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第九章
328 ファントムワールド ⑦
しおりを挟む突然現れた大剣だが、俺の直感が今すぐ手に取れと、強く訴えかけてくる。
だが言われるまでもなく、俺はその大剣に右手を伸ばしていた。
そして俺が大剣を手にした瞬間、本来あり得ないアナウンスが、脳内に流れてくる。
『神授スキル【二重取り】が発動しました。魔剣【カオスインフィニティ】を獲得します』
すると何故か二重取りが発動して、左手にも同様の大剣が現れた。
突然のことに、俺は戸惑いを隠せない。しかし、二重取りの効果はそれで終わらなかった。
『同質の魔剣が二振り存在しているため、魔剣を統合します』
そしてそのアナウンスと同時に、二つの魔剣はまるで重なるように統合され、新たな姿を現す。
『魔剣【カオスインフィニティ】は、魔神剣【ルインダークネス】に進化しました』
脳内に聞こえてきた剣の名称は、”魔神剣ルインダークネス”といった。しかしその見た目は、ある意味とてもシンプルである。
大きさはおよそ150cm。刃の部分は分厚く、まるで包丁のよう。そしてその全てが黒よりも濃い、暗黒色。闇に紛れれば、視認することは困難だろう。
また剣で例えるなら、バスターソードのような形に近いだろうか。そんな見た目をしているのが、この魔神剣、ルインダークネスだった。
加えてこの魔神剣からは、俺ですら身の危険を感じるほどの禍々しい、目には見えないオーラのようなものを放っている。
あのフレッシュゴーレムですら、魔神剣に警戒して動けずにいた。おそらく本能に訴えかけるような、そんな何かがあるのだろう。
また両手で魔神剣を握っていると、まるで俺の体の一部になったかのような一体感があった。
ちなみに握る際に邪魔になる長い爪は、無意識に消している。でなければ今頃爪によってこの魔神剣を使うのに、支障をきたしていただろう。
そして一体感があるとはいえ、どこかこの魔神剣から完全には認められていないという、そんな何かも感じている。
暫定的に仮の持ち主として、渋々手を貸してくれている気がした。
そんな魔神剣の能力を、俺は鑑定してみる。
名称:魔神剣ルインダークネス
説明
・全ての攻撃に任意で闇冥神属性を付与する。
・闇冥属性の効果を極大上昇させる。
・神属性の効果を中上昇させる。
・光聖属性に与えるダメージが極大上昇する。
・神属性に与えるダメージが中上昇する。
・持ち主のあらゆる能力を極大上昇させる。
・一日に十回無条件で耐性、無効、反射、再生を無効化する効果を任意で攻撃に付与できる。
・一ヶ月に三分間だけ、この魔神剣に神滅属性を付与することができる。
・一ヶ月に三分間だけ、無条件で自身の魔力を無限にする。使用後は反動により、消費した魔力量の五倍を支払うまで、あらゆる魔力消費行動が不可能になる。
・この魔神剣に認められた者にしか使用できず、念じると手元に戻ってくる。
・この魔神剣は、冥神属性適性が無ければ使用できない。
・この魔神剣は神力を消費し続ける。また神力が切れると鈍らになり、効果の大部分が使用できなくなる。
・この魔神剣は、時間と共に修復される。
・この魔神剣は持ち主と共に成長し、以下のスキルを内包している。
【魔力超再生】【魔力解放】【カオスブレイク】
【剣心一体】【上級スキル郡(剣)】
なるほど。そういうことか。
魔神剣の効果を確認した瞬間、俺はこの魔神剣についてその多くを理解した。
それは魔神剣に内包されている、剣心一体の効果でもある。実際に他のスキルも使う時になれば、より詳しく分かることだろう。
ただ俺のことを完全には認めてはいないようで、その能力を完璧には発揮できそうにはない。
だがそれでも十分に、この絶望的な状況を打開できると思われる。
しかし同時に不思議なのは、俺に武器を与えた存在についてだった。周囲には、それらしき姿はない。また空間に空いていた穴は、いつの間にかなくなっている。
けれども俺は、そのことについて不審には思わなかった。なぜならこの魔神剣の元になった魔剣を与えてくれた存在について、目星がついていたからである。
