ライオンマティ

rin of the chanchan

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編入試験!⑵

「はぁい、ここが受付でーす。受験者は受験票を持って並んで下さ~い」



…ふぅ、間に合った。



試験会場のすぐ外には、既に100人くらいの人々が集まっていた。

うっへぇ、編入試験だってのに何でこんな人がウジャウジャいんだよ。



ふと、あいつの言葉が頭をよぎる。



「獅子学園に行きなさい。コウちゃんの実力なら、必ず入れると思うよ」



いつものように張り付いた気色の悪い笑顔。
そんなあいつを思い出して、胸糞悪い気分になった。



「…別に、アンタが言ったからじゃねぇから。俺、何もすることねぇし、暇潰しだし」



俺はそんな風にボソッと呟いた。あいつの思い通りになっているようで腹立たしい。
すると、またあいつの言葉が続いて流れた。



「コウちゃんは、嘘がヘタなんだねぇ」



…ッッッんだとッ!?

イライラが募る。あいつがいつもの気色悪い笑顔で、ニコニコこっちを見ているのを想像してしまう。



……くそッ、殴りてぇ。



「ねぇ、何アンタ、暇潰しで来てるんですって?」

それは、黒い艶やかな髪を、頭のてっぺんに届くくらいに高く縛っている女の子だった。目は少々つり目だがクリクリしている。
その目が、ジロリとこっちを睨んでいた。



…なんだぁ、こいつ?変な口調だな。



「とんだ愚か者ね。親が試験のためにどれだけお金を積んでいるか分かっているの?」



…親?



「え…試験受けんのにカネいんのか?」



あ、やべ、口調変えんの忘れてた。



「当たり前でしょ、ここをどこだと思ってるの。編入ってことは一般の受験生でしょ。それならざっと100万トールはかかるわ」

「ひゃ、100万トールッ?!?」

「何を驚いてるの。それだけの名誉と地位と給与が貰える職業なのよ、ライオンマティは。
ライオンマティになりたいなら、小さい頃からその為にお金を費やすのは必須条件よ。直属の幼稚園だってあるんだから。それに…」

その女は、何故か誇らしげにベラベラと語り始めた。
しかしそんなのに構っていられる状況ではない。



100万トール…。

…うそだろ。そんな金ねぇよ。

ライオンマティのどうたらこうたらに興味はない。
が、試験が受けられないのはキツイ。田舎からこんな都会に出てきた俺の労力はいづこへ状態だ。

「…あの、お金ないと、試験受けられないんですか」

「…?アンタ受験票は持ってるの?持ってるのならもう受験費は払ってあるはずよ」

「受験票?」

話が読めない。
ジュケンヒョウ?なんだそれ。

「はぁ?受験票も持ってないの?じゃあアンタここに何しに来たのよ」



…何しに?



そういえば俺、何しに来たんだ。

…あ、そうだ、暇つぶし、暇つぶしだよ。
ただの遊び。



………うん。帰るか。

だって、しょうがない。受験票もないし、100万トールもかかるんだ。

そもそも、こんなことしてられっか。
めんどくせぇ。

「ごめんなさい、僕、来る場所間違えたみたいです。帰ります」




●●●●●●●●

目が覚めた。

朝なのに薄暗い。いつものように違和感を感じる。

固い板で作られ、毛布を一枚掛けただけの簡素なベッド。少し手を動かすだけで、身体中がギシギシと軋む。

昨日の訓練が、思った以上にキツかった。

「…いってぇ」

隣を見やると、そこにはあの男。
ちょうど目が合ってしまった。

「…おい、ジジイ。何こっち見てんだ、気持ち悪りぃんだよ」

「あはは、コウちゃん元気だねぇ。何より何より。それより僕、まだジジイと呼ばれる程老いてないんだけどなぁ」

「うるせえ」

なんでコイツは俺とおんなじ運動量でこんなピンピンしてやがんだ、くそ。見た目はひょろひょろなくせに。

「ねぇコウちゃん、なんで起き上がらないの?」

いつもの笑顔よりも、心なしか楽しそうに微笑む。



…からかってるな。

こいつはいつも、こういう事をわかってて聞いてきやがる。くっそやろう。

「…別に。気分だけど」

そうとわかっていても、コイツの思い通りになるのは悔しい。何も答えられずにくすくすと笑われるのだけは御免だ。

チラッとユファラナの様子を伺うと、さっきと変わらず気色悪い笑顔を保っていた。

「コウちゃんは、嘘がヘタなんだねぇ」



…はぁあ!!?

「…なんだよそれ。意味わかんねぇ」

「あはは」

ユファラナは笑いながら俺に近づき、そしてそっと頭を撫でてきた。

「ちょっ…何すんだテメェ!」




「…コウちゃん。強くなろうね」
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