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第十三章
463 ブラックヴァイパー ⑮
しおりを挟む「す、すげええええ!」
「Cランクモンスターを、一撃で両断しやがった!!」
「通常よりも威力が下がる、あのショットスラッシュだよな?? いったいどうなっているんだ!?」
「モブメッツ! モブメッツ! モブメッツ!」
「最強! 無敵! 狂人!」
「こんなすごいやつが、ブラックヴァイパーに入ったのか。こりゃ、一荒れ起きそうだな」
「もう賭けに負けたとか、どうでもいいぜ! 感動した!」
観客席は、大歓声に包まれていた。どうやら俺の試合に満足したようである。
『この試合はモブメッツの勝利だぁ! 最初はいったい、誰がこの結果を予測できただろうかぁ! なんとなんと、見事に二連勝を決めたぞぉ! それも余裕の勝利だぁ!』
アナウンスも、俺の勝利を宣言して盛り上げた。初めは相手の方に忖度したようなアナウンスだったが、今ではその雰囲気も消えている。
まあ俺としても、それなりに楽しめたな。相手が弱いことを除けば、暇つぶしにはちょうどよかったかもしれない。
そうして俺は擬剣パンドラソードを鞘にしまうと、その場を後にする。最後まで俺への歓声は、鳴りやまなかった。
これで次は、いよいよブラックヴァイパーのボスとのご対面だな。
ヴィレッタは二連勝しなくても会わせてくれると言っていたが、こうして活躍した方がスムーズに話が進むことだろう。
少しやり過ぎた感はあるが、サーヴァント部門を失ったブラックヴァイパーは、戦力を欲しているはずだ。
であれば、俺に興味を持つ可能性は高い。幹部からの推薦もあれば、確実だろう。
さて、ブラックヴァイパーに潜入するのも、残りわずかだ。
◆
「モブメッツさん、すげえな! 俺様も流石に、試合中に相手を食べる事はしたことがねえぜ! で、旨かったのか?」
「ああ、ツインスコルピオンはアレで旨かったぞ。食感はカニで、味はエビだった」
「まじか! サソリを食うのは抵抗があったが、それなら一度食ってみてもいいかもな!」
あれから試合を終えた俺は、落ち着いて休憩のできる部屋へと案内されていた。
そこでポッチたちと合流して、こうして話し合いをしているというわけだ。
またそこには、ポッチの配下の三人もいる。それぞれ俺の試合に興奮しているようであり、絶賛していた。やはり荒事部門は、力こそ全てなのだろう。
ちなみにヴィレッタについては、俺に会いたいという金持ちたちへの対処をしてくれているので、今ここにはいない。
正直なところ権力者と会うのは、かなり面倒だ。なのでヴィレッタには、盾になってもらっている感じである。
またレフは、現在ソファに座っている俺の膝の上で、丸くなっていた。わずかな間とはいえ離れ離れだったので、こうして離れようとしないのである。
「それでツインスコルピオンを気に入ったんだが、どこに生息しているかポッチは知っているか?」
ヴィレッタに訊いてもいいのだが、今は不在なので、一応ポッチにも尋ねてみることにした。
するとポッチは当然のように、ツインスコルピオンの情報を口にする。
「ああ、それなら結構近いぜ。ゴートレール辺境伯領の東隣にある、カッコウズル侯爵領にいるんだ。以前国境門での戦争に勝利したことで、カッコウズル侯爵領に砂漠地帯が増えたんだが、そこに生息しているってわけだ」
ふむ。カッコウズル侯爵領か。やることを終えたら、行ってみるのもいいかもしれないな。
「なるほど。ちなみにカッコウズル侯爵領のどこ辺にあるんだ?」
「おう。まず名称がカッコウズル大砂漠っていうんだが、カッコウズル侯爵領の南にあるみたいだぜ。かなり広いらしくてな。その大砂漠が増えたことで、カッコウズル侯爵領の領土は三割くらい広がったらしいんだ」
どうやらカッコウズル大砂漠とやらは、かなり広いようだ。それに、領土が三割も増えたとのこと。
しかし領土が増えたとしても、良いことばかりではないかもしれない。次にポッチはそれについて、続けてこのようなことを口にする。
「でもよ、笑えるんだぜ。最初はゴートレール辺境伯に自慢していたらしいんだが、よくよく考えれば大砂漠が南に出現したせいで、元々あった港町が海から離されて、機能しなくなっちまったんだよ。
更に大砂漠は資源に乏しく、とても広い。海までも遠いし、港町を新たに作るのも難しいときた。これによって、ある意味カッコウズル侯爵領は、海を失ったも同然なんだぜ! ぎゃはは!」
それは、かなりの大問題だな。この世界は海の向こうに他の大陸は存在しないが、海の役割はそれでも大きい。
