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第十八話 休日
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その日は雲一つ無い青空だった。
「はーーあ、良い天気」
すでにウニのお造りの味も忘れるほどに月日が過ぎた。
「こんな良い天気の日は、一日くらい休みを取ろうかな」
一日のんびり過ごす決心をした。
モニターの前に座ると、登録している心霊系ユーツバーの映像をのんびり見はじめました。
淡々と続いていく映像は心地よすぎて眠くなります。
軽く居眠りをしている最中だった。
不意に全身に悪寒が走る。
「な、何この感覚、恐い」
私が知る中でも三本の指に入りそうなくらい恐い。
深夜、暗い廃墟の台所の映像だ。
黒いトレーナーの二人組が配信している。
一人は金髪でもう一人は茶髪の配信者だ。
ガタン
「うわあーーっ」
「おおおう」
台所で誰もいないはずなのに物音がした。
それに反応して茶髪の配信者が大声を上げた。
そして、その声を聞いて金髪君が驚いた。
「あのなー、こういうところで大声を出すなって、いつも言っているだろー」
茶髪君に怒りをぶつけた。
「すみません。なにか音が聞こえたものですから」
茶髪君は素直に謝った。
カタッ
「うおおおー」
今度は金髪君が物音に驚いて声を出した。
「……」
茶髪君が無言で見つめた。
大の男二人が、ただの古い家に入ってこんなにビクビクするのは、やはり何かの気配を感じているのだろうか。
部屋の中は、二人のライトが照らす場所以外は暗闇だ。
ガタン
「うっ」
二人は声を出しそうになって、それを噛み殺した。
この家は、さっきから物音がすごい。
この二人の侵入を拒んでいるようだ。
恐怖のせいか、二人の距離が近い。まるで寄り添う恋人のようだ。
「この家はこわいですねー」
茶髪君が話しかけた。
「ずっと、人の気配がする……」
金髪君は、まわりをしきりに気にしながら声を出した。
その声が終ると、家はまた静まりかえった。
さっきまで、ザワザワしていた家の雰囲気が、静かになった。
音がまわりに吸い込まれるように、無音になった。
二人は恐怖からかさっきから、一歩も動けないでいた。
廃墟は音で二人を追い返すのを諦めたように静かになっていた。
「はーーっ、はーーーっ」
二人の呼吸音が深くなり、恐怖が画面を通して伝わってくる。
二人は意を決した様に一歩、一歩、恐る恐る歩き出した。
ミシ、ミシ
木造の家の床からきしむ音がする。
映像は、二人を見送る。
――三人で来ているのね。一人はカメラマンだ。
そして隣の部屋にライトを入れる。そこは応接室だった。
生活感のある応接室だ。応接セットのテーブルの上には、灰皿もたばこもライターもある。
ライトは応接室を照らしたまま、しばらく動かない。
「おい、行くぞ」
金髪君が声をかけた。
「う、動けない」
茶髪君が訴えた。
「はぁあ」
金髪君が茶髪君の腕をつかんで隣の部屋に引っ張った。
隣の部屋に入ると、カメラは右側に向いた。
そこには荒らされたタンスが三つ、中のものが畳の上に広げられ散らかって酷い状態になっている。
畳の上の白い布の上には、幾つもの足跡がついている。
更にカメラは左に振られ、向かいのタンスを映し出す。
こちらのタンスも荒らされ、酷い状態だ。
ザブさんが荒らした廃墟より荒らされかたが酷い。
そしてタンスの横には仏壇があった。
更に奥を映すと、日本人形のガラスケースがのった背の低いタンス。
日本人形の横には白いぬいぐるみ。
その向かい側には三面鏡。
「えっ」
「……」
「えーーーーっ」
私は驚いた。
そして私は、この家を知っている気がする。
