北の魔女

覧都

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第四十六話 新人歓迎会

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食堂セツ

「では、皆さんカンパーイ」

グエン商会、オリ国オオリ支店の向かい、四件目の食堂である。
グエン商会の近所の店は、その多くがグエン商会経営の店だ。
隣の武器店も、向かいの飲み屋も、この食堂もグエン商会経営の店で、イナ国王都イネスの食堂ベイと全く同じ作りである。
店の中の作りも同じだが、今日はいつもの個室では無く、人数が多いため二階の大きめの個室に案内された。
今日のメンバーは受付嬢中心に、右回りに女性陣メイ、レイ、あい、マイ、ハイ、左回りに、ガイ、ロイ、サイ、ヅイ、ドイ、イイである。
イイとハイが隣同士で、イイは初対面のハイの美しさにうっとり見とれている。
イイだけでは無く、ヅイ、ドイも、ハイに見とれている。
気付いて無いのはハイだけで、ハイは、あいから引き離されて悲しげな表情をして、あいをみつめている。
マイは、ハイをあいから引き離すのには成功したものの、ハイが新人三人から見つめられていることが気に入らない。

まったくなんでこんな何も出来ない、綺麗なだけが取り柄の女が後イ団にいるの、しかも、私のお母様にべったりで気持ち悪い。
男ならいくらでも落とせるでしょうに。
ハイを見つめ怒りの表情をしていた。

「では、皆さん料理が運ばれる前に伺いたいのですが、新人さんを五人、後イ団に入団させてよろしいですね」

「はいお願いします」

ガイが代表して答える。

「じゃあ、すぐに新人さん五人登録してきます」

受付嬢は言うがはやいか、飛び出していった。

料理が運ばれると後イ団はいつものように手づかみで、料理を食べ始める。
その光景を、初めて見た新人たちは、あっけに取られたが、とりあえず真似して同じように食べ始めた。

今日はサイも手づかみでパクパク食べている。
見た目は悪いが、食べてみるとどれもうまい。
だが、あの餃子は最高にうまかった、いままで食べた食事の中で一番うまかった。
酒もサイダーもうまかったなー。
そんなことを考えてあいを見ると、あいのコップから泡が吹き出しているのがみえた。

あいは、一杯目の牛乳を飲んだあとさいだーが飲みたくて、こっそりコップについだのだ。

「あわわわわあー」

牛乳のコップにさいだーをいれたら泡が吹き出し、ついあいが驚いて声を出してしまった。

「ずるい」

泡の正体を知っている、皆の声がそろった。

「なにが、ずるいのですか」

受付嬢が戻って来て、不思議そうに尋ねた。

「あいちゃんがさいだーをこっそり飲もうとしているんですよ」

レイが答える。

観念して、あいが酒とさいだーを出した。
ついでに、グラスも出した。

「本当は飲食店では、持ち込み禁止なんですよ」
「まあ、経営者の私が許可をしますから大丈夫ですけどね」
「一口頂いてもいいかしら」

受付嬢が両手にワイングラスを持ち、さいだーを一口飲んだ。
目を丸くして、全部飲み干すと、酒を一口飲み、これも飲み干した。
しばらく恍惚とした表情を浮かべ止まっている。

「な、なにこれおいしすぎる」
「だめだわ、いくらでも欲しくなっちゃう」
「酔っ払う前に報告しておきますね」
「ヅイさん、ドイさん、イイさん、マイさん、リイさん、全員登録してきました」

「え、リイさんってだれ」

レイが聞き逃さず聞き直す。

「あら私ですよ」

当たり前のように答える。

「その方が、こんご後イ団に新人さんを入団させるの、楽になりますので」

後イ団の入団条件が、団員の紹介か、入団試験なので受付嬢自身が団員になれば、団員を入団させやすくなるという考えだ。

「あんた、何勝手に自分まで登録しているのよ」

メイが少し切れ気味に言うと

「あら、ガイさんの許可はさっきもらっていますよ」
「新人さん五人登録して、いいですねって」

「まあ、いいか」

メイは、すでに真っ赤な顔をして半分酔っ払っている。
この美少女の年齢は、おばあさんなので、未成年ではない、お酒も合法なのである。

「ところで、三人の出身はどこですか」

ロイが新人の、ヅイ、ドイ、イイを見て問いかける。

「おれは、イナ国イネス」
「おれも、同じイナ国イネス」
「おれは、ヤパ国王都だ」

ヅイ、ドイがイナ国、イイがヤパ出身ということらしい。

「イイさんがヤパ出身なら、ヤパの支団長をやってもらいたいのだが」

ガイがイイに頭を下げる。

「お、おれでいいのか? そんな大役」

「腕もいいし、受付嬢さんの推薦でもある。何も問題はない」

「わかりました。お引き受けします」

ガイがにこりと笑い、頷く。

「あとは、イナ国と、ヤパ国だが」

ガイがヅイとドイを見る。

「おれ達にも支団長をやれと?」

ガイが、笑顔で頷く。

「お、おれは、オリ国がいい」
「おれは、イナ国がいい」

ヅイがオリ国を、ドイがイナ国を選んだ。

「ならば、それでお願いしたい」

ガイが頭を下げる。

「わ、わかりました」

二人も深々と頭を下げた。勢い余ってヅイが机に頭をぶつけた。

すでに机には、餃子も出され、サイが手づかみでバクバク食べていた。
前回、ナイフとフォークでキコキコやって食べていたので余り食べられなかったのだ。

この世は知らないことが多い、このように美味い食べ物も、飲み物も全くしらなかった。
いまなら王であったわしの前に、貧民が来ても笑顔で迎えられるのにな。
無知というのは、罪でおろかなことだ。
サイは餃子を口一杯ほおばりながら考え込んでいた。

「後イ団の入団条件ですが、名前の後ろにイが付いていないといけないのでしょうか」

受付嬢がガイに尋ねる

「いや、そんなことはない、そんな条件だと入れない人が出てしまうだろうし」

「なーーんだ、じゃあリンのままで良かったのか」

「えーー、名前変えちゃったの」

あいがそふとくりーむを食べながら、声を上げた。

皆の目線がそふとくりーむに集中した。

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