この能力で女を攻略してやる

夢生人

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第2章 新入社員「渡辺美優」

渡辺さんのピンチ

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僕はホテルの従業員の肩を借りて、エントランスのソファーに座って、渡辺さんの受付がおわるまで目を瞑る。

「おい、前田!」

ん?

「おい前田!大丈夫か?」

あれ?渡辺さん?

僕に声を掛けてきたのは、栗林であった。
栗林とは同期だが、彼は営業部の第一課長である。

「あっ栗林か」

「栗林か?では無いだろ!」

「ごめん、酔い潰れた。」

すると渡辺さんがやってきて
「部長、部屋をとってきました。」

すると栗林が怒った顔で
「前田、新人に何をやらせてるんだよ!」

えっ?

酔いが回っていて頭が回らない。

ついつい謝ってしまった。

「ごめん。渡辺さん、悪かったね。」

僕は渡辺さんから鍵を受け取り、鍵に書いてある番号の部屋に向かった。

なんとか部屋に入り、服を着たままそベッドに横になる。

「あ~気持ち悪い」

明日は休みなので、チェックアウトギリギリまで横になろう。

時計を見ると、10時をまわっていた。

「渡辺さんは帰れたのかな?」

僕は渡辺さんの事を考えながら目を瞑った。

1、2時間経っただろうか、吐き気が僕を襲ってきた。

「ダメだ!」

トイレに駆け込み、嘔吐する。

「あ~ダメだ。」

あっ!シャツに嘔吐物が付いている。
それも結構ベッタリついている。

替えのシャツも持っていない。

取り敢えず風呂場で嘔吐物の所だけでも綺麗にしておこう。

早目に洗っとかないと、朝までに乾かなくなってしまう。

酔いを覚ます意味でもシャワーを浴びながらシャツの汚れを落とす。

あれ?

隣の部屋の声が微かに聞こえる。

この部屋と同じ内装なら、風呂場の横は部屋の入口である。

女の声がする。
「ここでいいですか?では私は帰ります。」

「誰かが俺みたいに酔い潰れて、部下に送ってもらったのか?」

これだけ近いと、僕に対する心の声でなくても、集中すれば聞ける。

僕は横の部屋の心の声を聞いた。

男性の心の声が聞こえる。

(早く部屋に入れ!そうだ、後1歩中に入れ!)

ヨシッ!

ドアが閉まる音がする。

女性の生の声が微かに聞こえる。

「何するんですか!」

「君だって分かってるんだろ?前田より俺の方がいいだろ?」

えっ?

僕の事?

でも何となく聞いた声だ。

心の声は普段の声と違うので分からなかったが、今の男の生の声は、さっきロビーで僕を怒った栗林の声だ。

「横の部屋は部長の部屋なんです。大声出して呼びますよ!」

えっ!今の女性の声は渡辺さん!
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