雪のち晴

トモヒロ69

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第1章 雪のち晴

第7話 ビール

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 カーテンの隙間から入ってくる、微かな光で雪は目が覚めた。隣の布団では、晴さんが眠っている。 

 昨日から、つまり十六夜が帰った日から、僕と晴さんはほとんど話していない。

 別に話さない理由があるわけではないが、なんだか気まずいのだ。

 どうしようかと考えていると、晴さんが起きたようだ。

 だが、どうしたのだろう。起き上がったまではいいのだが、そこからピクリと動かない。
 
「パシ!」

 晴さんがいきなり自分の頬を叩いた。

「よし!今日飲むぞ!」

 ………はぁ!?

■ ■ ■

「いやー買った買った」

 今僕の手には、大量の酒が入ったビニール袋がある。近くの酒屋で10種類くらいのビールと、5種類のウイスキーとワインを晴さんが買った。因みに持つのは全部僕だ。

「なんでいきなり飲むんですか?」

「そうそう前から言おうと思ったんだけどね」

 質問は無視された。

「雪君。私に敬語を使うことを禁止します」

 …超どうでもいい。というか僕の質問遮ってこれか…

「…なんでですか?」

 一応聞いておこう。

「いや君さ、私と喋る時ほとんど敬語じゃん?私あんまり敬語好きじゃないからさ」

 まあ初対面、しかも拘置所にいきなり現れて「やあ」と言う人だからなんとなく分かる。

「分かりました。でも晴さんのほうが年上ですよ?」

 因みに、僕は26、晴さんは27らしい。

「1年早く生まれただけで、そんなに変わらないよ」 

 まあ断る理由もないし、晴さんがいいと言うならいいか。

「あーそれともう1個あってね。私をさん付けで呼ぶのも禁止」

「自分は君付けで呼んでるのに!?」

「それとこれとは別だよ。けど呼び捨ても禁止ね。私、年上だから」

 さっき1年の年の差は関係ないって言ってた人のセリフとは思えない。それにそれだとちゃん付けしかないじゃないか。

「あっ、別にちゃん付けじゃなくてもいいよ。」

 心を読まれたようだ。だがちゃん付け以外に何があるのだろう。

「例えば、様とか」

「絶対に嫌だ」

 それならちゃん付けのほうがましだ。

「…晴ちゃん」

 恐る恐る顔をあげると、そこには顔を赤らめた晴ちゃんがいた。

「いや、自分で言わせといて恥じるのかよ!」 

■ ■ ■

「ぷはっ!やっぱビールってうまいねー!」

 家に帰った僕達は、早速買ったビールを開けて飲んでいた。

 実は僕はビールをほとんど飲んだことがない。20になってすぐに捕まってしまったからだ。

「雪君は飲まないの?」

 実は僕がお酒を飲まない理由はもう1つある。

「もしかしてお酒弱い?」

 …図星だ。前に付き合ってた恋人とお酒を飲んだときに、飲むと暴走すると言われた時はとてもショックだった。

「まあまあ少しでいいから飲もうよ」

 そう言うと、大きなジョッキを持ってきて、ビールを大量に注いだ。少しという言葉を知らないのか…

「じゃあ乾杯!」

 その後のことは覚えてない。
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