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第一章
037 主催者との邂逅 ③(完)
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そうして老人は、デスゲームについて語り始める。
「だからこそ、君の成長には大いに期待している。しかし途中で果てるようならば、それはそれで構わない。君の死は、このデスゲームの糧へと変わるのだ。当然糧は、優秀であれば優秀なほど良くなっていく」
人類存続を謳いながらも、デスゲームは明らかに異能者を消費していく。
しかしそれは糧に変わるという部分が深く関係していることで、そのデメリットを帳消しにしているようだった。
「……それはつまり、優秀な異能者が途中で死んでも、別に構わないということなのか?」
もはや僕は、老人への敬語をやめていた。そういう相手ではないと、心のどこかで理解したからかもしれない。
「そうとも。確かに第一フェーズで死亡するには惜しいが、それも織り込み済みだ。特に君のいた第四エリアでは、毒島消治という男の脱落は残念でならない。彼の【消毒の炎】は、等級Aの異能だった。
加えて彼は本来異能者として、多くのクリーチャーを屠ってきた英雄でもある。それがまさか、等級Fの血啜り蟲如きにやられてしまうとは……」
毒島消治とは、おそらく僕が最初に遭遇したパンク系の人物であり、手の平から炎を出してきた人のことだろう。
僕の異能は確か、等級Bだったはず。であればそれを超える等級Aということは、本当に優秀な異能なのだと思われる。
もしもあのとき毒島が異能を使い熟していたら、僕は今ごろ生きてはいなかっただろう。
「また指山氏が死亡したことも、残念でならない。あの人はこのデスゲームを作る上で、重要な役割を果たしていたのだ。百歳を超えても【物体強化】によって、そこらの若者以上に元気だったのだがね」
「なっ!?」
その内容に、僕は驚きを隠せない。
未来の指山さんが、まさかこのデスゲームの関係者だったとは思わなかった。
「だがそれも我々は、承知の上だ。過去の自分が死亡したとしても、別に構わないのだよ。重要なのは、人類の勝利なのだ。
そして過去を改変する以上、本来の歴史に辿り着くことは、もはや不可能。何よりもこのデスゲームを実現できたことすら、奇跡なのだよ。
私は神などは全く信じないが、このときばかりは思わず感謝してしまったくらいだ」
「……」
過去の自分たちですら、このデスゲームの糧というわけか。けど今の言葉でデスゲームを作った者たちも、それを覚悟の上で参加していることを知ることができた。
老人が名前を明かさないのも、それが関係しているのかもしれない。
僕がそう考えている間にも、老人は言葉を続ける。
「そしてデスゲームがこうして実行された以上、我々の役目は、もうほとんどないのだよ。フェーズごとに解禁された情報などを、こうして話すことくらいだ。
また同時に我々の過ごした世界は、おそらく既に存在自体が無かったことになっているだろう。故にここにいる私は、デスゲームが実現したからこそ存在できている、一つの矛盾に過ぎないのだ」
どうやら既に過去改変は始まっており、またそれが始まった時点で、本来の歴史は消えたみたいだった。
自分の生きてきた歴史が消えるというのは、僕には全く想像のつかないことだ。けど歴史を無かったことにしてでも、人類の種としての生存を願ったのだろう。
その覚悟だけは、僕にも強く伝わってきた。
また異能者たちの力を限界以上に引き出したり、デスゲームの発動に様々な条件や、代償があったとも言っていたはずである。
だとすればいったいどれだけの異能者が、これに関わっており、そして代償を支払ったのだろうか。
きっと僕には想像がつかないほどの、過酷なものだったに違いない。
そうして老人は次に、第一フェーズが終わったことで解禁された情報というのを、淡々と口にし始めた。
「では時間も無いので、そろそろこのデスゲームについての説明をしよう。まずこのデスゲームのクリア方法は簡単だ。全てのフェーズを乗り越えればいい。そこに人数制限は存在していない。そしてスマートウォッチだが――」
老人によるデスゲームについての説明は長く、結果としてまとめると、以下の通りとなった。
____________________
・クリア方法は全てのフェーズを乗り越えること。人数制限は無し。現状の最終フェーズ数はまだ情報非公開。
