ロマの王

いみじき

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 子供の頃から「可愛くないクソガキ」で、潔いのだけが自慢の種。

 煽られても喧嘩はやらないが、買うとなったら勝つまでやめなかった。大人が仲裁に入ろうが、水ぶっかけられようが、翌日になろうが、謹慎受けようが、相手が泣いてごめんなさい二度と近づきませんと確約するまでやった。

 結果、孤立した。そりゃそうだ。そんな危ないガキ。

 そういうわけで友達の出来ないコミュ障がすくすく育ってこのたび成人になり、果たしてこんなのが社会でやってけんのかとおかんを不安がらせたその日、役人が家に押し寄せてきた。

 星の子バイオームによって資源的に豊かになった昨今、星に属していれば衣食住を確約されるが、その分バースコントロールには厳しくて、懐妊許可を受けずに生まれた子供は成人すると同時に移民船に放り込まれる。行き先は乾いた開拓惑星だ。

 おふくろはちょっと頭の緩い人だった。俺が役人に捕まった時は泣き叫んでたが、戸籍ないのに俺を連れてあちこちの施設利用してたんだから、そりゃ分かる。なんでこっそり産んでバレないと思ったのか、そっちのほうが不思議だ。今は何処にだってセンサーがついてて脳に入ったマイクロチップで個人識別されるんだから。

 移民船の中は成人したばっかりの若いやつが男女問わず詰め込まれて、さながらテラ時代の奴隷船の様相だった。

 殆どヤマト人だけど、別の星から集められてきたのか、少しずつ顔が違う。ちょっと濃い顔してるのが薩摩で、線の細い感じが伊勢。志摩は可愛い感じの狐顔が特徴なんだけど、流石にいない。あそこは当主の息子がしっかりしてるから……

 そう、ここにいるのはちょっとブラックな星の出身者。俺たちは要するに政府に売られたんだ。

 看守みたいな制服の男どもが俺たちの間を歩いて回り、データ照合しながら何かを確認してる。

「お前と、そっちのお前。あとお前と……」

 よく分からんが呼ばれた。相手は銃も持ってるし、こんな隔絶された空間じゃ何をされるか分かったもんじゃない。

 俺と呼ばれた連中は男女別で医務室のような部屋に連行された。

「脱げ」

 命じられて隣の奴がびくっと竦み上がる。それを横目に見てから、看守ではないがを見上げた。

「なんでだ」

「貴様らは感染症の疑いがある。検査をするんだ、脱げ」

 検査で全裸になるなんて聞いたこともない。

 ただもう、隣の奴が可哀想なほど青ざめて震えるから、黙って脱ぎ始める。

「俺からやれ。おかしなことをしたら他の奴が通報する。星に戸籍はなくてもヤマト籍はあるんだ」

 人として生まれれば人権はある。奴隷はどの星系も認めていない、というより宇宙政府が認めていない。

 堂々と脱いだ俺のつま先からてっぺんまで、看守の目が舐めるように動く。

 意地でなんでもないふりしてるけどな、恥ずかしいに決まってる。部屋で一人だけ裸になってじろじろ検分されてんだぞ。滅茶苦茶恥ずかしい。股間を手で隠して「えっち!」って蹲りたいくらいには恥ずかしい。

「そのベッドでうつ伏せになれ」

 うつ伏せなら……いきなり犯されることはないはず。

 内心どぎまぎしながら指示通りにした。

 尻に冷たいぺたっとした感触。

 振り返ると看守がスタンプみたいな器具を持っていた。

「……終わりか」

「そうだ。次!」

 拍子抜けした。ただ、これ、脱ぐ必要あったか? 検査は本当で、脱がせるのは看守の趣味ってのはありそうだ。

 はーっと溜め息しながら、次の奴とすれ違う。

「あれ、アダルトショップで見たことある」

 そいつがぼそっと俺だけに聞こえるよう呟いた。

 俺にはスタンプが何のグッズかは知らない。

 でも、ただの潤滑剤をこんな場所で塗る訳はないだろうし、次の奴がわざわざ俺に報告する筈もない。

 反射的に、次のやつ押しのけて看守にタックルかました。

「貴様、何をっ」

「ぼさっとするな、隣の部屋の女助けて来い!」

 よく見れば、連れて来られたのは見た目のいい奴ばかり。確か女のほうも綺麗どころだった。

 逃げたのか、助けに行ったのか、集められた奴らは我先にと部屋から出てった。

「くそっ、余計なことを」

 組み付かれた看守が忌々しげにスタンプの底を押した。

「んいっ……!?」

 一瞬、目の前がチカッと光る。何の前触れもなく腰が跳ねて……まるで腹の奥を柔らかい針で突かれたような変な感覚がしたんだ。

 それからじわじわと、尻の中全体が気持ちよくなってきた。たまにチクチクした痒いような痛みが走って、そのたびに力が抜ける。

 抵抗しようにも出来ない俺を、看守が逆に組み伏せて巨体でのりかかり形勢逆転。看守の軍帽が転げ落ちてジャガイモみたいなスキンヘッドが露わになる。

「毎回、お前のような跳ねっ返りが一人はいるんだよ。お前みたいのが最後には恥も外聞もなくチンポが欲しくて縋り付いてくるのが俺の楽しみだ。

 自分が何されたか分かってるか? 大量のナノマシンをナカに送られたんだよ。直腸に潜入したナノマシンは前立腺や精嚢に絶妙な電気刺激を与える。快楽の強弱も調節できるぞ、それ」

