67 / 208
第六十七話 玉座
しおりを挟む
「リコさん」
フォリスさんが平伏している、リコさんに声をかけました。
もう一人は、ロホウさん、そして一際体の大きな人は、リコさんのお父さん、第一王子サダルさんでしょうか。
「皆さん、楽にして下さい」
僕の言葉で、リコさんが顔を上げて、心配そうな顔で僕を見つめます。
「よかったですね」
僕の言葉でリコさんの目から涙が、ポロンポロンと落ちました。
「アスラ様ーーー!!!」
この騒々しい声はオウブさんですね。
「何ですか、騒々しい!!」
フォリスさんが、オウブさんをたしなめます。
どっちが大人かわかりません。
「ご、ご無事でしたか。うおっ……」
オウブさんが、ロホウさんとサダルさんに気が付き驚いています。
「オウブさん、コウケンさんの家族はどうしましたか」
フォリスさんが、視線をオウブさんに移し、質問しました。
「は、捕らえて、逃げないようにしました」
オウブさんが、どや顔をしています。
「オウブさん、すぐにシュザクを護衛につけて、コウケンさんのもとに帰してあげて下さい。家財があればスザクに運ばせて下さい。他にも家族とはぐれた人がいれば、全員家族が一緒になれるよう手配をお願いします」
「……!!」
オウブさんは、驚いた顔になりましたが、すぐに意味を理解して悲しげな顔になり、部屋を出て行こうとしました。
「オウブさん、我がままを言ってすみません。これが僕とフォリスさんの気持ちなのです。お願いします」
「いえ、イルナ様の事を知りながら、家族を引き裂くような愚かな事をしてしまいました」
オウブさんは、僕の方を向き、膝をつき深く頭を下げてくれました。
「家族は、一緒にいられるよう、配慮して下さい。お願いします」
「ははっ」
オウブさんが元気に返事をして、出て行きました。
「魔王様、玉座には座らないのですか」
リコさんが笑顔で話しかけてきました。
「はい、ここに座るのは、配下がそろってから堂々と座るつもりなので、今は座りません」
「そうですか」
「サダルさん」
僕は、やっとサダルさんに話しかけた。
「私は、兵を向わせた敵軍の将です。どの様な罰も受ける覚悟は出来ております」
その顔は、死を覚悟した顔に見えます。
その代わり、娘の命だけは助けて下さいということでしょうか。
「では、罰を与えます。まずは、魔王アスラへの絶対の忠誠、そして王都の混乱の収拾をお願いします」
「あの……」
サダルさんが驚いていると、リコさんがサダルさんの手を優しく握りました。
「そうですよ。僕は前魔王とは違います。魔人の命は一つも失いたくありません」
僕は、リコさんの優しい表情に癒やされながら続けます。
「では、サダルさん。僕の人気が無いばかりに街の人が無駄に逃げだそうとしています。サダルさんが説明してくれた方が街の人が落ち着きそうです。まずは、この仕事をお願いします」
「ははっ」
サダルさんと、リコさん、ロホウさんが出て行くのを見送って、玉座の前に立ちます。
じっと玉座を、見ていると横にフォリスさんが立ってくれました。
「ようやく、ここまで来ましたね」
フォリスさんは玉座の方向を見たままつぶやきました。
その目はどこか遠くを見ているように感じます。
遠く離れたイルナの姿を見ているのでしょうか。
フォリスさんが平伏している、リコさんに声をかけました。
もう一人は、ロホウさん、そして一際体の大きな人は、リコさんのお父さん、第一王子サダルさんでしょうか。
「皆さん、楽にして下さい」
僕の言葉で、リコさんが顔を上げて、心配そうな顔で僕を見つめます。
「よかったですね」
僕の言葉でリコさんの目から涙が、ポロンポロンと落ちました。
「アスラ様ーーー!!!」
この騒々しい声はオウブさんですね。
「何ですか、騒々しい!!」
フォリスさんが、オウブさんをたしなめます。
どっちが大人かわかりません。
「ご、ご無事でしたか。うおっ……」
オウブさんが、ロホウさんとサダルさんに気が付き驚いています。
「オウブさん、コウケンさんの家族はどうしましたか」
フォリスさんが、視線をオウブさんに移し、質問しました。
「は、捕らえて、逃げないようにしました」
オウブさんが、どや顔をしています。
「オウブさん、すぐにシュザクを護衛につけて、コウケンさんのもとに帰してあげて下さい。家財があればスザクに運ばせて下さい。他にも家族とはぐれた人がいれば、全員家族が一緒になれるよう手配をお願いします」
「……!!」
オウブさんは、驚いた顔になりましたが、すぐに意味を理解して悲しげな顔になり、部屋を出て行こうとしました。
「オウブさん、我がままを言ってすみません。これが僕とフォリスさんの気持ちなのです。お願いします」
「いえ、イルナ様の事を知りながら、家族を引き裂くような愚かな事をしてしまいました」
オウブさんは、僕の方を向き、膝をつき深く頭を下げてくれました。
「家族は、一緒にいられるよう、配慮して下さい。お願いします」
「ははっ」
オウブさんが元気に返事をして、出て行きました。
「魔王様、玉座には座らないのですか」
リコさんが笑顔で話しかけてきました。
「はい、ここに座るのは、配下がそろってから堂々と座るつもりなので、今は座りません」
「そうですか」
「サダルさん」
僕は、やっとサダルさんに話しかけた。
「私は、兵を向わせた敵軍の将です。どの様な罰も受ける覚悟は出来ております」
その顔は、死を覚悟した顔に見えます。
その代わり、娘の命だけは助けて下さいということでしょうか。
「では、罰を与えます。まずは、魔王アスラへの絶対の忠誠、そして王都の混乱の収拾をお願いします」
「あの……」
サダルさんが驚いていると、リコさんがサダルさんの手を優しく握りました。
「そうですよ。僕は前魔王とは違います。魔人の命は一つも失いたくありません」
僕は、リコさんの優しい表情に癒やされながら続けます。
「では、サダルさん。僕の人気が無いばかりに街の人が無駄に逃げだそうとしています。サダルさんが説明してくれた方が街の人が落ち着きそうです。まずは、この仕事をお願いします」
「ははっ」
サダルさんと、リコさん、ロホウさんが出て行くのを見送って、玉座の前に立ちます。
じっと玉座を、見ていると横にフォリスさんが立ってくれました。
「ようやく、ここまで来ましたね」
フォリスさんは玉座の方向を見たままつぶやきました。
その目はどこか遠くを見ているように感じます。
遠く離れたイルナの姿を見ているのでしょうか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる