魔王

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第百話 使者到着

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「イルナ様は、すでに我々より数倍は強くなっています」

「すげーー!! と、いうことは俺たちよりもはるかに強いのかー」

俺たちは、三人の人間から、随分長いことイルナ様について教えてもらっている。
その美しさ、その強さは、やはりアスラ様と同じでベタ褒めされている。
さすがは、イルナ様だ。

「イルナ様の事を教えて頂いたお礼に、今度はこちらから、情報を少しだけ話そう」

「な、何でしょうか」

「うむ、間もなく魔王国から使者が着くと思う。その対応によっては戦争になりかねん、使者だけは怒らせないようにした方がいい」

「そうですか……」

エマという美青年が暗い顔になった。

「どうされました」

「アスラ様からの使者ということなら、手ひどい対応をされると思います。戦争は免れませんね」

「アスラ様は、戦争は望んでいないようだったが……」

俺は即位の日のアスラ様の暗い顔を思い浮かべていた。

「でも、その様に重要な事を教えて頂いて、ありがとうございます。では、そろそろレベル上げに戻ります」

「待つニャ。お前達には渡すものがあるニャ」

「えっ」

「アドは、シュドウを十人預かっているニャ。そのうち三人を貸し出すニャ」

アドは三人に、一人ずつシュドウを渡した。
当然シュドウには配下のシャドウが五人ついている。

「良いのですか?」

「その代わり今いるシャドウは、イルナ様に返すニャ」

「はい!!!」

三人の返事がそろった。
その目はうれしさに輝いているようだ。



「シュマちゃん、アスラバキをたのみます」
「シュファちゃん、アスラバキです」
「シュリアさん、アスラバキをお願いします」

三人がはやくもシュドウに名前をつけている。

「突いて、消して、取る」

そして、倒れているモンスターに剣を刺し、消えたモンスターから出て来た魔石を拾っている。
俺たちと同じ退屈なレベル上げをしている。
だが、実際はこれ程安全で、はやくレベル上げが出来る方法もない。
三人はどんどん強くなるだろう。

ただ、あの三人は昼間に公務があると言っていた。
俺たちは、二十四時間ずっとレベル上げが出来るから、すぐに追い抜けるだろう。
今回の出会いは、強い人間もいるということを思い知らされた。





その日王都に、魔人の国から貢ぎ物の使者が来た。
王城は、蜂の巣をつついたような大騒ぎになっている。

「イルナ様、オウブ殿の言うように使者が到着したようです」

私とアンちゃんは聖騎士の格好をして、聖騎士団に混じって王城に潜り込もうとしています。
私はすでにレベル5ダンジョンの攻略中ですが、エマさんはレベル2ダンジョンで父ちゃんの配下の魔人と会ったようです。
私が行っていれば、父ちゃんの事を一杯聞きたかったけど、エマさん達は私の事を教えるのが一杯でそこまで考えが及ばなかったようだ。
まあ、元気そうだからいいか。
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