・スマートウォッチはデスゲームでの必須アイテム。フェーズを越えるごとにアップデートがされる。仮に紛失した場合、フェーズ終了時に取り残されてしまう。またデスゲーム終了時に紛失したままだと、デスゲームと共に参加者は消滅する。
・スマートウォッチは持ち主が死亡した時点で、その頑丈さも失われる。
・他者のスマートウォッチをフェーズ移動時に所持していると、エンへと自動的に変換される。変換されるエンの量は、クリアしたフェーズの内容などによって、その数値が変化する。
・エンは他にも他者からの移動、あるいはデスゲームからの報酬で増やすことが可能。またそれ以外にも方法があるらしいけど、情報非公開。
・フェーズ内容は不明。デスゲームがその都度自動生成する。クリア方法や出現クリーチャーの種類も同様。ただ救済措置として、自動販売機などが配置される。他にもあるらしいが、情報非公開。
・各フェーズの外へ行くことは不可能。一見行けそうでも、見えない壁がある。破壊も同様にまず不可能。
・デスゲーム参加者は、日本の範囲内にいる異能適性のある者のみ。外国は含まれていない。また参加者は一定の人数を越えるごとに、基本的に別のエリアに分けられる。ちなみに僕のいたのは第四エリア。またエリア数や詳しい人数については、情報非公開。
・他者を殺したことによる罰則は無いけど、同時に殺人による報酬も無い。ある意味その人のスマートウォッチが報酬。ただし場合によっては、殺人に対する状況が変化する場合がある。
・ボスクリーチャー的な存在は、フェーズごとに必ず一体以上は存在している。倒すことで報酬が得られ、MVPには特別報酬がある。報酬内容は、次のフェーズへと移動した時に支払われる。
・病気や怪我は次のフェーズへと移動したときに、自動的に完治する。ただしデスゲーム以前のものには適用されない。また一部例外などがある。僕の【吸収融合】による結果も、それに含まれて完治することはない。
・フェーズがクリアされると、生存者全員が移動する。猶予時間は六時間。その間参加者は、互いに敵対行動による攻撃などが不可能になる。
・次のフェーズへと移動する際に、参加者が触れている物で所有物と判定された物については、共に移動する。そうでない物は、取り残されてしまう。加えて大きさなどにも制限があり、拠点などは不可。
・お互いに仲間と認識しており、また半径二メートル以内にいれば、フェーズ移動時に同じ場所に移動する。また間に人を挟むことで、その距離は実質伸ばすことが可能。
加えて仲間でなくとも触れていれば、移動に巻き込むことが可能。ただし移動に巻き込む方法については、例外もあるらしい。詳しいことは情報非公開。
・フェーズクリアのMVPは、こうしてこの場所に呼ばれる。他の者は簡易的な情報がフェーズ移動時に、直接インストールされるらしい。またフェーズクリアのMVPには報酬があり、報酬は次のフェーズへと移動した時に支払われる。
・デスゲームはクリアする以外に、脱出する方法は存在していない。誰かがクリアした時点で、生存者は全員解放される。
____________________
とりあえずデスゲームについては、現状以上のことを知ることができた。他は基本的に、情報非公開のようである。
フェーズを越えるごとに、話せる内容も増えるらしい。なので気になることを訊いても、教えてくれないことが多かった。
また僕の異能について話せたのは、個人的なことに含まれていたからのようだ。
ちなみに未来のことについては、開示できる情報の一つだったらしい。なので未来についての話は、元々する予定だったとのこと。
正直説明が多くて一度に覚えきれそうにないと思ったけど、意外とすんなり頭に入ってきた。
どうやら僕の記憶領域に、情報が直接インストールされているらしい。ちょっと怖いけど、そうでなければ聞いた内容をまとめることはできなかっただろう。
これについては便利なものだと、そう割り切ることにした。
そうしてデスゲームの説明を終えた老人は、続けてこのようなことを口にする。
「時間も残り少ない。君は今のうちに、吸収した血啜り大鋏蟲の融合結果について、強く意識してみるといいだろう。
今ならば、まだ間に合う。ここでどうにかしなければ、君は巨大な化け物になってしまう可能性が非常に高い」
「なっ!?」
老人の言葉に、僕は慌てる。流石に巨大な化け物になってしまうのは、ゴメンだった。
でも意識するとしても、いったいどうやればいいんだ?
