魔術師たちに革命を

諸星影

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ROUTE1(プロローグ/斬裂魔事件編)

1-04  方針と報告

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 学園での初日を終え、自宅へと帰宅。
 スマホとPCを接続し情報屋から送られてきた斬裂魔の情報を
 モニターへと表示する。

「――――ふむ」

 薄暗い部屋の中、表示された情報を眺めつつ思考を回す。

 斬裂魔の最初の犯行は約一年前。
 犯行現場は繁華街周辺、及び学園通学路付近に限定され、狙われているのは
 学園の生徒ばかり。

 使用された凶器は直刀型の日本刀。
 恐らくは魔力を流すことで殺傷能力が付与されるタイプの魔道具の一種。

 一見、無作為に生徒を襲っているかに見えるがその実、狙われた生徒は皆一様に
 魔術師科の生徒であり、その関連性は未だ不明――――か。

「なるほどな」

 魔術特区内には学園統治という形式上、警察という組織はない。
 その代わりに生徒会直属の執行組織である『風紀委員会』がその役を担っている。

 風紀委員会は学園生徒内から有志ある者、補助金制度を当てに生活している者とで
 組織され、通常の授業カリキュラムとは別に特殊な訓練カリキュラムの受講が
 義務付けられている。

 その実力は外部の警察のレベルと遜色なく、一時的とはいえ魔術の使用権が
 生徒会より与えられているのもあって、この特区内では絶対的な武力を
 誇っている。

 俺としてもそんな彼らと正面から衝突は避けたいところ。

「(とはいえそんな彼らでも未だ犯人の目星すら掴めていないことを察するに、
 この案件は中々に骨が折れそうだな――――)」

 そんなことを考えつつ俺はPCのモニターを閉じ、情報を写し取ったUSBを
 テーブルの隠し棚へとしまう。そうして今度はスマホのSIMカードを一般の
 ものから特殊なものへと差し替え電話をかける始める。

 プルルルル――――三度目のコール音の後、ガチャリを回線が繋がる。

『はい』
「どうも有坂さん、最上です」
『これは最上さん、お疲れ様です』

 通話の相手は上司、風城寧々の側近である有坂真夜。
 今回の任務にあたっての専属オペレーターでもある人物だ。

「――――ということになりまして」

 俺はある程度の学園生活の出来事を交え、定期連絡の一環として情報屋との
 やり取りを伝えた。

『ふむ、そんなことが』

 報告を聞き終え、有坂さんは話を含みのある言い方で返事を返す。

「いけませんでしたか?」

『いえ、本任務における現地での判断はエージェントに一任されています。
 その為、最上さんが必要であると判断したのでしたらこちらからは
 何もありません』

 ただと有坂さんは続ける。

『これは言うまでもないことですが生徒会、ひいてはその治安維持組織である
 風紀委員会に目を付けられるような行為はお控えください』
「無論です」

 有坂さんの懸念も尤もで、この潜入任務はマギアテックスの下部組織である
 生徒会に知られた時点で積み。

 極秘資料流出という最大のチャンスを逃すだけでなく、魔力犯罪対策室の
 存在自体を露見させる可能性も十分にあり得るのだ。

『とはいえ斬裂魔…………ですか』
「何かご存じなのですか?」
『知っている――――というほどのものではないのですが。今回の任務の前、
 事前調査で少しだけ資料を拝見しました』
「それで?」
『恐らくですが、斬裂魔の刀は違法に特区内に持ち込まれたものだと思います』
「可能なのですか、そんなこと」
『公的な資料は見つかりませんでしたが不可能ではないはずです』
「――――マギアテックス」
『はい』

 違法な武器密輸。
 そしてそれを扱う斬裂魔――――これはまたややこしいことになってきたな。

『当然、真意は定かではありませんが、こちらでも引き続き調査してみましょう』
「お願いします」

 さてと、と有坂さん。

『報告は以上で終わりですか?』
「はい、それでは俺はこれで」
『いえ少しお待ちを』
「――――?」

 数秒後、プツリと通信先が切り替わる独特な音が耳に届く。
 その音を聞き俺はこの後の展開を察した。

『やぁ、司くん、ご無沙汰』

 有坂さんとの会話が終わり、通信相手が唐突に彼女から風城さんへと変更される。

「なんですか?」
『おいおいつれないな。折角、忙しい中こうして時間を作って話を聞きに
 きたっていうのに』

 そういう風城さんの周囲からちゃぷんと水の音が聞こえてくる。

「もしかしなくても、入浴中ですか?」
『分かるかい?』

 風城さんはじゃぶじゃぶと水面を揺らすような音と共に反響した声で
 悪気なく答える。

「定期報告なら既に有坂さんに済ませていますが」
『知ってるよ。だから真夜に繋がせたんだ』
「はー」

 この奔放さ。毎度のことではあるものの、側近である有坂さんの苦労が偲ばれる。

『どうだい学校の方は? 馴染めそうかい?』
「なんですかその質問」
『なに、偶には後継人としての責務でも果たそうかと思ってね』
「はぁ」
『それでどんな塩梅だい』
「一応、友達――はできました。多分……」
『おやそうかい。それは何よりだ』
「…………」
『どうした?』
「いえ、なんというか」
『なんだい、ハッキリ言いたまえよ』
「では遠慮なく」

 ゴホンッと咳払いを一つ。

「秘匿回線でバカな話を振ってこないでください」
『――あら、怒られてしまったよ。これでも君を労おうと気を利かせた
 つもりだったのだがね』
「……全く。そういうことでしたら任務を無事終えられたらにしてください」
『そうだね。そうすることにするよ』

 ハッキリとした強めの口調で注意されたからか、風城さんは少し寂しそうに呟く。
 が、即座にいつもの調子に戻ると室長として威厳ある声色で告げる。

『では司くん、朗報を期待する』
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