46 / 535
第二章
045 ノブモ村での大会予選 ③
しおりを挟む棍棒を持ったホブンが駆ける。
それに対して、ジャイアントボアも突っ込んで来た。
「ゴブッ!」
だが素早い身のこなしで、ホブンがすれ違うように回避をする。
そして、その背後に棍棒を叩きこんだ。
「ブヒィツ!?」
「なっ!?」
よし、攻撃が通った。
ジャイアントボアは苦痛に悶え、ジョリッツは驚愕の表情を浮かべる。
だが、これによって本気になったようだ。
ジャイアントボアはホブンを強く睨みつけ、僅かに後ろに下がって助走をつける。
そして先ほどよりも速く、狙いもしっかりと着けた突進がやってきた。
ホブンが横に動くと、驚くことに軌道修正をしてくる。
だめだ。この会場の広さじゃ、避け切れない。
俺は即座にそう判断を下す。
会場の広さが相手の弱点だと思っていたが、それが逆になるとはな。
だが避けられないのなら、向い撃つしかない。
ホブンに棍棒を両手で握らさせ、その瞬間を待つ。
面白い。面白いな。
次の一撃で、決着が付く。
そのことを強く感じた。
ホブン、頼むぞ。
そして、その瞬間がやって来る。
「ゴッブアッ!!」
「ブギィイ!!」
ホブンの振り下ろした全力の一撃が、ジャイアントボアの額に命中した。
だがそこで、棍棒が折れる。
「ゴブガっ!?」
続けてホブンが吹っ飛び、地面を転がった。
「ブ、ブギィ……」
だがジャイアントボアもその場に止まり、僅かに数歩進むと横に倒れる。
「ボ、ボアザード!! 立ちなさい! 立つんですよ!」
ジョリッツが必死に声を送る。
しかし、ジャイアントボアは声を聞いても立ち上がろうとはしない。
「ホブン、立て」
「ゴ、ゴブ……」
対してホブンは、俺の命令に答えてゆっくりと立ち上がった。
「そ、そんな……」
「ジャイアントボアの戦闘続行は、不可能と判断する」
そして審判役である職員の言葉により、ジャイアントボアの敗北が決まる。
「す、すげえ!」
「ホブゴブリンが勝ったぞ!」
「嘘だろ!」
「あっという間だったな!」
「どういう育て方をしたんだ!?」
「感動した!」
負けると思われていたホブンが勝ったことに、観客が熱狂した。
だが、試合はこれで終わりではない。
ジャイアントボアを何とか回復させて下げると、三匹目を繰り出してくる。
「相手は弱っています! 行きなさい、タレロ!」
「ぶひっ!」
ジョリッツは、三匹目にオークを出してきた。
「ホブン、まだいけるか?」
「ゴブア!!」
「よし、その力を見せつけてこい」
ホブンもやる気のようなので、引き続き戦わせる。
相手のオークは棍棒を持っているが、ホブンは素手だ。
しかし、その程度はどうとでもなる。
「ゴッブア!!」
「ぶひゃっ!?」
ホブンの右ストレートを喰らい、オークは情けなく声を上げて転がった。
その一撃でオークは、格の違いを理解したらしい。
ホブンに怯え、まともに戦うことができなかった。
「タレロ! 真面目に戦いなさい!」
ジョリッツは叱咤するが、その声はどうやら届かなかったようだ。
最終的にオークは、うずくまって動かなくなる。
「オークの戦闘続行は不可能と判断した。よって決勝トーナメント第一試合の勝者は、ジンとする!」
その瞬間、観客の歓声が再び周囲へと響き渡った。
「そんな……まさか負けるとは……」
ジョリッツは負けたことが信じられないようで、呆気に取られている。
対して俺は、満足行く試合結果に笑みを浮かべた。
中々に面白い試合だったな。
数で圧倒するのもいいが、こうした一対一も楽しいものだ。
そうして試合を終えたあと、ホブンと折れた棍棒を回収して、選手用の席に移動する。
「ふふっ、あなた強いわね」
その時すれ違いざまに、次の試合に出るアミーシャがそう耳打ちしてきた。
おそらく、決勝で戦うのはあの女になりそうだ。
もう一人のメインモンスターはオークみたいだし、勝率は低いだろう。
さて、どのようなモンスターを繰り出すのか、観察させてもらおうか。
俺は用意されていた席につくと、第二試合に注目する。
「相手が女性であろうと、俺は手加減しないぞ!」
「そう、でもあなたでは勝てないわ」
「くっ、言ってろ」
するとちょうど二人が会話を終えて、定位置に着く。
「最初から全力だ! 行け! オークス!」
「ぶひい!」
冒険者の男ジブールは、オークを繰り出した。
「それじゃあ、私はこの子よ。フィミィ、現れなさい」
「ギギギ」
対してアミーシャが出したのは、巨大な紫色の蝶。
しかもアミーシャはサモナーであったのか、光と共にモンスターが現れる。
あの女はサモナーだったのか。初めてみたな。
それにあの小型犬サイズの巨大な蝶、あれも初めてみる。
状態異常を得意とするようだが、いったいどのようなものだろうか。
「両者とも準備はいいか? それでは、決勝トーナメント第二試合を開始する! 始め!」
俺が思考を巡らしている間に、試合が開始する。
「ギギギ!」
「ぶひ?」
するとさっそく、巨大な蝶が上空から鱗粉を撒き散らす。
だがすぐには効果は出ないようで、オークは一度首をかしげた後、棍棒を振り回し始めた。
