魔術師たちに革命を

諸星影

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ROUTE1(プロローグ/斬裂魔事件編)

1-17  憧れのその先

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 遠乃先輩とのデート日。
 昼食を終えた後は俺たちは再びメインストリートの方へと移動し特に当てもなく
 散歩がてら色々な店を物色して回っていた。

「どうこれ。似合うかな?」
「いいですね。明るい色がとても映えていて、先輩にピッタリです」
「えへへ、そうかな~」

 先輩は年相応の振る舞いでいつも以上に明るく振る舞い笑顔を輝かせる。
 その底抜けな明るさと笑顔に、俺もまた妙に気分が高揚し楽しいという
 気持ちが込み上げてくると同時に胸の中が温かくなっていくような感覚を
 覚える。

 俺としてもこのお出かけが初めてのデートだったこともあってか、
 実は結構不安な部分もあったのだが、こうして楽しそうな彼女を見ていると
 そんな薄暗い気持ちはいつのまにか何処かへと飛んで行ってしまっていた。

「そういえばふと気になったんですが、どうして先輩は急にデートに行こうと
 誘ってくれたんですか?」
「どうしてってそりゃ単に私がしたかったからだよ」
「そう、なんですか?」
「だって考えてみてよ。私と君は今やお互いの目的の為に協力関係にある
 ワケじゃない。ならきっとこの先、前のような先輩後輩の関係じゃいられ
 なくなる。それってすごく悲しいことじゃない」
「そう……かもしれませんね」

 確かに彼女に意見には一理ある。
 現状、いくら信頼できる協力関係が築けていても、彼女は斬裂魔として
 俺は秘匿組織のエージェントとしての顔を持つ以上、この協力関係が終われば
 決して交わることのない運命にある。

 そしてそれがいつ訪れるのかは誰にも判らないからこそ、
 彼女の悲しいという感情も理解できる。

「なるほど、実に先輩らしい理由ですね」
「でしょ」

「――――私は司くんのこと嫌いじゃないしどちらかと言えば好き。
 だからこそ本当はずっと仲良くしてたいけどそれは叶わない。
 ならせめて今だけは楽しい時間を共有していたいの」

 と彼女は頬を赤らめながら答える。

「(可愛いなこの人)」

 とはいえ思ったよりもピュアな答えに拍子抜け半分といったところ。

 ちなみにもう半分は、何か思惑があるのではと勘繰った自身の性根の悪さを
 嫌悪する気持ちである。

「でもそれだと公私共に先輩の時間を奪いかねません。友達もいるでしょうし
 恋人なんかも…………」
「残念ながら私に恋人はいないわよ。いたらこうして君とデートなんか
 してないでしょ」
「それはそうなんですが、一応確認は大事かと思いまして。
 だって先輩ってモテるじゃないですか」
「えーあーうん、まぁモテるの、かな? これでも一応は女の子だし見た目には
 気を使ってる方だから外見だけは褒められることは多いけど…………」
「意中の相手とかもいないんですか?」
「そうだね、今のところは――――でもどうしてそんなことを聞くの?」
「特に他意はないですよ。一応、そういった交友関係があるなら今後の為に
 知っておくべきかと思いまして」

 そういうと先輩は一瞬だけポカンとした表情を浮かべた後、
 すぐさま『はぁー』と深い溜息を付いた。

「…………真面目だね司くんは」

 すると彼女は先程の溜息とは別に小さく息を吐き、
 わざとらしく肩を落としてみせる。

「逆に聞くけど司くんは好きな人とかいないの?
 うちの学校って結構可愛い子多いと思うんだけど」
「どうでしょうか、少なくとも自分は色恋には疎い方ですからね。
 それにこっちに引っ越してきてまだ一か月も経ってないですから好意を
 寄せている相手もいないですね」
「――――それもそうか」

「…………」

 するとどういうワケか彼女は閉口し眉を顰めながら『うーん』と唸り声を
 あげる。そうしてしばらく経った頃、彼女は何かを思いついたのか自身の
 人差し指をピンっと真上へと伸ばす。

「――――ならこうしましょう。もし仮に私たちで生徒会を退けることができたら
 その時は私が君の恋人になってあげる」
「ッ! 本気ですか、それ?」
「勿論本気よ。とはいえもしもの話だからね。仮にそれまでに司くんに彼女が
 出来たらこの話はなしということでね」
「…………でも、どうして急にそんな話になるんですか?」
「あら、イヤ?」
「イヤではないですが、それだと俺だけにしかメリットなくないですか?」
「そうでもないわよ。私、司くんが相手なら付き合ってもいいと思ってるから」
「揶揄わないでください」
「揶揄ってないわよ。私は本気よ」

 続けて先輩。

「当然、司くんが私に向けてくれている好意が、恋愛のものでなく尊敬の念で
 あることは理解している。だけどそれはそれでやる気には繋がるでしょ?」
「それはまぁ、そうかもしれません」

 先輩との恋人関係…………今までそんなこと考えたこともなかったが、
 確かに先輩の言う通り、それはそれでやる気は上がる気もしなくはない。

 とはいえエージェントという立場と任務中ということも考慮しつつ、
 俺が本当の意味で恋人を作ることはないだろうが――――それでも
 彼女が望んでくれるのならば、俺はその気持ちに真摯に向き合いたいと思う。

 それにきっと任務さえどうにか完遂できれば、その後のことであれば
 風城さんも少しくらいは大目に見てくれるだろうしな。

「ちなみに…………そういう約束をしていれば、私の交友関係なんかを意識せずに
 済むでしょ?」
「なるほど。そういうことなら実に合理的な判断とも言えますね」
「なら決まりね。それじゃ改めて、これからよろしくね司くん?」
「はい、よろしくお願いします。先輩」

 そうして俺と先輩の関係は、彼女の提案によってより一層深いモノへと
 相成ったのであった。
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