あの声はどう考えても、ゲヘナデモクレスのものだよな? 突然のことだったが、流石に聞き間違えることはない。
そう、どうやったかは不明だが、俺の窮地に魔剣を届けてくれたのは、ゲヘナデモクレスの可能性が高かった。
過去に紫黒の指輪を渡されたこともあるので、魔剣を作れたとしても不思議ではない。
ただ疑問なのは紫黒の指輪の時は二重取りが発動せずに、逆に今回は発動したことである。
それにこれまで増えたとしても、スキルオーブや物自体が統合されることはなかった。
重複による統合は、スキルや称号など、ステータス関連のものに限られていたのである。
もしかしたら何かがきっかけで、二重取りの隠し効果が発動したのだろうか? いや、だがしかし、どうにもタイミングが良すぎる気がする……。
あまりの都合の良さに、俺は思わずそう考えてしまう。けれども、その考えはすぐさま振り払われた。
とても気になるが、今はこの好都合を受け入れよう。何となくだが、それはいずれ分かる気がする。
俺はそう納得をすると、目の前の戦いに集中することにした。
魔神剣を手にしたものの、まだピンチであることには変わらない。
それにこの魔神剣は、ただ手に持つだけで神力が消費されていく。加えて何か効果を使用すれば、それに比例して神力を差し出すことになりそうだ。
現状の消費量から考えて、あまり調子に乗らない方がいいだろう。赤い煙戦が控えていることも、忘れてはいけない。
だがその逆に出し惜しみして、負けるようなことなど愚の骨頂だ。
故に俺は、そのちょうどいい塩梅を見極める必要があった。
そうして魔神剣を構えてフレッシュゴーレムを見ると、向こうも反射的に聖剣を構える。
不思議と静寂とした時が流れ、共に動きが止まった。
まるで光の巨人と、闇の悪魔が相対しているように見えなくもない。
ライトアーマーを纏っているフレッシュゴーレムは、どこか神々しさもあった。
しかしそれは、やはり見た目だけなのである。
「!?」
フレッシュゴーレムの知能と思考力、そしてスキルの扱い能力が低いことが、その災いをもたらした。
背後から現れた俺のドッペルシャドーによる分身に気がつくのが、遅れたのである。魔神剣を持つ俺に対して、警戒をし過ぎたせいだろう。
その結果として分身による全力のシャドーサイスが、フレッシュゴーレムのライトアーマーを斬り裂いた。
それによりフレッシュゴーレム自体は耐性で無傷だったが、ライトアーマーの方は容易に消し飛ぶ。
俺のカオスアーマーとは違い、ライトアーマーは中級スキルだ。強力な闇属性の攻撃を受ければ、耐えきれずに消えてしまう。
そのことを、フレッシュゴーレムは知らなかったようである。俺のように対極属性の攻撃を受けても、消えないように保つ意識も皆無のようだった。
すると回復ができないフレッシュゴーレムの腹部からは、未だに神力の攻撃による傷が残っており、出血が止まっていない。
加えてライトアーマー内に溜まっていた血液が、風呂釜をひっくり返したかのように、勢いよく床へと広がっていく。
しかしそれだけ出血をしていても、ゾンビ系故に行動不可能にはならなかった。血が未だに流れ続けているのも、お構いなしのようである。
だがそれでも多少は以前よりも、動きが鈍くなっているようだった。
「コ゛カ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
その反射的に聖剣で分身を斬り裂いた動きが、俺には前よりも遅く見えた。
またそんな反射的に動いてしまった僅かな隙は、フレッシュゴーレムにとっては致命的になる。
ろくに学習もしない暴走アンデッドで、助かった。
フレッシュゴーレムがこちらに振り向いた時には、もう遅い。
「喰らえ、Vスラッシュ」
「――!!」
神力を付与し、無条件で耐性、無効、反射、再生を無効化する一撃だ。あらゆる耐性が高いコイツには、とてもよく効くだろう。
そうして魔神剣ルインダークネスによって、フレッシュゴーレムが斬り裂かれるのだった。
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