ボスクリーチャーである血啜り大鋏蟲は、虫のクリーチャーである血啜り蟲と酷似している。
だとすれば、右腕をアップデートするような感じではどうだろうか?
アゴは今のクワガタのようなタイプも便利なので、先ほど聞いた通り切り替えられるようにイメージしてみた。ゲームで武器を切り替える感じだ。
他には右手の平の舌も、先端が鋭い注射針のようにして、本数も増やしていく。質感も引き継いで、鉄っぽい感じにした。
またギザギザの鋭いサメのような歯は、指先の爪として、こちらも切り替えられるようにイメージしてみる。
更に右腕の大部分がピンク色のイモムシみたいなので、手と同様に黒い硬質な鎧のようにできないか試してみた。
こちらはクリーチャーの元の姿から離れているからか、少々難しい。だけど血啜り大鋏蟲の足も大きく、そこを流用した感じにしたら、すんなりとイメージができた。
また最後にアゴを、普段腕の中に収納されるイメージにしてみる。これは擬態クリーチャーである擬態粘体で既に可能にしていたので、特に問題なかった。
そうして、イメージが無事に固まる。
あれ、なんだか普通にできてしまった。もしかしたらこれも、異能の能力の一つだったのかもしれない。あまりにも一連のイメージが、スムーズだった。
それと今回は例外で、本来は既に手遅れだったのだろう。この特殊な空間だからこそ、割り込ませることができたのだと思われる。
そう考えると、ゾッとしてしまう。本当に、今回は運が良かった。
「この場所でのできごとは、デスゲーム内だと刹那の時間に過ぎない。故に本来この場を去ってから六時間の猶予を享受できるのだが、君の場合は意識を失っている。次に目が覚めるときは、第二フェーズへと移動した後になるだろう」
「……なるほど」
どうやらこの場所はある意味、時間が止まった空間に近いのかもしれない。また本来僕は【吸収融合】によって、変わらずに意識を失ったままのようだ。
だとすれば触れていないリュックサックなどは、残念ながら失われてしまうだろう。
また一応、他の参加者から攻撃を受けないのは救いだ。そういうルールがあって助かった。
それと新種のクリーチャーが現れなければ、そちらについてもたぶん大丈夫だろう。
しかし絶対に大丈夫とも言えないので、今後はそうした部分については、より一層気をつけることにした。
そして色々あったけど、この老人には世話になったのも事実だ。かなり狂っているけど、根は悪人ではないような気がする。
するとそう思っていると、何だか体がうっすらと輝き始めた。おそらく、時間が来たのだろう。
「色々と教えてくれて助かった。このまま死にたくはないから、どうにかしてデスゲームをクリアしてみるよ。まあ人類を救うとかは、まだ考えられないけど」
僕は素直に、そう口にする。
「うむ。現状はまだそれでいい。それと最後に忠告しておこう、君が敵対していた天橋小凪の異能【天使の卵】は、等級Sだ。
完全成長型であり、君とは違ってデメリットが一切ない。将来性が非常に高い異能だ。我々の世界では、途中で失われてしまった人物でもある。できればこのデスゲームをクリアして欲しい人材だが、まあ気をつけたまえ」
「――えっ!?」
唐突に驚きの内容を口にした老人だけど、そこから更に看過できない内容を口にした。
「しかし、因果なものだ。天橋小凪は君にとって、いやキメラフォックスである裏梨希望にとっては、最愛の人物だったのだが……」
「はぁっ!? そ、それってどういう――」
老人のその言葉の意味を知ろうとしたものの、僕の意識は皮肉にも、その前に途絶えるのであった。
◆
それから僕は第二フェーズで目覚め、そこで新たな仲間と出会う。
まさか第二フェーズが、強制的なチーム戦だとは思わなかった。
当初は異能を隠していたけど、ふとしたことでバレてしまう。
しかし新たな仲間は僕を信じ、ついてきてくれた。
そして天橋たちとも再び出会い、一度は争いへと発展してしまう。
けれどもそこに第三勢力が現れ、場は混沌としていった。
また皮肉なことに、そこで天橋たちと共闘することになってしまう。