塩や魚介類は当然のこと、同じ大陸内での取引でも、海は役に立つだろう。
だがそれがある日、資源の乏しい大砂漠に変わってしまったのであれば、大問題だ。
加えておそらくツインスコルピオンが生息しているということは、そこにいるモンスターのランクもCランク周辺なのだろう。
仮に町を新たに作るにしても、並大抵の困難ではない。一般的に本来Cランクとは、かなりの化け物なのだ。
しかし待てよ。もしかしたら見つかっていないだけで、大砂漠のどこかに石油などがある可能性も捨てきれないな。
まあこの世界ではまだ石油は活用されていないみたいだし、当分先のことになりそうだが。
他にも天然ガスや、有用な鉱物資源もどこかにあるかもしれない。
おそらく資源に乏しいという内容からして、実際の調査はあまり進んでいないのだろう。もちろん、本当に資源が乏しい砂漠という可能性もあるけどな。
しかしどちらにしても、Cランクモンスターも跋扈しているし、まあ調査が進まなくても当然か。
いや、だがそもそも前提として、この世界は資源などもダンジョンに大きく依存しているんだった。
なのでもしかしたら、ダンジョン外で資源を取るということ自体が、あまり進んでいないのかもしれない。
もちろん全くしていないという訳ではないだろうが、地球の同時期よりは遅れていそうな気がする。
だから実際には資源があっても、資源が乏しいとしか調べられなかったという可能性もあるのだろうか?
まあ、その辺は結局のところ、どうでもいいか。どのみち俺には、全く関係のないことである。
俺はそんなことを思いながら、教えてくれたポッチにお礼を言っておく。
「教えてくれて助かった。中々に面白い話だった。そんな砂漠が近くにあったんだな」
「別に構わねえぜ。それはそうとモブメッツさんが二連勝したことで、約束通り推薦状を用意してあるぞ。事前に話は進めていたから、ラブの推薦状も既にあるぜ。
その推薦状を提出すれば近いうちに、ボスからお呼びがかかるはずだ。それとファイトマネーも出ているぞ。これだ」
そう言ってポッチが三枚の推薦状と、ファイトマネーの入った袋をテーブルに置いた。
これが推薦状か。俺が試合をする前から、制作に動いていたらしい。ラブからの推薦状もおそらく、ヴィレッタの配下の誰かが取りに行ったのだろう。
収納スキルは持っていてもおかしくはないので、俺は推薦状とファイトマネーをそのまま収納しておく。
ちなみにファイトマネーは報酬判定なのか、二重取りで倍になっている。だが推薦状は増えても使い道が無いので、増えなかった。
また二重取りでファイトマネーが増えても、ポッチたちは別に不思議がったりはしない。これもいつものことだ。
そんなことがありつつも、俺は欲しいものを手に入れたので、次の行動に出る。
「会うなら、できるだけ早い方がいいな。ここにはもう用は無いし、早速この推薦状を出しに行こう。ヴィレッタには誰かに言伝をすれば問題ないだろう」
「お、おう。にしても、モブメッツさんじゃなければ、ヴィレッタが怒りそうな対応だな。けどあの幼児化を見たあとだと、妥当な対応かもな。ぎゃはは!」
すると俺のヴィレッタへのぞんざいな扱いがツボったのか、ポッチが笑い声を上げた。
確かにここまでしてもらって、言伝だけで早々に去るのは、失礼に当たるかもしれない。今も俺に会いたいという金持ちの対応をしている訳だしな。
しかし俺としても、可能であればプリミナたちが帰還するまでに、ブラックヴァイパー関連の出来事を終わらせたいのだ。
故にヴィレッタには悪いが、そういう扱いになってしまう。
そうして俺はポッチたちを連れて、闇闘技場を出る訳だが、あの試合のせいで俺は人目を避けなければいけなかった。
見つかれば、あっという間に取り囲まれてしまう。実際試合後には、そうなったのだ。
俺は自分でも思っていた以上に、人気者になっていたらしい。
なので全身を隠す黒いローブをそのあと渡されていたので、それを着てからスタッフ専用の通路から脱出させてもらう。
そのとき、ヴィレッタへの言伝も忘れない。係りの人にお願いしておいた。
あとは裏口から外に出て少し離れれば、もう安心だ。試合が夜だったこともあり、辺りは真っ暗である。
スラム街に街灯などあるはずもないので、俺は明かりをかなり抑えた生活魔法の光球を浮かべた。
しかしそれでも少し明るすぎて、周囲からは目立ってしまうが、ポッチがいたので揉め事は皆無である。スラム街でポッチは、かなりの有名人のようだ。
そうして俺たちは無事に、ブラックヴァイパーの本拠地に戻ってきたのだった。
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