「あ゛ァッ!!」

 じんわりした心地よさが突然、牙を剥いた。アナルセックスどころか童貞の俺にはあまりに強い刺激で、腹にどろっとしたものが落ちる。きついほど反り立った前から射精したらしい。イってる間も緩い刺激を与え続けられるので、ガクガクしながら射精が止まらない。

「ひぅ……ひぅ…?」

「そら、もう覚えちまった。このままチンポ挿れられると死ぬほど悦がって味を占める。そうしたらもう忘れられねえぞ」

 腹に散った精液をぬたぬた指に絡めながら厭らしい顔で看守は笑う。その指をどうされるか、恐怖しかない。ひきつるような息を吸い、大きく割り開かれる自分の足を見つめるしか無かった。

 騒ぎが起きたのはその時だ。

 遠くで爆発音やニードルガン特有の発射音が聞こえる。

 俺も看守も「海賊か?」と、その時だけは考えが一致した。

 ただ、俺は好機だと思った。海賊に捕まって売り飛ばされるとしても、逃げるチャンスがないよりマシだ。

 かなりしょっぱいが、俺には機械感応能力がある。単純な機構なら部分的にでも操作できるんだ。複雑なAIは手に負えないものの、逃げるだけなら十分。

 よってこのおっさんはぶっ倒す。

 過剰な快楽から解放され、要は出してちょっとスッキリした俺は、おっさんの股間を蹴り上げて脱出を試みた。

「クソガキ!!」

 スタンプ握った手で殴られたが、構わずジャガイモ顔に爪を立てて鷲掴む。相手は急所の痛みで力が緩んでる。もみ合って殴り合って蹴って蹴られて、

「ぶっ殺してやる!」

 至近距離でニードルガンを撃たれて肩に刺さった。

 ただもう、頭に血が昇ってたのか、痛みなんか全然感じなくて、撃たれながらおっさんに体当たりした。両手が使えなくなったら噛み付いた。

「もうやめてくれ、なんだこいつは、なんなんだ!!」

 銃という圧倒的優位性を持ってるはずのおっさんが戦意喪失して泣きを入れる程だった。ざまあみろ、面目躍如だ。

「こっちです!」

 誰かの声、さっき聞いた声だ。俺にあのスタンプはアダルトグッズだって警告した奴。

 海賊を連れてくるとは思えないから、助けなんだろうか。

 おっさんの首に噛み付いて意地でも離れない俺に、何かがふわっと掛けられた。

「もう大丈夫である。落ち着け」

 ふっ―――と。

 その落ち着いた声音は、狂って濁りきった世界を一瞬で鎮めた。何でか噛む顎どころか、全身から力が抜けて、ずるっと崩れる。それを誰かが抱きとめてくれた。

 ぼんやりする視界一杯に広がったのは、人形のような美しい顔だった。ヤマト系列で最上級に該当するだろう。

 長くつややかな黒い睫毛に、すっと通った目鼻立ち。薄く形のよい唇。切りそろえた髪が品よく揺れている。男前でありながら、リンドウの花のように可憐な人。

 ただし、俺を支える腕はかなり力強かった。印象的には華奢なほどだが、そう錯覚するだけで実際は結構なマッチョだと思われる。

 全裸の俺を包んだのは上質な羽織だった。今時分、和装は高価だ。それごと俺を抱き上げて、リンドウの人は部屋を出る。

 部屋の外には戦闘用可逆式特殊繊維服を着た一団がいて、みんなメットを被ってたが、一人だけひょろっと背の長い男が銀髪を晒してた。顔立ちはヤマト系だが、ハーフなんだろう。ニブル星系特有の色彩をしていた。

 そいつがこっちを見て「蛍」と言う。たぶん、俺を抱えてる人の名前だ。

「鷹鶴、被害者を確保した。単純なアダルトグッズの使用が認められる。燃料切れでいずれ排出されるタイプの害のない一般向け商品だ」

「そうか。そんじゃ怪我も酷いみたいだし、医師団に任せて……」

「いや、連れ帰る」

「はあ?」

「丸腰で、銃を持った相手に凄まじい戦いぶりであった。良い人材である」

「うっそだろ、お前、社長は俺なんだけど!」

 俺は何処に連れてかれるんだろう。

 殴られた痛みや、尻の中のむずがゆさが今さら一気に戻ってくる。ぐったりして質問する気力も起きなかった。



 目を覚ますと医療ポッドの中にいた。

 横置きタイプで養液には浸かってない。蓋があるんで身動きは出来ないが、痛みは大分ましになっていた。

 ただ、未だに尻がじんじんする……前立腺を刺激され続けているせいで、前がとても痛い。術着がテント張っててみっともなかった。

 内側にあるボタンを押すと、透過性の蓋がエアを発しながら押し上がる。だるくて重い体を持ち上げるようにして、ポッドの端に寄りかかる。

「気がついたか?」

 虚空に3Dパネルを幾つか並べて作業をしていたらしい人物、蛍と呼ばれたあの人と目が合った。それは優美な微笑を浮かべて。思わず赤面する。なんだか嘘みたいな、一枚の名画が動いているような、雰囲気のある人だ。

