建ち並ぶ。

出店のような時代遅れのラーメン屋は、今日もめいっぱい声を張り上げてシャカシャカと手を動かしていた。
時代遅れといっても商売は成り立っている。レトロな雰囲気が好きな客もいるものだ。

「らっしゃいらっしゃい!ここでしか食べれない、タピオカラーメンやってんよー!」



一方、こちらにも時代に乗り遅れた少年が一人。

「…わっかんねぇ~」

彼は身体に見合わない大きな迷彩柄のリュックサックと、何に使うのやら、細長いヒモのような白いものを手に巻きつけている。



…うっへぇ~なんだこれ…迷路かよここ。
てかビルでか!なんか人とか車、うじゃうじゃいるし…。



俺は片手に持った地図と、もう一度真剣に睨み合った。



…やっぱ、わかんねぇ。
そろそろ時間やべーぞ。



「どこだ、ここ」

全体的に薄汚い印象を持たせるその少年は、この街では異端である。
道行く人々は、彼を何秒か見つめては去っていった。



くっそ、チラチラ見んなうっとーしい。



「ぐおおおおぅぎゅるぅるるる…」



突如鳴り響く獣の呻き声のような音。



うおっ、なんだ?!

………あ。



「…腹、へったなあ」




⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎

「こんにちはー!」

馬鹿で無垢ながきんちょの可愛い笑顔。
…を演じて俺はラーメン屋に入った。

ウエエエエ~…俺キモいキモいキモいキモい!

俺は身分を隠さなきゃならない。何もわかってなさそうな無害なポワワン子供を演じて、周りから舐められていた方が安全だ。



…と、ユファラナが言っていた。



あいつの言う事を聞くのは不本意だけ
ど、実際その通りだと思う。



そのラーメン屋に入った途端、俺に数々の誘惑が襲いかかってきた。

この香り。麺を啜る音。

ヤバイ。腹が今にもえぐれて死にそう。

「おう、らっしゃいボウズ!一人かい?」

「うん!」

「そうかそうか、偉いなあ。何食う?」

腹一杯食って腹満たしてーよ…とは言っても、そんな金も時間もないのだ。

「一番安いのお願い」

「安いのでいいのかい」

俺はカウンターの丸椅子に座った。キイキイ軋む音が心地良い。

少し待つと、海苔を大量に散らしたラーメンが出てきた。見たところ、海苔以外何も乗っていない。

「ほいお待ちどお!海苔たっぷりラーメンだ」

「ありがとおじちゃん」

ラーメンが到着するやいなや、俺は水を飲むかのごとくラーメンを口いっぱいにかき込んだ。

「おいおいボウズ、そんな急がんでもラーメンは逃げねぇぞ」

「おなかすいてるの。それに、時間がないんだ」

「時間?なんかあんのか?」

俺は高速でラーメンを噛み砕いて飲み込んだ。

「僕、入学試験受けるんだ。獅子学園ってとこ。でも行き方分かんなくって迷っちゃったの」

そう言うと、俺と一つ椅子をまたいで座っていた女がピクッと反応する。

…なんだ?

「獅子学園?!そりゃ本気かいな、ボウズ」

「ん?なんかおかしーい?」

「いや、そういうわけじゃないが…あそこってあれだろ、ライオンマティ直属の養成所で競争率が物凄いっていう……ボウズ、そんな若ぇのに工作員目指そうだなんて、偉いなあ」

「エヘヘヘヘ」

…へぇ、そんな凄いとこなのか。

ま、興味ないけど。

「にしても、こんな時期に入学試験なんて珍しいな」

「うん、僕が受けるの編入試験だから」

と、またラーメンをかき込み、水でムリヤリ押し込む。

「ほーお、編入ねぇ…ま、頑張りな!」

「ありがとう。ごちそうさま。500トールでいいんだよね。えっと、さいふさいふ…」

あー、どれが何トールだか分かんねー…めんどくせぇ。

「おう。ちょい待てボウズ」

「ん?なに…うおっ、もががッ」

いきなり菜箸が目の前に現れて、チャーシューが口に突っ込まれた。



…うまっ。



「餞別ってやつだ。食っとけ、金は取らん」

「…ありぶぁと、おっひゃん」

せんべつってなんだ?まあいいや、タダってことだよな。よっしゃ。

にしても、海苔ラーメンもチャーシューもうまかった。

「ねぇおじさん、ここから獅子学園への行き方知ってる?」

「おうよ、地図持ってるか?見せてみろ」

俺は、ズボンの後ろポケットに入れておいたクシャクシャの地図を取り出して、カウンターに広げた。
おっちゃんは裏の部屋から青いペンを持ってきて、地図に矢印を描いて何個か目印を丸で囲んでくれた。

「こっからそんな遠くねぇから、これがありゃ迷うこたないさ。頑張ってこい」

「うん、ありがとう!また来るよ。じゃーね」

無邪気に笑う俺。



うええ~、自分の今の顔を想像すると吐き気がする…



俺はラーメン屋を出て、急いで獅子学園に向かった。




⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎

ラーメン屋で先程から座っていた女が口を開く。

「…餞別ねぇ。馬鹿なことするわね。あの子の様子だと、全然何もわかってなさそうじゃない。言ってあげれば良かったのに」

「なんて言うんだよ、ボウズみたいなひょろっとチビッコは入学どころか試験さえ受けらんねぇぞ、ってか?」

「そうよ。そうやって偽善で夢を持たせるのは酷だわ」

「はっはっは、いいんだよ、夢くれぇ持たせてやりゃあ。そのうち自分でも気付く。それに、若ぇうちは幾らでもチャレンジできる。いっぺんみるこった」

「ふふ、またあの子が来たら、その時は慰めてあげなさいよ」




⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎

改めて言う。

俺はライオンマティ養成所、ついては獅子学園に試験を受けに行く。



………まぁ、暇つぶしだ。
やることねぇから。



ライオンマティっていうのは、この国の国家最高任務を受け持つ、まあとにかくすごい奴らのことらしい(会ったことないし俺もよくわかってない)。

そのライオンマティになる為に集められたのが、獅子学園ってわけだ。
つまり、獅子学園も国立で、すごい奴が沢山集まるらしい。

ま、俺は興味ないけど(2回目)。



大体試験って言っても、一体何をやるのかサッパリわからない。



…ああ。






めんどくせぇな。



感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。