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第四章
143 ユグドラシルを目指して
しおりを挟むやはりユグドラシルに一定の距離近づいた瞬間、妙な感覚がした。
何が出来なくなったのか、一応確認してみる。
分かりやすいのは、軍団指揮や軍団行動、全感共有と以心伝心+だろうか。
明らかにモンスターとの意思疎通などが、難しくなった。
神授スキルであるカード召喚術については、何も影響がない。
思っていた通り、神授スキルは特別のようだ。
「にゃーん」
それとレフの伝えたいことが、何となくしか分からない。
補助系スキルなどの恩恵を、身にしみて感じた。
当たり前にあったものが使えないというのは、不便すぎる。
また偽装も解除されており、元の姿になっているみたいだ。
これで見つかれば、誤魔化すのはほぼ不可能だと思われる。
だが唯一の救いは、言語理解は問題なく作用していることだろう。
補助系と思いきや、少々特殊な分類のようである。
またフェアリーが言葉を話せるため、意思疎通に問題がないのは助かった。
あとは意外な事に、装備品についてはデバフがかかっていない。
ブラックヴァイパー装備の姿隠しも使えるし、気配感知のネックレスも問題なく使用できた。
なのでゲヘナデモクレスから貰った紫黒の指輪も、おそらく使えることになる。
これについて召喚した元悪いフェアリーに訊いたが、理由は知らないようだ。
だとすれば予想になるが、装備までデバフをかけるのは負担がかかるのかもしれない。
それか装備だけではなく、魔道具までもデバフがかかるとすれば大変だ。
全体の運営に影響が出過ぎるので、対象外にしている可能性がある。
またデバフを解除する許可は出せるみたいだが、手間がかかりすぎるのだろう。
まあ詳しいことは分からないが、懸念が一つ消えたのは大きい。
そしてユグドラシルのデバフについてだが、元悪いフェアリーたちにも効果が及んでいた。
飛行は可能らしいが、姿隠しや幻属性魔法が使えないみたいだ。
おそらく一度死亡したことで、デバフ解除の許可が消えたのだろう。
加えてデバフだが、フェアリーの種族特性をピンポイントで狙っている事に気が付く。
他の属性魔法は問題なく使用できるみたいだが、フェアリーの使う幻属性だけが使用できない。
ユグドラシルのデバフは、ある程度調整できる可能性がある。
であれば俺の情報が漏れた場合、俺に特化したデバフ調整もできるわけだ。
それにユグドラシルのできることが、それだけとは限らない。
能力が気になるところだが、鑑定は現在使用できなくなっている。
また鑑定が出来たとしても、鑑定したことに気づかれるかもしれない。
ユグドラシルを創り出したエリシャという転生者に情報が行く可能性は、十分にあった。
いやもしかしたら既に、デバフ範囲に入った瞬間居場所に気づかれているのだろうか?
しかし、それなら何かアプローチがあってもいいはずだ。
現状、何事もなく進めている。
加えて道中どうしても出会ってしまう敵フェアリーについても、逐一倒しているが異変は起きていない。
それとエルフに関しては一度も見ておらず、見回りや警備はフェアリーの仕事のようだ。
うーむ。
自称ハイエルフは平等がどうとか言っていたらしいが、そこにフェアリーは含まれていないのかもしれない。
成績の悪いフェアリーは、従っていても売られてしまうみたいだしな。
まあフェアリーはモンスターだし、そうした意識は元から無いのだろう。
俺は友好的で同じ陣営なら、エルフもモンスターも関係ないと思うのだが、自称ハイエルフはそうではないのか。
オブール王国で過ごしていただけに、尚更そう思ってしまう。
そんなことを考えながら、なるべく人気のないルートを進んでいく。
思っていた以上に順調だな。やはり侵攻で警備が薄くなっているのだろうか。
敵のフェアリーよりも、他のモンスターの方を多く見かけるほどだ。
ちなみに状況が状況なので、モンスターはスルーしている。
フェアリー以外は、自称ハイエルフの陣営でもない無関係のモンスターのようだ。
