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アンニュイなオレの仲間たち 2
しおりを挟むモンスター同士も弱肉強食の世界だから、日々生きるか死ぬかの戦いはしてる。
だがそれは生きる為に必要なことだからだ。
それ以外は、基本的に縄張りさえ守れば争うようなことはしない。
だが人種は違う。
奴らは自分達のエゴや娯楽でオレたちを簡単に殺そうとする。
だからオレたちは人種が現われると戦う。
自分と仲間を守る為に。
「だが珍しいことではないにしても、そんな事情があれば、人種に召喚奴隷にされるなんて屈辱だろう?」
「そんな事情がなくても、喜んで召喚奴隷になる奴なんていねえだろ」
「それもそうだったな。俺もミシェリアの為と思って戦ったことは今まで1度もない。そしてこれからもないからな」
フォーテルの言う通り、召喚奴隷自身が召喚術者の為に戦うなんてことは滅多にない。
なぜなら召喚奴隷のほとんどが、召喚契約で無理やり従わされてるからだ。
ただ稀に、レオンみたいに召喚奴隷自身が召喚術者に忠誠を誓ってたり、自分の意思で守ろうとするような奴もいるようだが、俺には一切理解出来ん。
「それじゃ次はボクの番にゃ!」
「別にニャン吉の話しはしなくていいぞ?」
「にゃんでにゃ~っ!? ボクのも聞いてにゃ~っ!!」
冗談で言ったつもりだったんだが、ニャン吉は自分の住処のことも聞けと、地団駄を踏んでガキのように体中で怒りを表現してる。
「冗談だって。だからそう怒るな。で、ニャン吉の住処はどんななんだ?」
「も~いいにゃ!! ぜ~ったいに話してあげないにゃ!!」
「悪かったって。ちょっとした冗談だろ? 機嫌直してくれよ?」
「イヤにゃ!!」
ニャン吉は口を尖らせ、そっぽ向いて腕を組んでる。
どうやらすっかりヘソを曲げさせてしまったらしい。
「・・・どうするよフォーテル」
「リザドの撒いた種だろう。自分で刈り取れ」
「つめてぇなぁ・・・」
まあ確かにオレのせいではあるんだが・・・。
さて、どうすっかな。
「・・・あ~、ニャン吉の話しが聞きてえなぁ」
オレは、さも残念そうに呟いてみる。
すると、ニャン吉の耳がピクッと動いたのをオレは見逃さなかった。
「ニャン吉はどんなところに住んでんだろうなぁ。知りてえなぁ」
またピクピクっと耳が動いた。
これはもう一押しってところだな。
「マジで聞きたかったなぁ。気になって気になって眠れなくなりそうだなぁ」
「・・・・・・そんなに聞きたいにゃ?」
「そりゃもう。頼むから聞かせてくれよニャン吉」
「そ、そこまで言われたらしょうがないにゃぁ。しょうがないから話してあげるにゃ!」
なんだかんだ言っても話したくてウズウズしてたんだろう。
ニャン吉は早速嬉しそうに話し出した。
「ボクが住んでるのは広くて美味しい食べ物がいっぱいある綺麗な森で、昔の猫又が作った村に住んでるにゃ!」
「猫又の村か」
ニャン吉みたいのが沢山いるのを想像すると・・・。
うん。さわがし、いや、賑やかそうだな。
「家族もお友達もみんにゃ優しくて毎日すっごく楽しい村にゃ! リザドたちも今度来るといいにゃ! あ、でもみんにゃ気分屋だから、フラ~っとどっか行ったりしてて、みんにゃが揃うことはあんまりにゃいけどにゃ」
ニャン吉もそんな感じで森の中でフラフラしてたところを、猫又を召喚奴隷にしようとしてたミシェリアに見つかって・・・ってな感じだ。
「そう言えば、猫又はオスよりもメスの方が強いという噂を聞いたが、事実なのか?」
「それはオレも聞いたことがあるな」
「強いとか弱いとかじゃにゃくて、オスはあんまり怒ったりしない、くーるなのにゃ。でもボクみたいなメスはすぐ怒っちゃったりするのにゃ」
「ボクみたいな? ああ、そういやニャン吉はメスだったか」
「何処からど~みてもそうにゃ! このおっぱいが見えないにゃ!? どうにゃ!!」
猫又の乳を見せられて「どうだ!」と言われても「そうか!」としか言えん。
あいにく他種族のメスに欲情したりしないからな。
「つまり実際に強い弱いじゃなくて、クールなオスは弱くみえて、すぐ感情を出すメスは強くみえるというわけか」
「でもでも、くーるなメスもいるし、怒りんぼのオスもいるけどにゃ」
「結局どっちなんだよ」
「どっちも強いのにゃ!」
「そんな強い猫又のニャン吉も、マタタビの罠には簡単に引っかかったな」
「・・・あれはしょうがなかったにゃ。ミシェリアがズルイのにゃ・・・」
さっきニャン吉が森でフラフラしてたところをと言ったが、あれには続きがあって、1匹でフラフラしてたニャン吉を見つけたミシェリアは、事前に用意してたマタタビを使ってニャン吉をフラフラにさせ、そこをオレらに襲わせた。
で、さしたる抵抗も出来ずにニャン吉は召喚契約させられたんだが・・・確かに汚いやり方だったが、今思えば下手に抵抗されて怪我を負わせるより、ずっと良かったんじゃねえかと思ってる。
・・・ま、ミシェリアはただ単純に、効率よく事を終えたいだけだったろうがな。
「この世界にマタタビほど夢中になれるものはないにゃ! 断言するにゃ!」
「ははは。しかしまあ、こうなるとレオンの話も聞きたいところだが・・・」
こちらの話しは聞いてるようだが、レオンは相変わらずミシェリアの枕だ。
その状態で動いたりオレらと話したりするとなると、暴君が黙っちゃいないだろうな。
「・・・どうやら休憩時間は終わりのようだ。レオン。ミシェリアを起こせ」
感覚が鋭いフォーテルとニャン吉はいち早く気付いたらしい。
オレもすぐに愛用の槍を持って立ち上がると、森の奥から、何か大きなものが大きな物音を立てながら近付いて来た。
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