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第八章
298 城のダンジョン ⑯
しおりを挟む※勇者ブレイブ視点です。
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魔王に存在を知られることを、何よりも警戒していたアルハイド殿下。
そんなアルハイド殿下が、危険を顧みず俺に手を貸してくれるという。
最初現れた時は怪しかったけど、それも拠点にいた嘘を見抜けるスキルを持つ非戦闘員の手によって、全てが本当だということを俺は知っていた。
それに様々な援助はもちろんのこと、こうして冒険者たちとここまでついてきてくれている。十分に信頼できる人物だ。
「助かります。それでアルハイド殿下。アネスは若返りによって死亡してしまったのですが、それを生き返らせるアイテムを、ご存じないでしょうか?」
俺は思わず、そう訊いてしまう。だってこの城は、アルハイド殿下の先祖が元々暮らしていた城だからだ。
数百年前に魔王の手によってこうなってしまったらしいのだが、何かそういったアイテムについて知っているかもしれない。
俺はここまでの状況を話して、アルハイド殿下の回答を待つ。そして、やはり神は俺を見捨てていなかったことを理解する。
「ああ、もちろん知っているよ。範囲内にある物体の状態を、最高で三日ほど前に戻すことが可能な砂時計があったはずだ。
それがあれば、肉を食べる前に戻せると思うよ。当然生き返りはしないけど、身体が戻れば、セーラさんのスキルで蘇生できるんじゃないかな?」
アルハイド殿下の言葉を聞いて、俺は体が良い意味で震えた。
もうだめかと思ったアネスに、生き返るための希望が現れたからである。
「なら旗もあるし、さっそく行こう! こうしちゃいられない!」
なので俺は、思わずそう声を上げた。しかし、そこで待ったをかける者が現れる。そう、ゼンベンスさんだ。
「待て、元々ここで一晩休息してから、翌日城に挑むことになっていたはずだ。他の冒険者たちも疲れているだろう。それに、情報の共有をする必要もある」
言いたいことは理解できる。けど、それに従うつもりはなかった。
「他の冒険者たちはもうどうでもいい。ついてこられる者だけが、ついてくれば十分だ。ゼンベンスさんが何と言おうと、俺は進む。嫌なら残ってくれ」
「ぐっ、わ、分かった。だがそれを伝えるために、一時間くれ」
「三十分だ」
「っ……ああ、それで構わない」
俺がそう言うと、ゼンベンスさんは他の冒険者たちと情報を共有するために、その場から駆けて行った。
そういえば、ボーンドラゴンとかはどうなったのだろうか? 上空には、それらしい姿は見えない。なので、アルハイド殿下に訊いてみる。
「ああ、冒険者たちが戦っていたボーンドラゴンなどは、既に全ていなくなっているよ。たぶんあの巨大なモンスターが消えたのと同時だったかな。
でもさ、想像以上に冒険者たちにも被害が出て、こちらに加勢する余力はなかったみたいだよ」
「なるほど」
なんて役に立たない奴らだろうか。Aランク冒険者でもしょせんは、こんなものなのかもしれない。
これじゃあ、数が増えても無駄になりそうだ。先に聞いていれば、ゼンベンスさんを行かせることはしなかった。
アネスがいない現状、同じ戦士であるゼンベンスさんがいないのは、正直厳しい。
アルハイド殿下はそこそこ戦えるみたいだが、流石にSランクを相手にはできないだろう。
直属の配下も二人いるけど、そちらも同様だ。良くてAランク冒険者くらいだと思われる。
だからどの道、ゼンベンスさんが戻ってくるまで待つ必要があった。
「ああ、そういえば近頃よく見かけるアサシンクロウだけど、あれは敵の目だから、見つけ次第倒したほうがいいよ」
「な、なんだって!?」
拠点でも見かけるようになったアサシンクロウだが、冒険者の誰かが使役しているモンスターだと思っていた。しかしどうやらそれは、魔王の目になっていたらしい。
「ヤミカ!」
「うん! ……いた!」
「ガァ!?」
俺はこういうときに索敵が得意なヤミカに声をかけると、それだけで理解したヤミカが、即座にアサシンクロウを見つけて仕留めてくれた。
なんとここから離れた建物の上で、こちらをじっと見つめていたのである。