そうして敵を打ち破り、僕たちは第二フェーズをクリアした。
僕も新たな力を得て、ますます人間離れしていく。けど、この力があったからこそ、乗り越えられたのも事実である。
そしてそれ以降も、苦難の連続に見舞われた。いくつもの出会いと別れを繰り返し、とうとう僕たちは、このデスゲームから脱出することができたのだ。
けれどもデスゲームを抜け出してからが、本番である。
等級Sのクリーチャーたちを倒し、人類を救わなければいけないからだ。
きっとそれは、僕たちならできる。あの過酷なデスゲームを乗り越えて、力を得た今の僕たちなら。
「行こう!」
そして僕たちは、外の世界へと一歩踏み出した。僕たちの本当の戦いは、これからである。
______________________
以上で、第一章終了です。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
そして残念ながら、今作はここで『打ち切りエンド』となります。
力が及ばず、投稿した全てのサイトで結果を残せませんでした。
しかし今作はかなり挑戦的な内容だったので、妥当な結果かもしれません。
この経験を次に繋げて、これからも精進していきます。
また次話では、第一章の設定などをこのあと投稿しますので、気になる方はご覧ください。
それと第二章執筆を前提にした感じになっていますが、細かいところはスルーして頂けると助かります。
『キメラフォックス ~デスゲームでクリーチャーに異能【吸収融合】を使い、人外となっていく狐顔~』通称『キメラフ』を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、次回作にご期待ください。
<m(__)m>
乃神レンガ
「だからこそ、君の成長には大いに期待している。しかし途中で果てるようならば、それはそれで構わない。君の死は、このデスゲームの糧へと変わるのだ。当然糧は、優秀であれば優秀なほど良くなっていく」
人類存続を謳いながらも、デスゲームは明らかに異能者を消費していく。
しかしそれは糧に変わるという部分が深く関係していることで、そのデメリットを帳消しにしているようだった。
「……それはつまり、優秀な異能者が途中で死んでも、別に構わないということなのか?」
もはや僕は、老人への敬語をやめていた。そういう相手ではないと、心のどこかで理解したからかもしれない。
「そうとも。確かに第一フェーズで死亡するには惜しいが、それも織り込み済みだ。特に君のいた第四エリアでは、毒島消治という男の脱落は残念でならない。彼の【消毒の炎】は、等級Aの異能だった。
加えて彼は本来異能者として、多くのクリーチャーを屠ってきた英雄でもある。それがまさか、等級Fの血啜り蟲如きにやられてしまうとは……」
毒島消治とは、おそらく僕が最初に遭遇したパンク系の人物であり、手の平から炎を出してきた人のことだろう。
僕の異能は確か、等級Bだったはず。であればそれを超える等級Aということは、本当に優秀な異能なのだと思われる。
もしもあのとき毒島が異能を使い熟していたら、僕は今ごろ生きてはいなかっただろう。
「また指山氏が死亡したことも、残念でならない。あの人はこのデスゲームを作る上で、重要な役割を果たしていたのだ。百歳を超えても【物体強化】によって、そこらの若者以上に元気だったのだがね」
「なっ!?」
その内容に、僕は驚きを隠せない。
未来の指山さんが、まさかこのデスゲームの関係者だったとは思わなかった。
「だがそれも我々は、承知の上だ。過去の自分が死亡したとしても、別に構わないのだよ。重要なのは、人類の勝利なのだ。
そして過去を改変する以上、本来の歴史に辿り着くことは、もはや不可能。何よりもこのデスゲームを実現できたことすら、奇跡なのだよ。
私は神などは全く信じないが、このときばかりは思わず感謝してしまったくらいだ」
「……」
過去の自分たちですら、このデスゲームの糧というわけか。けど今の言葉でデスゲームを作った者たちも、それを覚悟の上で参加していることを知ることができた。
