アンニュイな召喚奴隷リザードマンのレゾンデートル

ねこうさぎ

文字の大きさ
8 / 38

アンニュイなオレの仲間たち 2

しおりを挟む

 モンスター同士も弱肉強食の世界だから、日々生きるか死ぬかの戦いはしてる。
 だがそれは生きる為に必要なことだからだ。
 それ以外は、基本的に縄張りさえ守れば争うようなことはしない。
 だが人種は違う。 
 奴らは自分達のエゴや娯楽でオレたちを簡単に殺そうとする。
 だからオレたちは人種が現われると戦う。
 自分と仲間を守る為に。

「だが珍しいことではないにしても、そんな事情があれば、人種に召喚奴隷にされるなんて屈辱だろう?」 
「そんな事情がなくても、喜んで召喚奴隷になる奴なんていねえだろ」
「それもそうだったな。俺もミシェリアの為と思って戦ったことは今まで1度もない。そしてこれからもないからな」

 フォーテルの言う通り、召喚奴隷自身が召喚術者の為に戦うなんてことは滅多にない。
 なぜなら召喚奴隷のほとんどが、召喚契約で無理やり従わされてるからだ。
 ただ稀に、レオンみたいに召喚奴隷自身が召喚術者に忠誠を誓ってたり、自分の意思で守ろうとするような奴もいるようだが、俺には一切理解出来ん。

「それじゃ次はボクの番にゃ!」
「別にニャン吉の話しはしなくていいぞ?」
「にゃんでにゃ~っ!? ボクのも聞いてにゃ~っ!!」

 冗談で言ったつもりだったんだが、ニャン吉は自分の住処のことも聞けと、地団駄を踏んでガキのように体中で怒りを表現してる。

「冗談だって。だからそう怒るな。で、ニャン吉の住処はどんななんだ?」
「も~いいにゃ!! ぜ~ったいに話してあげないにゃ!!」
「悪かったって。ちょっとした冗談だろ? 機嫌直してくれよ?」
「イヤにゃ!!」

 ニャン吉は口を尖らせ、そっぽ向いて腕を組んでる。
 どうやらすっかりヘソを曲げさせてしまったらしい。 

「・・・どうするよフォーテル」
「リザドの撒いた種だろう。自分で刈り取れ」
「つめてぇなぁ・・・」

 まあ確かにオレのせいではあるんだが・・・。
 さて、どうすっかな。

「・・・あ~、ニャン吉の話しが聞きてえなぁ」

 オレは、さも残念そうに呟いてみる。
 すると、ニャン吉の耳がピクッと動いたのをオレは見逃さなかった。

「ニャン吉はどんなところに住んでんだろうなぁ。知りてえなぁ」

 またピクピクっと耳が動いた。
 これはもう一押しってところだな。

「マジで聞きたかったなぁ。気になって気になって眠れなくなりそうだなぁ」
「・・・・・・そんなに聞きたいにゃ?」
「そりゃもう。頼むから聞かせてくれよニャン吉」 
「そ、そこまで言われたらしょうがないにゃぁ。しょうがないから話してあげるにゃ!」

 なんだかんだ言っても話したくてウズウズしてたんだろう。
 ニャン吉は早速嬉しそうに話し出した。

「ボクが住んでるのは広くて美味しい食べ物がいっぱいある綺麗な森で、昔の猫又が作った村に住んでるにゃ!」
「猫又の村か」

 ニャン吉みたいのが沢山いるのを想像すると・・・。
 うん。さわがし、いや、賑やかそうだな。

「家族もお友達もみんにゃ優しくて毎日すっごく楽しい村にゃ! リザドたちも今度来るといいにゃ! あ、でもみんにゃ気分屋だから、フラ~っとどっか行ったりしてて、みんにゃが揃うことはあんまりにゃいけどにゃ」

 ニャン吉もそんな感じで森の中でフラフラしてたところを、猫又を召喚奴隷にしようとしてたミシェリアに見つかって・・・ってな感じだ。

「そう言えば、猫又はオスよりもメスの方が強いという噂を聞いたが、事実なのか?」
「それはオレも聞いたことがあるな」
「強いとか弱いとかじゃにゃくて、オスはあんまり怒ったりしない、くーるなのにゃ。でもボクみたいなメスはすぐ怒っちゃったりするのにゃ」
「ボクみたいな? ああ、そういやニャン吉はメスだったか」
「何処からど~みてもそうにゃ! このおっぱいが見えないにゃ!? どうにゃ!!」

 猫又の乳を見せられて「どうだ!」と言われても「そうか!」としか言えん。
 あいにく他種族のメスに欲情したりしないからな。 

「つまり実際に強い弱いじゃなくて、クールなオスは弱くみえて、すぐ感情を出すメスは強くみえるというわけか」
「でもでも、くーるなメスもいるし、怒りんぼのオスもいるけどにゃ」
「結局どっちなんだよ」
「どっちも強いのにゃ!」
「そんな強い猫又のニャン吉も、マタタビの罠には簡単に引っかかったな」
「・・・あれはしょうがなかったにゃ。ミシェリアがズルイのにゃ・・・」

 さっきニャン吉が森でフラフラしてたところをと言ったが、あれには続きがあって、1匹でフラフラしてたニャン吉を見つけたミシェリアは、事前に用意してたマタタビを使ってニャン吉をフラフラにさせ、そこをオレらに襲わせた。
 で、さしたる抵抗も出来ずにニャン吉は召喚契約させられたんだが・・・確かに汚いやり方だったが、今思えば下手に抵抗されて怪我を負わせるより、ずっと良かったんじゃねえかと思ってる。
 ・・・ま、ミシェリアはただ単純に、効率よく事を終えたいだけだったろうがな。

「この世界にマタタビほど夢中になれるものはないにゃ! 断言するにゃ!」
「ははは。しかしまあ、こうなるとレオンの話も聞きたいところだが・・・」

 こちらの話しは聞いてるようだが、レオンは相変わらずミシェリアの枕だ。
 その状態で動いたりオレらと話したりするとなると、暴君が黙っちゃいないだろうな。

「・・・どうやら休憩時間は終わりのようだ。レオン。ミシェリアを起こせ」

 感覚が鋭いフォーテルとニャン吉はいち早く気付いたらしい。
 オレもすぐに愛用の槍を持って立ち上がると、森の奥から、何か大きなものが大きな物音を立てながら近付いて来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...