北の魔女

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第八十四話 ヤパの料理人

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お風呂が終われば、お食事ということで、お城で二番目に広い、部屋でのお食事会です。

部屋の上座中央が一段高くなり、女王の席が用意されている。
女王の席の前に、テーブルが二列、重臣席と、来賓席になっている。
二百人分の席が用意されているが、全部埋まっている。

わたしは、なぜか廊下で待たされています。
となりにはメイドさん、キキちゃんがいます。
クーちゃんは姿を消して小さくなり、わたしの肩の上です。

「メイドさん、わくわくしますね」

「はい、わくわくします」

「ヤパ料理ってどんなものが出るのでしょう」

「えっ」

メイドさんが聞き返してきた。
発音が悪かったかな。

「ユアプア料理ってどーんなもーのが出るのーでしょう」
「わくわーくしまーすね」

「は、はい?」

んっ、なんか、変だぞう。

「あのー、わたしなにか変なこと言っていますか」

「は、はい、えーと」
「まな様の料理が食べたくて、みなさん」
「わくわーく、しています」

「えーーっ」

まじかやられた。わたしは、食べるのでは無く、作る側か。

「ノル様から、カツサンド、ハムサンド、味噌煮込みうどん、チューチューをお願いしますと承っております」

「あーこないだ、あいちゃんにだけ伝授した奴だ」
「チューチューだけは、なにかわかりません」

「先に飲み物を用意したいと思うのですが」
「お酒とか出してもよいのでしょうか」

「はい、おねがいします」

わたしは、二百人分のグラスと、お酒、コーラ、サイダーをだした。
廊下に待機している、大勢のメイドさん達が必死で運び始めました。

次にサンドイッチ、一人一人に一皿ずつ、ハムサンド、カツサンド、玉子サンド、野菜サンドを乗っけて二百人分用意した。

女王様には専用で別に一セット用意した。



「メイドさん」

「はい」

「味噌煮込みうどんは、出したらすぐに食べて欲しいのですが、会場の皆さんに伝えて貰えますか」

「はい、分かりました」

お盆に、土鍋の味噌煮込みうどん、天ぷら盛り合わせ、天ぷらは贅沢に大きなエビを三尾、天つゆ、ご飯を乗せて味噌煮込みうどん定食を二百人分。
女王様用を別で一セット。
メイドさん達が必死で運びます。

「メイドさん、エビ天は二つ味噌煮込みうどんに乗っけて、つゆに沈めて後から食べるよう伝えて下さい」

そう、これが防家(さきけ)の食べ方なのである。
こうすると、天ぷらに味噌煮込みのつゆが染み込みうまくなり、味噌煮込みも天ぷらの衣の油がつゆをおいしくするのです。
エビ天三本なのは、一本はそのまま、二本は味噌煮込みうどんの中にいれて食べるためなのです。

「最後にチューチュー、って、なんだ」

「えーーっ」

メイドさんとクーちゃんまで驚いている。

「忘れちゃったんですか」
「白くて甘い」

「あっ」

思い出した、絞り袋の生クリームだ。
試しに一個出してみた。

「こ、これです」

やばい、これそのものがデザートになってしまった。
まあ、食文化なんてこんなものか。

少し小さめにして二百一個用意した。

食べるところを盗み見したが、偉い人達がチューチューしている姿は、それ違うんですとつっこみたかった。

「ふー、これで終わりですか」

「はい、ありがとうございます」
「ですが、わたし達も食べたいのですが……」

大勢のメイドさん達が、目をキラキラさせて見てくる。

「片付けが終わったら、皆で食べましょう」

わたしが言うと、わーーっと歓声があがった。
うん、こういうのは、悪くない。
わたしは、女の子達にちやほやされるのが好きな、女の子なのじゃー。

トラックに引かれて転生するまでは、ヒキニート三十五歳男だったのじゃー。
※注:全く転生などしていません、まなのつまらないギャグです。




静かになった会場で、メイドさんの食事がはじまった。
メニューはさっきと同じものにして食べてもらっています。
お風呂に入るとき足跡を拭いてくれた幼いメイドちゃんもいます。
わたしはその横に座り話しかけてみた。

「おいしいですか」

めちゃめちゃうなずいてくれています。
かわいいですね。

「しかし、興味深い、味、見た目、調理方法、この鍋」
「別世界の物のようだ」

びっくりして声の方を見ると、声の主はノルちゃんでした。

「な、な、なにを言っているのですか」

「その位すごいということです」
「これを全て一人で考えたのですか」

「はい、そうですね」

うーん、ノルちゃんが、何を聞き出そうとしているのか、真意がわからない。

「他に何か、すごいことを隠していませんか」

「あるかもしれません」
「あるかもしれませんが、きっかけが無いと思いつきません」
「何か面白そうなことや困りごととかありますか」

「当面は、城塞都市奪還が目標なので他の困りごとはないですね」
「なにか、あったらまた相談します」

「はい」

こうして、わたしはヤパ国ノルちゃんのもとを後にした。
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