老人が名前を明かさないのも、それが関係しているのかもしれない。
僕がそう考えている間にも、老人は言葉を続ける。
「そしてデスゲームがこうして実行された以上、我々の役目は、もうほとんどないのだよ。フェーズごとに解禁された情報などを、こうして話すことくらいだ。
また同時に我々の過ごした世界は、おそらく既に存在自体が無かったことになっているだろう。故にここにいる私は、デスゲームが実現したからこそ存在できている、一つの矛盾に過ぎないのだ」
どうやら既に過去改変は始まっており、またそれが始まった時点で、本来の歴史は消えたみたいだった。
自分の生きてきた歴史が消えるというのは、僕には全く想像のつかないことだ。けど歴史を無かったことにしてでも、人類の種としての生存を願ったのだろう。
その覚悟だけは、僕にも強く伝わってきた。
また異能者たちの力を限界以上に引き出したり、デスゲームの発動に様々な条件や、代償があったとも言っていたはずである。
だとすればいったいどれだけの異能者が、これに関わっており、そして代償を支払ったのだろうか。
きっと僕には想像がつかないほどの、過酷なものだったに違いない。
そうして老人は次に、第一フェーズが終わったことで解禁された情報というのを、淡々と口にし始めた。
「では時間も無いので、そろそろこのデスゲームについての説明をしよう。まずこのデスゲームのクリア方法は簡単だ。全てのフェーズを乗り越えればいい。そこに人数制限は存在していない。そしてスマートウォッチだが――」
老人によるデスゲームについての説明は長く、結果としてまとめると、以下の通りとなった。
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・クリア方法は全てのフェーズを乗り越えること。人数制限は無し。現状の最終フェーズ数はまだ情報非公開。
・スマートウォッチはデスゲームでの必須アイテム。フェーズを越えるごとにアップデートがされる。仮に紛失した場合、フェーズ終了時に取り残されてしまう。またデスゲーム終了時に紛失したままだと、デスゲームと共に参加者は消滅する。
・スマートウォッチは持ち主が死亡した時点で、その頑丈さも失われる。
・他者のスマートウォッチをフェーズ移動時に所持していると、エンへと自動的に変換される。変換されるエンの量は、クリアしたフェーズの内容などによって、その数値が変化する。
・エンは他にも他者からの移動、あるいはデスゲームからの報酬で増やすことが可能。またそれ以外にも方法があるらしいけど、情報非公開。
・フェーズ内容は不明。デスゲームがその都度自動生成する。クリア方法や出現クリーチャーの種類も同様。ただ救済措置として、自動販売機などが配置される。他にもあるらしいが、情報非公開。
・各フェーズの外へ行くことは不可能。一見行けそうでも、見えない壁がある。破壊も同様にまず不可能。
・デスゲーム参加者は、日本の範囲内にいる異能適性のある者のみ。外国は含まれていない。また参加者は一定の人数を越えるごとに、基本的に別のエリアに分けられる。ちなみに僕のいたのは第四エリア。またエリア数や詳しい人数については、情報非公開。
・他者を殺したことによる罰則は無いけど、同時に殺人による報酬も無い。ある意味その人のスマートウォッチが報酬。ただし場合によっては、殺人に対する状況が変化する場合がある。
・ボスクリーチャー的な存在は、フェーズごとに必ず一体以上は存在している。倒すことで報酬が得られ、MVPには特別報酬がある。報酬内容は、次のフェーズへと移動した時に支払われる。
・病気や怪我は次のフェーズへと移動したときに、自動的に完治する。ただしデスゲーム以前のものには適用されない。また一部例外などがある。僕の【吸収融合】による結果も、それに含まれて完治することはない。
・フェーズがクリアされると、生存者全員が移動する。猶予時間は六時間。その間参加者は、互いに敵対行動による攻撃などが不可能になる。
・次のフェーズへと移動する際に、参加者が触れている物で所有物と判定された物については、共に移動する。そうでない物は、取り残されてしまう。加えて大きさなどにも制限があり、拠点などは不可。
