北の魔女

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第百六十九話 お祭り

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ファン国王都。
本日は国民の祭日、セイ女様の日である。
王城の広場には出店が出て、国民が大勢集まり楽しそうである。
セイ女とおか様は神殿跡で訪れる人々に、ありがたがれて拝まれている。

「はーつまんなーい」

シエンは広場で遊びたいようである。

「しかたが無いでしょ、おか様とセイ女様は特別なんだからー」

シオンは、おか様とセイ女様の近くにいられるので、広場は諦めている。

おか様は、そんな二人にポロン、ポロンとサイダーを出した。

「うわーー、おか様ありがとう」

二人は喜んで飲み始めた。

それを見ると、おか様はザーーッと、サイダーを何百本も出した。

「くすくす、シオン子供達に配って上げて下さい」

そして、おか様は餃子を大皿で何皿も出した。

「ぐはーーおいしーー」

神殿跡は子供達であふれかえり、おか様はご機嫌だった。
退屈していた二人は、子供達の世話でてんてこ舞いになった。
特にお腹を空かした貧しい子供達が大勢集まっていた。

広場では、ビビが必死で考えたイベントが終ると、騎馬に乗った一人の武人ガンエイがゆっくり現れた。
馬から降りると国王にうやうやしく頭を下げた。
そして広場の中央に立つと巨大な矛を構えた。

凜と立つ姿はとても美しかった。
そのまま演舞を始めると、矛を止める度歓声があがった。

だがその歓声をかき消すように一際大きな歓声があがった。
この国では今や知らない者など誰もいないセイ女様が現れたのだ。

「せいじょさまーーー」

観客から大きな声援が上がる。
セイ女様は、人の多さにビックリして、もじもじしながら歩いてくる。

「セイ女様、この度は私の申し出を受けていただき、ありがとうございます」

そう言うと矛を手放そうとした。
セイ女様は笑顔で首を振った。

「このままで戦えと……」

セイ女様はうなずいた。
セイ女様はポーーンと距離を開けた。
ガンエイは一気に戦闘モードに入り矛を繰り出した。
セイ女様は攻撃を華麗に紙一重で避ける。

ガンエイは、フェイントの突きを出し、それを余裕でかわすセイ女様に素早く引き戻した矛で渾身の突きを出した。
その矛がセイ女様を貫いた。
見ているものは皆そう思ったが、それは残像だった。

「ガフッ」

セイ女様の膝がガンエイの腹に当たっている。
ガンエイはそのまま膝をついた。

「完敗です」

広場に割れんばかりの歓声が上がった。

「まあ、予想通りだが武器まで持たせて勝つとは……」

ビビがシアンに話しかけた。

「セイ女様は、戦うのが好きなのですね。意外な一面が見ることが出来ました」

こうして、ファン国最強の座をセイ女が奪った。
ファン国において、セイ女様の名声はまた一段上がった。

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