金髪君と茶髪君は三面鏡を背景に座り込んだ。
カメラは、時々何かを感じるのか。
ぴゅっ、ぴゅっと、色々なところを映しだす。
編集後にも入っているということは、編集前の映像はもっと沢山動いていることが想像出来る。
「ではここで、ばけたん検証してみたいと思います」
金髪君が言うと、茶髪君が震える手でばけたんをだした。
すでにばけたんのスイッチを入れるまでも無く、二人は何かを感じているようだ。
金髪君がスイッチを入れると、何度か点滅をして、真っ赤に光った。
「……」
二人はカメラの前で見つめ合った。
「ままま、真っ赤に光っています」
金髪君が震える口唇で言います。
そして、茶髪君がトリフィールドを出して、金髪君に渡します。
「次はトリフィールドで検証します」
ぴーーーーーっ
「うわああーーああ」
金髪君が悲鳴を上げると、茶髪君も悲鳴を上げました。
「ススス、スイイッチチも入れてないのになりだした」
トリフィールドは時々こんなことがあります。
こんな時はスイッチも切れなくなります。
「だ、だめだスイッチが切れない」
二人は震える手で、トリフィールドを色々触っています。
そして、何故か音が止ります。
「はーーーっ、はーーーっ」
また、二人の呼吸が速くなります。
金髪君は茶髪君からスピリットボックスを受け取ります。
「スピリットボックスでの検証に入りたいと思います」
金髪君はスイッチを入れます。
ザッザッザッ
ノイズが一定のリズムで鳴ります。
「誰かいますかー。だれかいるのならお話しませんかー」
金髪君が呼びかけます。
ザザザーガエデーーーザザザ
「うわあああーーー」
三人は逃げ出しました。
映像は廃墟の外に出ると、家を映します。
家から強い怒りを感じます。
――でも何故、安崎さんの映像では静かな廃墟になっていたはず。
私はもう一度映像を見直しました。
「わあっ」
ぬいぐるみが映った時、悲鳴を上げてしまった。
ぬいぐるみの手から、小さな鏡が無くなっていたのです。
「はーーあ、良い天気」
すでにウニのお造りの味も忘れるほどに月日が過ぎた。
「こんな良い天気の日は、一日くらい休みを取ろうかな」
一日のんびり過ごす決心をした。
モニターの前に座ると、登録している心霊系ユーツバーの映像をのんびり見はじめました。
淡々と続いていく映像は心地よすぎて眠くなります。
軽く居眠りをしている最中だった。
不意に全身に悪寒が走る。
「な、何この感覚、恐い」
私が知る中でも三本の指に入りそうなくらい恐い。
深夜、暗い廃墟の台所の映像だ。
黒いトレーナーの二人組が配信している。
一人は金髪でもう一人は茶髪の配信者だ。
ガタン
「うわあーーっ」
「おおおう」
台所で誰もいないはずなのに物音がした。
それに反応して茶髪の配信者が大声を上げた。
そして、その声を聞いて金髪君が驚いた。
「あのなー、こういうところで大声を出すなって、いつも言っているだろー」
茶髪君に怒りをぶつけた。
「すみません。なにか音が聞こえたものですから」
茶髪君は素直に謝った。
カタッ
「うおおおー」
今度は金髪君が物音に驚いて声を出した。
「……」
茶髪君が無言で見つめた。
大の男二人が、ただの古い家に入ってこんなにビクビクするのは、やはり何かの気配を感じているのだろうか。
部屋の中は、二人のライトが照らす場所以外は暗闇だ。
ガタン
「うっ」
二人は声を出しそうになって、それを噛み殺した。
この家は、さっきから物音がすごい。
この二人の侵入を拒んでいるようだ。
恐怖のせいか、二人の距離が近い。まるで寄り添う恋人のようだ。
「この家はこわいですねー」
茶髪君が話しかけた。
「ずっと、人の気配がする……」
金髪君は、まわりをしきりに気にしながら声を出した。
その声が終ると、家はまた静まりかえった。