・お互いに仲間と認識しており、また半径二メートル以内にいれば、フェーズ移動時に同じ場所に移動する。また間に人を挟むことで、その距離は実質伸ばすことが可能。
加えて仲間でなくとも触れていれば、移動に巻き込むことが可能。ただし移動に巻き込む方法については、例外もあるらしい。詳しいことは情報非公開。
・フェーズクリアのMVPは、こうしてこの場所に呼ばれる。他の者は簡易的な情報がフェーズ移動時に、直接インストールされるらしい。またフェーズクリアのMVPには報酬があり、報酬は次のフェーズへと移動した時に支払われる。
・デスゲームはクリアする以外に、脱出する方法は存在していない。誰かがクリアした時点で、生存者は全員解放される。
____________________
とりあえずデスゲームについては、現状以上のことを知ることができた。他は基本的に、情報非公開のようである。
フェーズを越えるごとに、話せる内容も増えるらしい。なので気になることを訊いても、教えてくれないことが多かった。
また僕の異能について話せたのは、個人的なことに含まれていたからのようだ。
ちなみに未来のことについては、開示できる情報の一つだったらしい。なので未来についての話は、元々する予定だったとのこと。
正直説明が多くて一度に覚えきれそうにないと思ったけど、意外とすんなり頭に入ってきた。
どうやら僕の記憶領域に、情報が直接インストールされているらしい。ちょっと怖いけど、そうでなければ聞いた内容をまとめることはできなかっただろう。
これについては便利なものだと、そう割り切ることにした。
そうしてデスゲームの説明を終えた老人は、続けてこのようなことを口にする。
「時間も残り少ない。君は今のうちに、吸収した血啜り大鋏蟲の融合結果について、強く意識してみるといいだろう。
今ならば、まだ間に合う。ここでどうにかしなければ、君は巨大な化け物になってしまう可能性が非常に高い」
「なっ!?」
老人の言葉に、僕は慌てる。流石に巨大な化け物になってしまうのは、ゴメンだった。
でも意識するとしても、いったいどうやればいいんだ?
ボスクリーチャーである血啜り大鋏蟲は、虫のクリーチャーである血啜り蟲と酷似している。
だとすれば、右腕をアップデートするような感じではどうだろうか?
アゴは今のクワガタのようなタイプも便利なので、先ほど聞いた通り切り替えられるようにイメージしてみた。ゲームで武器を切り替える感じだ。
他には右手の平の舌も、先端が鋭い注射針のようにして、本数も増やしていく。質感も引き継いで、鉄っぽい感じにした。
またギザギザの鋭いサメのような歯は、指先の爪として、こちらも切り替えられるようにイメージしてみる。
更に右腕の大部分がピンク色のイモムシみたいなので、手と同様に黒い硬質な鎧のようにできないか試してみた。
こちらはクリーチャーの元の姿から離れているからか、少々難しい。だけど血啜り大鋏蟲の足も大きく、そこを流用した感じにしたら、すんなりとイメージができた。
また最後にアゴを、普段腕の中に収納されるイメージにしてみる。これは擬態クリーチャーである擬態粘体で既に可能にしていたので、特に問題なかった。
そうして、イメージが無事に固まる。
あれ、なんだか普通にできてしまった。もしかしたらこれも、異能の能力の一つだったのかもしれない。あまりにも一連のイメージが、スムーズだった。
それと今回は例外で、本来は既に手遅れだったのだろう。この特殊な空間だからこそ、割り込ませることができたのだと思われる。
そう考えると、ゾッとしてしまう。本当に、今回は運が良かった。
「この場所でのできごとは、デスゲーム内だと刹那の時間に過ぎない。故に本来この場を去ってから六時間の猶予を享受できるのだが、君の場合は意識を失っている。次に目が覚めるときは、第二フェーズへと移動した後になるだろう」
「……なるほど」
どうやらこの場所はある意味、時間が止まった空間に近いのかもしれない。また本来僕は【吸収融合】によって、変わらずに意識を失ったままのようだ。
