学校で人気な二子玉家の双子はいつでも仲がよろしい(？)ようです

二子玉家の兄は今日も仲良くお泊まり中

「なぁ、正樹。今日うちに来ないか？」

放課後、いつものように俺の元まできた凛が言った。

「別にいいけど、どうしたんだ急に？」

「ほら、前に言ってたゲームあっただろ。あれ、協力プレイじゃないと進めない所があって行き詰まってるんだ」

「そういえば、そんな話もあったな。」

「頼むよ、正樹。今日ならうるさい奴もいないしさ」

「今日は鈴、学校に来ていないのか？」

「あぁ。なんかドラマの撮影が急に入ったとかで今日は夜遅くまで仕事らしい。」

鈴は凛と違い、仕事の関係で学校を急に休むことも多いため、時々このようなことがある。

「俺はいいけど…凛の方こそ仕事は大丈夫なのか？」

「今日は休養日だ！正樹とゲームするために昨日頑張ったからな！」

「そういうことなら、遊ぼうか。」

俺の返答に嬉しそうに頷いた凛はスマホを確認する。

「志摩に迎えを頼んであるから一緒に帰ろう」

志摩さんは二子玉家に昔から仕えるメイドさんだ。俺たちが幼い頃からよくお世話になっている。

「分かった。もう来てるのか？」

「もうすぐ着くらしいから校門を出ておこうか」

俺と凛は帰り支度を済ませて、校門を出る。校門のすぐそばには、高級外車が1台停まっており、脇にはメイド姿の若い女の人が綺麗な姿勢で立っていた。

その女性は鈴ほどではないにしても、整った顔立ちで、腰回りがキュッと締め付けられたロング丈のメイド服を完璧に着こなしている。特に目を引くのは、後ろで一つにまとめた、風に靡くなびく長い銀色の髪の毛だ。

俺たちが子供の頃から一切変わらないその外見からは、正直、年齢を読み取ることができない。昔、子供ながらに気になって聞いたことがあったが、上手くはぐらかされてしまった。流石に成人はしていると思うが…それ以上は推測することが難しい。

「お帰りなさいませ。凛様。正樹様。」

志摩さんは、洗練されたお辞儀で俺たちを迎えてくれる。

「ただいま。わざわざ迎えに来てもらって済まないな」

「滅相もございません。正樹様もお元気そうで何よりです」

「お久しぶりです、志摩さん。今日はお世話になります」

俺も志摩さんに合わせてお辞儀をする。

志摩さんが後部座席を開けてくれたので、凛に続いて車に乗り込む。ふかふかの座席に体を預けていると、前に乗りこんだ志摩さんの運転で静かに車が動き出す。

そこでふと思い出したように凛が俺に聞いてくる。

「そういえば、今日泊まって行けよ」

「え？」

「どうせ、明日は学校休みだろ？徹夜でクリアまでしちゃおうぜ！」

「そんな、急に泊まるなんて迷惑じゃないか？」

「その点に関してはご心配無用でございます」

バックミラー越しに話しかけてきた志摩さんと目が合う。

「そういうことなら、お言葉に甘えようかな」

「よし、決まりだな！」


窓の外を見ると、丁度車が俺たちの住む住宅街に入っていくところだった。

ここは一見普通の住宅街に見えるのだが、実はちょっと面白い点がある。

それはある所を境にして一般的な住宅街と高級住宅街が隣接している点だ。

もちろんそのある所とは俺の家と凛達の家なのだが…

今この車が走っているのは一般住宅街の為、もう2、3分も車を走らせれば、先に俺の家が見えてくるだろう。

「そういえば、よく昔は凛の家に泊まらせて貰ってたな」

「懐かしいよな。あの頃は毎日夜中まで話し込んで、よく志摩に怒られたっけ？」

「凛様達が遅くになっても寝ないのが、悪いのです」

「悪かったって」

そんな昔話をしているとようやく俺の家が見えてくる。それをそのまま通り過ぎ、「二子玉」と表札に書かれた立派な西洋建築のお屋敷の前で、停車する。

「到着しました。今、ドアを開けますね。」

そう言って志摩さんは車を降り、扉を開けてくれる。

「どうも、ありがとうございます」

お礼を言って俺は車を降りたあと、改めて屋敷を見る。毎日のように見ているはずなのに、高級住宅街の中でも頭１つ抜けて大きなこの建物は、いつ見ても壮観だ。

「では、私は車庫の方に車を置いてきますので、先に凛様の部屋に上がっておいてください。後で、お茶とお茶請けをお持ちいたします」

「あ、お構いなく」

「そういうわけにはいきません。正樹様はお客さまですから」

ニコッと爽やかに笑ったあと、志摩さんは車に乗り込んでいった。

「じゃあ、行こうか」

「あぁ。お邪魔します」

凛に続いて俺は門をくぐる。