さっきまで、ザワザワしていた家の雰囲気が、静かになった。
音がまわりに吸い込まれるように、無音になった。
二人は恐怖からかさっきから、一歩も動けないでいた。
廃墟は音で二人を追い返すのを諦めたように静かになっていた。
「はーーっ、はーーーっ」
二人の呼吸音が深くなり、恐怖が画面を通して伝わってくる。
二人は意を決した様に一歩、一歩、恐る恐る歩き出した。
ミシ、ミシ
木造の家の床からきしむ音がする。
映像は、二人を見送る。
――三人で来ているのね。一人はカメラマンだ。
そして隣の部屋にライトを入れる。そこは応接室だった。
生活感のある応接室だ。応接セットのテーブルの上には、灰皿もたばこもライターもある。
ライトは応接室を照らしたまま、しばらく動かない。
「おい、行くぞ」
金髪君が声をかけた。
「う、動けない」
茶髪君が訴えた。
「はぁあ」
金髪君が茶髪君の腕をつかんで隣の部屋に引っ張った。
隣の部屋に入ると、カメラは右側に向いた。
そこには荒らされたタンスが三つ、中のものが畳の上に広げられ散らかって酷い状態になっている。
畳の上の白い布の上には、幾つもの足跡がついている。
更にカメラは左に振られ、向かいのタンスを映し出す。
こちらのタンスも荒らされ、酷い状態だ。
ザブさんが荒らした廃墟より荒らされかたが酷い。
そしてタンスの横には仏壇があった。
更に奥を映すと、日本人形のガラスケースがのった背の低いタンス。
日本人形の横には白いぬいぐるみ。
その向かい側には三面鏡。
「えっ」
「……」
「えーーーーっ」
私は驚いた。
そして私は、この家を知っている気がする。
金髪君と茶髪君は三面鏡を背景に座り込んだ。
カメラは、時々何かを感じるのか。
ぴゅっ、ぴゅっと、色々なところを映しだす。
編集後にも入っているということは、編集前の映像はもっと沢山動いていることが想像出来る。
「ではここで、ばけたん検証してみたいと思います」
金髪君が言うと、茶髪君が震える手でばけたんをだした。
すでにばけたんのスイッチを入れるまでも無く、二人は何かを感じているようだ。
金髪君がスイッチを入れると、何度か点滅をして、真っ赤に光った。
「……」
二人はカメラの前で見つめ合った。
「ままま、真っ赤に光っています」
金髪君が震える口唇で言います。
そして、茶髪君がトリフィールドを出して、金髪君に渡します。
「次はトリフィールドで検証します」
ぴーーーーーっ
「うわああーーああ」
金髪君が悲鳴を上げると、茶髪君も悲鳴を上げました。
「ススス、スイイッチチも入れてないのになりだした」
トリフィールドは時々こんなことがあります。
こんな時はスイッチも切れなくなります。
「だ、だめだスイッチが切れない」
二人は震える手で、トリフィールドを色々触っています。
そして、何故か音が止ります。
「はーーーっ、はーーーっ」
また、二人の呼吸が速くなります。
金髪君は茶髪君からスピリットボックスを受け取ります。
「スピリットボックスでの検証に入りたいと思います」
金髪君はスイッチを入れます。
ザッザッザッ
ノイズが一定のリズムで鳴ります。
「誰かいますかー。だれかいるのならお話しませんかー」
金髪君が呼びかけます。
ザザザーガエデーーーザザザ
「うわあああーーー」
三人は逃げ出しました。
映像は廃墟の外に出ると、家を映します。
家から強い怒りを感じます。
――でも何故、安崎さんの映像では静かな廃墟になっていたはず。
私はもう一度映像を見直しました。
「わあっ」
ぬいぐるみが映った時、悲鳴を上げてしまった。
ぬいぐるみの手から、小さな鏡が無くなっていたのです。
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