アンニュイな召喚奴隷リザードマンのレゾンデートル

ねこうさぎ

文字の大きさ
32 / 38

アンニュイなオレの葛藤 4

しおりを挟む

 リザドがゴブリンを助けてる頃。
 悠々と走る馬車に、男女の人影があった。

「くそっ。なんで召喚出来ねえんだよ・・・」

 両腕と両足を縛られた状態で馬車に乗せられたミシェリアだったが、そんな状態でも何十回と召喚を試みていたのだが、何の反応もなく焦りと怒りを呟いていた。

「あなたも諦めの悪い人ですね。なんどやっても無駄ですよ。そもそもミシェルお嬢さんが強制契約執行で自分の召喚奴隷を殺したんじゃないですか。それを今になって自分を助けさせようとか、都合が良すぎると思いませんか?」
「うるせえクソ野郎!!」
「しかしかわいそうな召喚奴隷たちでしたね。ミシェルお嬢さんの復讐の道具として散々こき使われ、最後は強制契約執行で無理やり特攻させられて死んでしまうなんて」
「黙れ!! 黙れ黙れ!!」 
「おや、こう言われるとさすがに良心が痛みましたか?」
「それ以上言うとその舌を切り刻むぞ!!」
「ははは。満足に動けないその状態で何が出来るんですか? とはいえ、仮にミシェルお嬢さんの召喚奴隷が生きていたとしても、どのみち無駄ですけどね。ミシェルお嬢さんの召喚契約は僕が破棄しておきましたから」
「はぁ!? ど、どういうことだ!? なんでてめえにそんなことが出来んだよ!?」
「あまり知られていない、というか、ほとんど知る人はいないでしょうが、召喚術者が意識を失ってる間に、その召喚奴隷を奪う術があるんですよ。それを応用して、ミシェルお嬢さんの契約を破棄させて頂いたんです」
「・・・くそっ。召喚契約が切れたような気がしてたが、そういうことかよ。どうりであいつらが生きてんのか死んでんのかもわからなかったはずだ。まさかそんなことが出来るなんて・・・」
「まあ召喚契約を破棄せずとも、あの時点で既に数匹は死んでいて、他の召喚奴隷も瀕死状態。今頃はもうみんな死んでるでしょうけどね」
「くっ・・・。相手のものを奪うことしか出来ねえてめえにはお似合いの術だな!」

 男はぐいっとミシェリアの髪の毛を引っ張ると、自分に引き寄せた。

「痛え!! なにすん――」
「・・・今度の戦いが1段落ついたら、あなたが一体どういう立場で、誰の物なのか、思い知らせる必要がありそうですね」
「ペッ!!」

 ミシェリアは男の顔に唾を吐きかけた。

「さっさと殺せ!! てめえに生かされるくらいなら死んだ方がマシだ!!」
「・・・やれやれ。本当に下品になってしまいましたね。しかしそんなミシェルお嬢さんが僕に従順になることを想像すると、それだけで興奮してきますよ」
「変態野郎が!!」
「今すぐにでもそうしたいところですが、あいにくお仕事がありましてね。この先にある拠点を潰さないといけないんですよ。ミシェルお嬢さんがいた拠点のようにね」

 男はミシェリアから視線を外し、進行方向に目を向けた。

「前の拠点には良い素材がなかったから、今度の場所には良い素材があればいいなぁ・・・」
「・・・てめえ、まさかその為だけに戦争に加担してやがんのか?」
「ははは。趣味と実益を兼ねて、一石二鳥というやつですよ」
「・・・お父様が言ってた「合成モンスターに心を奪われる」って、つまりてめえみたくなるってことだったんだな・・・」
「いずれミシェルお嬢さんにも分かりますよ。合成モンスターを作り出すことは、こんなにも面白いことなんだってね」
「・・・・・・・・・」

 ・・・数時間後・・・

「道は間違ってねえだろうけど、一体いつ追いつけるのやら」

 目印となるモンスターの死体を横目に、人種や他のモンスターの縄張りに入らないように注意しながら北に向かうオレだったが、時間が経つにつれて不安が大きくなってきた。
 仲間の仇を討つ為に追いかけてるが、合成モンスター1体倒すのにも、仲間と連携してやっとの思いで倒したのに、オレだけで一体何が出来るのか。
 しかも右腕がなくなってて、さして強くもねえニンゲン相手に手間取ったくらいだ。
 こんな状態で追いついたところで、結局何も出来ねえんじゃないかと思い始めてた。

「・・・・・・・・・」

 意識せず足も止まり、空を見上げる。
 もうすっかり日も落ちたが、辺りがどうなってるのかわかるくらい、空には満天の明るい星が輝いてた。

「・・・そういや、前にこんな星空の下で、あいつらとさして意味もないことを無駄に話したっけな」

 いつもなら、戦いが終わるとすぐにオレらを帰還させるミシェリアだったが、その時はよほど疲れてたのか、戦いが終わったってのに、オレらを帰還させる前に寝ちまったことがある。
 寝首を掻いてやろうかとも思ったが、オレらも疲れてたし、なによりレオンがミシェリアにベッタリだったからそれは出来なかった。
 そんなわけで、ミシェリアが起きるまで、オレらはなんてことない雑談に興じることになった。
 お互いの身の上話や、普段はどうしてるのか、鬱憤が溜まってるミシェリアへの不満とか。
 なんてことない話だったが、久しぶりに楽しいと感じる時間だった。
 不幸中の幸いと言うか、もしミシェリアの召喚奴隷にになってなければ、こんな風に楽しいと思うこともなかっただろう。

「・・・良い奴らだったよな・・・」

 フォーテルは賢くていつも冷静。
 けど冷たいわけじゃなく、オレの下らない冗談にも付き合ってくれる奴だった。
 レオンは一番の古株で、いつも落ち着いてて、頭に血が上りそうな時なんかはいつも抑えてくれた。いつもオレらを優しくまとめるくれる奴だった。
 ニャン吉は、いつも明るい、オレらのムードメーカー。
 荒んだ心を、どんだけこいつの明るさに助けられたことか。
 ミノは仲間になってからの時間が一番短く、最初こそ取っ付きにくい奴だったが、それでもちゃんと話せば意外に気のいい奴だった。
 見た目通り豪快っつか、ちょっとアホっぽいところもあったけど、そこもまたミノの良いところだった。
 ・・・みんな良い奴だった。
 色んな奴の召喚奴隷になって、色んな連中と仲間になってきたが、これだけ距離が近くに感じたのは初めてだった。

 ・・・だが、全員死んだ。殺された。

「・・・そうだ。仮に何も出来なかったとしても、ここで諦めるわけにゃいかねえんだ。オレがやらずに一体誰がやるってんだ」

 奴だけじゃねえ、ミシェリアもぶん殴ってやらなきゃならねえんだ。
 そうだ。
 オレが考えるべきなのは、出来るか出来ねえかの不安じゃねえ。
 どうやったら奴と、もし生きてたらミシェリアにも思い知らせてやれるかだ。

「オレとしたことが、つい弱気になっちまってたな」

 オレは自分の顔を何発か殴り、気合を入れ直す。

「おし!! 行くかっ!!」

 迷いや不安を吹き飛ばすように、オレは大股で前へと歩き出す。
 そして数日後。
 オレはついに奴に追いついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...