ドラゴン育成師とレッドドラゴン

手垢

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第1話

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「あれ、ジーク、また銃買い替えたのかよ。」
「あ、気付いた?これ結構高かったんだよぉ。早く試し打ちしたいなぁ。今度はきっと俺の手にもなじむと思うんだよなぁ」
「馬鹿言えよ。お前みたいな、ド三流に買われる銃の身になってみろってんだ。いくら銃変えたって上手くはならねぇっつの」

 モンドルク皇国軍の基地のむさくるしいロッカールームで大勢の男たちが着替えをしているなか、部屋の端でこれといった特徴のない二人組がジークという男の持っていた黒の美しい小銃について語らっていた。

「それに、それってもしかしてまた…、やっぱりだ。」
「なんだよ、またガウコ製をバカにするのか?」
「いやぁ、バカにはしないんだけどよ、都市伝説だろう、あれは。銃にそんなロマンチックなものを求めて、毎日のたばこ代を我慢するやつの気が知れねぇってだけだよ。」
「それだけじゃないさ、これには最新鋭の…」
「わかったわかった、お前の銃に対する愛情は知ってるから。それよか大体、見たことあんのか、大事なもんの幻覚?だっけか?」
「…いやないけど。」
「ま、昔のことに捕らわれすぎてっと、大事なもんなくすぜ、こんなふうになっ」

 いつの間にかジークのジャケットのポケットからくすねた煙草の入った紙箱を、人差し指と中指の間に挟んで見せつけた。
 ジークは自分のポケットを慌てて確認すると、それが自分が買ったものであると気づき、取り返そうと手を伸ばす。しかし、煙草の箱が指の間から手のひらへと握りかえられると、男はその手を引っ込めてジークの手をかわした。よけた勢いのまま荷物をさっとつかんで人込みを華麗にくぐり、更衣室を出て行った。

「久々に奮発したのによぉ…」

 下半身がパンツ一丁では追いかけるわけにもいかず、ただがっくりと入口を見つめるだけだった。
 ジークの後ろのベンチの上では、先ほどの銃が持ち主の哀れな出来事の一部始終を見守っていた。芸術的な美しさをまとった、何ともほれぼれするような見た目のそれの持ち手には、今はないガウコという国の紋章が刻印されていた。その印が付いた銃たちにはこんな噂があった。

『ガウコの銃で発砲すれば、持ち主が失った大切なものを見ることができる』

 たとえば、過去になくした自分の親族やペット、更には思い出の詰まった道具たちにまつわる思い出がまるで現実のように押し寄せてきて、見た者の心の隙間を埋めてくれる、と言われているのだ。
 それが嘘か本当かは使ってみないとわからないし客観的に確かめる術もないのだが、戦いに疲れた兵士の一部ではひそかに人気があり、そのために大金を払う者もいた。
 実はそんな噂が出始める様になったのにはガウコで起きた、ある出来事が原因になっていた。

 

 そもそもモンドルク、とは大陸の名前でありジークたちのいた基地のある大陸とは異なる名前の大陸である。基地のある大陸はナパージャ大陸と言われており、そこにはかつて大陸のほぼ全土を支配する強大な帝国があった。では、ガウコはどこにあったのかというと、その大陸に四方を囲われる形で独立国家として存在していた。

 ガウコは周りを山で囲われている広々とした盆地で、農業と軍需産業が盛んだった。そのうえ、ガウコの軍隊はそのすべてが帝国の特殊部隊並みに鍛えられていたから、帝国は手出しをすることはできずに、むしろ交易によってその技術を利用し、軍隊の質の向上に利用していた。
 当時のナパージャ大陸には現在のように進んだ軍需産業などはなく、剣や鎧などの装備は作っていたが、ドラゴンを育てて帝国やガウコの騎士団に使ってもらう、というのが主であった。いかに良いドラゴンを持っているかで、帝国は権力と武力を見せつけ、大陸の支配を盤石なものにしていたのだ。
 そんな大事な存在であったドラゴンを育てるドラゴン農場のなかでも、とりわけ優れたドラゴンを輩出していたのが、ガウコの北西にあったラース農場であった。


 先の噂の由来とは、この農場の五男ヒューゴと、彼の愛したドラゴンのレオとの物語である。
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