そうしてしばらく経ち、ようやくユグドラシルの巨大な洞前までやってくる。
出入り口には、複数のエルフとフェアリーがいた。
さすがに、ここの警備はそれなりに厳重のようである。
道中に見かけなかったエルフが警備していることからも、それがよく分かった。
ここを突破するためには、戦闘は避けられそうにない。
多少の騒ぎは、免れないだろう。
であれば見張りを倒したあとは、早急にユグドラシルの中へと入ったほうが良さそうだ。
ユグドラシルの中ではこちらの不利になると思われるが、それは覚悟の上である。
色々と悩んだが、結局侵入するしかない。
またエリシャという人物について、元悪いフェアリーに訊いたが情報は得られなかった。
どうやらほとんど、ユグドラシルの中から出てこない人物のようである。
謎多き老婆のようだ。
その人物まで辿り着くまでも、戦いは避けられないだろう。
自称ハイエルフの女王と戦う前に、どれだけ消耗しないかというのも重要になる。
なので手持ちのカードは、あまり無駄には消費できない。
だが必要な場面では、どんどん使っていこう。
ケースバイケースである。
そういう訳でまずは、目の前の敵を排除するためにこのカードを使う。
出てこい。
そうして召喚したのは巨大なカメムシ、スティンクバグ二十匹。
種族:スティンクバグ
種族特性
【激臭生成】【激臭弾】
「「「!!?」」」
突然現れたスティンクバグたちに、周囲は驚愕する。
だが驚いている隙に、スティンクバグたちは同時に激臭弾を近距離で発射した。
この距離であれば、避けようがない。
また攻撃手段となっているスキルのため、デバフに引っ掛からず発動できたようだ。
結果として、周囲は阿鼻叫喚である。
「ぐあぁああ!?」
「目がぁあ!?」
「鼻ガァああああ!?」
「ヴぉぇえええっ」
そして俺はその隙に剣からウィンドカッターを放ち、レフがシャドーニードルを放つ。
ちなみに俺たちの周囲では、常に生活魔法の清潔を発動し続けているので臭いは無い。
「ぎゃぁ!?」
「ぐべばっ!」
「くさぎゃぁ」
「ひぎゅあぐっ!」
スティンクバグたちの激臭弾は、想像以上の効果があったみたいだ。
相手は俺たちの攻撃に対処する余裕が無く、次々と狩られていった。
そうして全ての敵を排除したのだが、一つ問題が起きる。
なんと、スティンクバグたちが全滅していた。
どうやら自身の激臭弾の余波で、死亡したみたいである。
こいつら、自分の作った激臭に耐性が無かったのか……。
文字通り、激臭に対して死ぬほど弱かったみたいである。
一度試しておけばよかったが、今更思っても仕方がない。
俺は敵のフェアリーをカード化すると、エルフの亡骸をストレージに収納した。
もちろん事前に周囲を念入りに、生活魔法の清潔で臭いを消している。
ちなみにエルフは人類系なので、カード化することはできなかった。
さて、これでユグドラシルの中に入れるな。
少し騒がしかったが、誰か来る様子もない。
けれども警備のエルフたちがいなくなったので、誰かが来る前に進む必要がある。
念のため今倒したフェアリーを召喚して、見張りの振りをさせた。
エルフがいないことを訊かれたら、言い訳して時間を稼ぐように言っておく。
そうして次に、元々連れていた元悪いフェアリーたちを先行させる。
ユグドラシルの中に入っても、異常は見られない。
よし、大丈夫そうだな。
安全を確認した後、俺とレフはそれに続く。
しかし俺がユグドラシルの中に一歩足を踏み入れた瞬間、不意に声が聞こえてきた。
『いらっしゃい。警戒しなくて大丈夫ですよ。こちらに戦う意思はありません』
「は?」
それは、老婆の声だった。
『と言っても、信用はできないでしょう。ですので、こちらに直接来ていただきます』
するとその瞬間、抵抗する間もなく景色が入れ替わる。
そこはまるで神殿内部のような場所であり、目の前には一人の人物がいた。
「初めまして。私はこのユグドラシルの生みの親、エリシャです」
そう言って軽く会釈したのは、エルフの老女で自称ハイエルフの一人、エリシャだった。
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