「流石だね。あのアサシンクロウは、ダンジョンの力で普段よりも見つけづらくなっていたみたいだ。意識しなければ、たぶん気づかないままだったと思うよ」
「そうだったのか……」
改めて意識してみると、アサシンクロウは怪しさしかない。だがあまりにも冒険者の数が増え過ぎた結果、細かいことはそこまで気にしなくなっていた。
おそらく仮にアサシンクロウに気がついても、拠点でも見たから誰かの使役モンスターだと判断していただろう。逆にアルハイド殿下は、よくこれに気がついたものだ。
「僕の目は少し特殊だからね。少し違和感があったから試しに見たところ、あのアサシンクロウの繋がりが城の方へと伸びていたんだよ。
でもさ、もしこれが冒険者のモンスターであれば、もちろんこれはあり得ないことだ。だからあのアサシンクロウは、敵の配下なのは間違いないんだよ」
すると俺の疑問に答えてくれるように、先にそう教えてくれた。
なるほど。確かにそれなら、あのアサシンクロウは魔王の配下に違いない。
アルハイド殿下のおかげで、魔王への情報を遮断できるようになった。しかし他にも魔王が情報を得る方法があるかもしれないので、その点には注意が必要だろう。
そうして三十分が過ぎたころ、ゼンベンスさんが冒険者たちを連れて戻ってきた。
「待たせたな。いつでもいいぞ」
「わかった。今すぐ行こう!」
俺がそう返事をすると、アルハイド殿下の直属の配下が旗をそれぞれ設置してくれる。
それにより、城門の前に巨大な魔法陣が現れた。ヤミカに鑑定させると、どうやら魔法陣は城の内部へと繋がっているようである。また罠などは、特に仕掛けられていないらしい。
流石の魔王もこの魔法陣には、何か仕掛けるような卑怯な手には出なかったみたいだ。
そう思いながら最後に、俺はアネスの持ち物をアイテムボックスに収納していく。加えて目印になるように、棒を地面に刺したり瓦礫で囲っておいた。
更には万が一目印が無くなってもいいように、おおよその場所をなんとか記憶しておく。
よし、これで大丈夫だ。アネス、待っていてくれ。絶対に生き返らせるからな!
俺は気合を入れると、次に先ほどまで泣き崩れていたセーラに声をかける。
「セーラ、もう大丈夫か?」
「ええ、大丈夫。次は必ず、アネスを蘇生させてみせるわ! だって私は、聖女なのだから!」
「僕も、アネスのために、頑張る!」
そう言うとセーラは立ち上がり、ヤミカもやる気十分に声を上げた。当然俺も、必ず魔王を倒して、全てを救うつもりだ。
「ブレイブ君。ここからは、過酷な戦いになるだろう。けど僕は、ブレイブ君なら成し遂げられると信じているよ。だから、共に立ち向かおう!」
「アルハイド殿下……はい、絶対に魔王を倒しましょう!」
俺は先ほどまでの絶望が嘘のように消え去り、希望が満ち溢れたことを、強く感じていた。
もし俺がこの世界の主人公だというのなら、困難は仕方がないのかもしれない。
だけど主人公なら、最後は必ず全て上手くいくはずだ。魔王を倒し、アネスは蘇る。
そして城を取り戻したアルハイド殿下からも、報酬をもらう約束をしていた。加えて、魔王によって捕らえられた妹がいるらしい。
ルミナリアさんという方で、姿絵はとても美人だった。なんでも冒険者や英雄に憧れているらしく、少々お転婆らしい。
またもしも妹であるルミナリアさんを救ったあかつきには、俺の元にルミナリアさんを預けたいみたいだ。
捕らわれの姫を救うのは勇者の役目なので、俺はもちろんそれを了承している。
仲間たちは少し不満げだったが、最後には納得してくれた。
あとはアネスを殺したルルリアも手に入れて、教育してやる必要がある。
まあ事故みたいなものだったので、これから償ってくれれば、いずれは許してやるつもりだ。
そして最後は魔王を倒した勇者として、俺は歴史に名を残す。
物語なら、これで完結だろう。そこからはもう、後日談だ。なので物語の道筋は、既に見えている。
俺は勇者。勇者ブレイブだ。だから魔王、待っていろ。今から、その首を取りに行くからな!
「よし、行こう!」
そうして俺たちは魔法陣の上に乗ると、城の内部へと突入をするのだった。
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