巨大な蝶は空を飛んでいるが、一定以上の高さを越えると場外扱いになる。
即座に戻らない場合、負けという訳だ。
なので、オークが跳躍してギリギリ届く辺りを飛行している。
飛行対策か。これも考えないといけないな。
「ぶひ……」
すると先ほどまで暴れまわっていたオークが、突然倒れて眠り始めた。
なるほど。あれは眠りの状態異常効果があったのか。
これは勝負がついたな。
「お、おい! 起きろオークス! ふざけるな!」
それからジブールが何度声をかけても、オークが起きることはなかった。
審判である職員のテンカウントにより、敗北が決まる。
そして中堅、大将とジブールが繰り出したのは続けてゴブリンであり、オークと同じ結果になった。
「ゴブリンの戦闘続行は不可能と判断した。よって決勝トーナメント第二試合の勝者は、アミーシャとする!」
まあ、当然の結果だな。
しかし、観客は納得がいかないようだった。
「それで勝って嬉しいのか!」
「卑怯だぞ!!」
「最低の試合内容だった」
「もう帰れよ!」
うーむ。俺は状態異常でも勝ちは勝ちだと思うのだが、確かに見世物としては退屈かもしれない。
そうして第二試合が終わると、決勝は休憩を挟んだ後になる。
俺は周囲から熱烈に応援され、食べ物の差し入れをいくつも渡された。
デミゴッドは状態異常に強い耐性があるので、構わず頂くことにする。
対してアミーシャは、気が付くと既にいなかった。
ここにいれば罵倒を浴びせられると思うので、当然かもしれない。
にしても、先ほどの巨大な蝶をどう攻略したものか。
空を飛べるとはいえ、ジャイアントバットとポイズンモスでは少々心もとない。
蝶、蝶か……。
意外と、何とかなるかもしれないな。
俺は一つ、使える手を思いついた。
予選に出すモンスターは決めたが、絶対に出さなければいけないというわけではない。
なら、蝶相手にピッタリのモンスターが俺にはいる。
それは、ビッグフロッグだ。
長い舌と得意の跳躍力があれば、あの巨大な蝶も攻略できるだろう。
これは、面白くなりそうだ。
俺は期待に胸を膨らませながら、その時を待った。
そうして休憩時間が終わり、とうとう決勝戦が始まる。
「この試合、棄権するわ」
「は?」
だが驚くことに、会場に来たアミーシャが突然そう宣言してしまう。
「えっと、アミーシャ選手、いったいどういう事でしょうか?」
審判の職員も戸惑ったように問いかける。
「どういう事も何も、準優勝でもここの予選は通過でしょ? だから戦う必要は無いわ」
アミーシャの言葉に、観客は当然ブーイングの嵐だ。
「ふざけるな!!」
「予選大会だからって、そんなことが許されるか!」
「戦え!!」
「納得できるか!!」
しかしそれに対してアミーシャは、どこ吹く風で受け流す。
「アミーシャ選手、試合をしていただくことは……」
「試合はしないわ」
「そ、そうですか……。アミーシャ選手の棄権により、ノブモ村の大会予選の優勝者は、ジン選手です」
最悪の優勝だ……。
試合を楽しみにしていた俺は、深いため息を吐くのだった。
213
あなたにおすすめの小説
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます
内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」
――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。
カクヨムにて先行連載中です!
(https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)
異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。
残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。
一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。
そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。
そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。
異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。
やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。
さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。
そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。
実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~
仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる