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あの日から。
刻の流れ
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あの日から優寿と会うことは無くなった。
振り返ってみるとわかるものだが、優寿との接点が塾しかなかったのは僕も驚いた。
僕は毎日のようにLINEを送っていた。
19時、塾が終わるこの時間に「また明日」と聞きたくなって気づいたら送ってしまう。これが恋なのかと浸る時もあれば、流石に嫌われるかなと、不安になる時も。
優寿は丁寧な文字で返事をくれた。決して適当に返信してるようではなさそうな言葉遣いが僕は好きだった。
ある休みの日、思い切って「電話をしたい」と言ってみた。既読がつくまでに何回もトーク画面を行ったり来たり。そんなことをしていたら既読がついて、返事を見た。
[ごめんできないと思う。最近忙しくて時間に余裕ないんだよね。ほんとにごめんね]
別に悲しくも無かった。まぁ、そうだよなと、自分に言い聞かせるだけで。嫌われてるとか脈ナシとか1ミリも思いたく無かった。そう信じたかった。
それでもメッセージは続いた。塾がない日に僕がLINEをしなければ優寿の方から送られてくることも多々あって、楽しかったし嬉しかった。
でも、どうして塾を辞めたのかは聞けなかった。
聞かない方がいい気がして、なにも言わなかった。
そうして、春を迎えようとしていた。
僕は、学校へ行くときも帰るときも、塾へ行くときも帰るときも、ずっと1人だった。一緒に笑って話しながら帰る友達がいなくて、暇だなぁと感じたりするけど、なぜか孤独を感じることはなかった。
その日は雪が降り積もっていた。
2月。私立受験当日を迎えた僕は緊張と心配で心が潰されそうになっていた。私立は葵さんと同じ高校を受ける。コースが違うので偏差値は比べ物にならないが、優寿と会う機会が全くない僕にとって葵さんは心強い存在になっていた。
葵さんと優寿の話はしたことがない。その話をだす余裕もないぐらい葵さんがずっと話しているからだろうか、僕が日和ってるだけなのか。
どこの高校を受けるかもわからない。今何をしているのかもわからない。誰と居るのかも、何を食べてるのかも、今は何で笑うのかも、全部わからない。わかれない。
LINEはするのに、聞かない僕は、聞けない僕はたぶん、怖かったんだと思う。恋って、相手に自分のことがどう思われてるかが一番気になって、印象を少しも下げたくないもの。優寿と話せているならそれで良いやと、言い聞かせている自分もいた。
私立受験合格者発表。
webサイトで合格者速報もあったが、やっぱり直接見たいと、葵さんと高校へ向かう。
その電車の中で僕は言った。
「優寿は‥、、なにしてるかな」
2人が黙る。電車の振動がガタンゴトンと、心臓に直接響いているようで、聞かない方が良かったのかと、申し訳ない気持ちが生まれる。
「通信制には入るみたいだよ。」
葵さんがそう言った。優寿の成績は学年トップレベルと聞いたことがあったので通信制という単語に不思議と驚きを隠せなかった。
私立、門町高校の合格が決まった。
葵さんは第一志望のコースは落ちたものの、回し合格というやつで一つ下のコースで合格。それでも僕のコースより遥か上だった。
帰りの電車で葵さんは言った。
「お見舞い、行けたらいいんだけどね」
——— あの雨の日、傘に打ちつける雨音が耳を塞いで、葵さんの声は聞こえていなかった。
振り返ってみるとわかるものだが、優寿との接点が塾しかなかったのは僕も驚いた。
僕は毎日のようにLINEを送っていた。
19時、塾が終わるこの時間に「また明日」と聞きたくなって気づいたら送ってしまう。これが恋なのかと浸る時もあれば、流石に嫌われるかなと、不安になる時も。
優寿は丁寧な文字で返事をくれた。決して適当に返信してるようではなさそうな言葉遣いが僕は好きだった。
ある休みの日、思い切って「電話をしたい」と言ってみた。既読がつくまでに何回もトーク画面を行ったり来たり。そんなことをしていたら既読がついて、返事を見た。
[ごめんできないと思う。最近忙しくて時間に余裕ないんだよね。ほんとにごめんね]
別に悲しくも無かった。まぁ、そうだよなと、自分に言い聞かせるだけで。嫌われてるとか脈ナシとか1ミリも思いたく無かった。そう信じたかった。
それでもメッセージは続いた。塾がない日に僕がLINEをしなければ優寿の方から送られてくることも多々あって、楽しかったし嬉しかった。
でも、どうして塾を辞めたのかは聞けなかった。
聞かない方がいい気がして、なにも言わなかった。
そうして、春を迎えようとしていた。
僕は、学校へ行くときも帰るときも、塾へ行くときも帰るときも、ずっと1人だった。一緒に笑って話しながら帰る友達がいなくて、暇だなぁと感じたりするけど、なぜか孤独を感じることはなかった。
その日は雪が降り積もっていた。
2月。私立受験当日を迎えた僕は緊張と心配で心が潰されそうになっていた。私立は葵さんと同じ高校を受ける。コースが違うので偏差値は比べ物にならないが、優寿と会う機会が全くない僕にとって葵さんは心強い存在になっていた。
葵さんと優寿の話はしたことがない。その話をだす余裕もないぐらい葵さんがずっと話しているからだろうか、僕が日和ってるだけなのか。
どこの高校を受けるかもわからない。今何をしているのかもわからない。誰と居るのかも、何を食べてるのかも、今は何で笑うのかも、全部わからない。わかれない。
LINEはするのに、聞かない僕は、聞けない僕はたぶん、怖かったんだと思う。恋って、相手に自分のことがどう思われてるかが一番気になって、印象を少しも下げたくないもの。優寿と話せているならそれで良いやと、言い聞かせている自分もいた。
私立受験合格者発表。
webサイトで合格者速報もあったが、やっぱり直接見たいと、葵さんと高校へ向かう。
その電車の中で僕は言った。
「優寿は‥、、なにしてるかな」
2人が黙る。電車の振動がガタンゴトンと、心臓に直接響いているようで、聞かない方が良かったのかと、申し訳ない気持ちが生まれる。
「通信制には入るみたいだよ。」
葵さんがそう言った。優寿の成績は学年トップレベルと聞いたことがあったので通信制という単語に不思議と驚きを隠せなかった。
私立、門町高校の合格が決まった。
葵さんは第一志望のコースは落ちたものの、回し合格というやつで一つ下のコースで合格。それでも僕のコースより遥か上だった。
帰りの電車で葵さんは言った。
「お見舞い、行けたらいいんだけどね」
——— あの雨の日、傘に打ちつける雨音が耳を塞いで、葵さんの声は聞こえていなかった。
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