だとすれば触れていないリュックサックなどは、残念ながら失われてしまうだろう。
また一応、他の参加者から攻撃を受けないのは救いだ。そういうルールがあって助かった。
それと新種のクリーチャーが現れなければ、そちらについてもたぶん大丈夫だろう。
しかし絶対に大丈夫とも言えないので、今後はそうした部分については、より一層気をつけることにした。
そして色々あったけど、この老人には世話になったのも事実だ。かなり狂っているけど、根は悪人ではないような気がする。
するとそう思っていると、何だか体がうっすらと輝き始めた。おそらく、時間が来たのだろう。
「色々と教えてくれて助かった。このまま死にたくはないから、どうにかしてデスゲームをクリアしてみるよ。まあ人類を救うとかは、まだ考えられないけど」
僕は素直に、そう口にする。
「うむ。現状はまだそれでいい。それと最後に忠告しておこう、君が敵対していた天橋小凪の異能【天使の卵】は、等級Sだ。
完全成長型であり、君とは違ってデメリットが一切ない。将来性が非常に高い異能だ。我々の世界では、途中で失われてしまった人物でもある。できればこのデスゲームをクリアして欲しい人材だが、まあ気をつけたまえ」
「――えっ!?」
唐突に驚きの内容を口にした老人だけど、そこから更に看過できない内容を口にした。
「しかし、因果なものだ。天橋小凪は君にとって、いやキメラフォックスである裏梨希望にとっては、最愛の人物だったのだが……」
「はぁっ!? そ、それってどういう――」
老人のその言葉の意味を知ろうとしたものの、僕の意識は皮肉にも、その前に途絶えるのであった。
◆
それから僕は第二フェーズで目覚め、そこで新たな仲間と出会う。
まさか第二フェーズが、強制的なチーム戦だとは思わなかった。
当初は異能を隠していたけど、ふとしたことでバレてしまう。
しかし新たな仲間は僕を信じ、ついてきてくれた。
そして天橋たちとも再び出会い、一度は争いへと発展してしまう。
けれどもそこに第三勢力が現れ、場は混沌としていった。
また皮肉なことに、そこで天橋たちと共闘することになってしまう。
そうして敵を打ち破り、僕たちは第二フェーズをクリアした。
僕も新たな力を得て、ますます人間離れしていく。けど、この力があったからこそ、乗り越えられたのも事実である。
そしてそれ以降も、苦難の連続に見舞われた。いくつもの出会いと別れを繰り返し、とうとう僕たちは、このデスゲームから脱出することができたのだ。
けれどもデスゲームを抜け出してからが、本番である。
等級Sのクリーチャーたちを倒し、人類を救わなければいけないからだ。
きっとそれは、僕たちならできる。あの過酷なデスゲームを乗り越えて、力を得た今の僕たちなら。
「行こう!」
そして僕たちは、外の世界へと一歩踏み出した。僕たちの本当の戦いは、これからである。
______________________
以上で、第一章終了です。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
そして残念ながら、今作はここで『打ち切りエンド』となります。
力が及ばず、投稿した全てのサイトで結果を残せませんでした。
しかし今作はかなり挑戦的な内容だったので、妥当な結果かもしれません。
この経験を次に繋げて、これからも精進していきます。
また次話では、第一章の設定などをこのあと投稿しますので、気になる方はご覧ください。
それと第二章執筆を前提にした感じになっていますが、細かいところはスルーして頂けると助かります。
『キメラフォックス ~デスゲームでクリーチャーに異能【吸収融合】を使い、人外となっていく狐顔~』通称『キメラフ』を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、次回作にご期待ください。
<m(__)m>
乃神レンガ
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