 会った時は戦闘スーツだったが、今は羽織袴と粋な格好をしている。

「あの……何が起こったか、全然わからない」

「であろうよ。宇宙法で取り締まられているが、ああいう手合は減らん。星に戸籍がないと言っても人権はあるのだから、無理矢理に開拓惑星や工場星に送るのは誘拐である。これが国家絡みで行っているのだから呆れたことよ」

「あんたたちは何者だ? どうして助けてくれたんだ」

「それは色々と事情があるが……」

 蛍さんは唇を窄めるようにして笑う。そんな表情が胸を締め付けるほど色っぽくて綺麗だ。ちゃんと男の人なのにな。

「我々が何者かというと、ベンチャー企業である」

「べ、べんちゃー?」

「出自はお前と同じ、星に戸籍のない宇宙のロマよ」

「あんたが?」

 優雅な仕草ひとつとっても知性を教養を感じさせるこの男が、一般庶民以下の扱いを受けるロマだとは到底思えなかった。どこかで大事に育てられた裕福なヤマト王族にしか見えない。

 しかもベンチャーってなんだよ。確かにロマは何処かの惑星に滞在すると、その分だけ税金を要求されるから宇宙船に乗ってキャラバンや仮想次元経由で仕事をすることが多い。

 ロマのベンチャーは珍しくないが、この男がロマで、しかもベンチャー企業の社員で、その上そのロマのベンチャーが移民船に連れ去られたロマを助ける理由が分からない。

 大体なんで軽く宇宙船を一隻制圧出来てしまうほど強いんだ。装備だって良いもの使ってた。男の子なら誰だってカタログ眺めて憧れる、最新式のファイバースーツだったからな! 軍で実際に使われてるってところが男心をくすぐるんだ。

「俺は菊蛍。名はなんという?」

「黒音……」

「クロート。クロに、オトか。クロネ。そうか、ふふ、確かに黒猫のようである」

 クロネでもないし、クロネコでもない。クロオトだ。なんで笑われにゃならんのだ。

 熱く重たい息を、ふぅっと吐く。

 感じすぎて疲れた。衣擦れですら過敏反応する。気を失ってる間もずっと「こう」だったんだろう。

 明るすぎるほどの室内で、濃い影が落ちた。気がついたら蛍が側まで来てたんだ。

 すっと翻すように、蝋のような白い、節のない手指が差し出された。

「おいで。つらかろ」

 腫れぼったくなった瞼の下で、やたらに綺麗な手と、顔とを見比べた。

 怖い気持ちはあったけど、この人ならまあいいやって、俺じゃなくても思うんじゃないか。

 手を犬みたいに乗せたら、腰をぐっ! と抱かれて、ぐわ! と抱き上げられた。予想外の力強さ。片腕で成人男抱いて一切のぐらつきなく、足の筋肉だけで立ち上がるこの体幹。こいつ天女の顔したゴリラじゃねえのか。

 診察用の硬いベッドに寝かされて、術着を開かれた。この人には一度真っ裸を見られてるが、前からじゃなかったし、あの時は正気でもなかった。空調のきいた外気に触れる体が震えるのは屈辱とも羞恥とも言えない変な感情のせいだ。

「綺麗な肌だ」

 胸元を指先でつつとなぞりながら、蛍が覆いかぶさってくる。

「寿命が伸びて百数十まで外見が変わらなくなっても、やはり経年はある。初葉のように新しい皮膚だ。それに角膜も宝石のようである」

「か……かくまく?」

「目だ」

 いや、名称の意味を聞いたわけじゃなくてな? なんで角膜褒められたのかって話だ。

「若者の目は生気に溢れている。俺はもう、濁ってしまったが」

 何でか寂しげに目を伏せる、その様が夢のようで。

「あ」

 見とれてる間に首筋を吸われた。内ももに滑り込んだ手が足の付根を撫でる。

 これから男に犯されるのか、という人生初で考えたことも願望を抱いたこともない状況への恐怖と、どうしようもない腹の中の疼きが「何でもいいから早くぶちこめ!」と訴えて頭がぐちゃぐちゃだった。

 この時点で既にだらしなく先走りが漏れてる性器に指が絡んで優しく扱かれた。なんでこんな動作まで変に優雅なんだ。思わず両手で目を覆った。

「は、は……ん、くぅぅ」

 人に触られるのって凄い恥ずかしいし、気持ちいい。腹の中からの刺激もあるせいか、自分でやるのより快感が強すぎて全身の筋肉攣りそうなほど力が入った。奥歯折れそう。

 きもちぃ、きもちぃ……って思考がそればっか。俺の悦いとこ、欲しいとこ知り尽くしてるみたいに先端を指で潰して回すように撫でたりされると、もう、全身がゾクゾクして眼の前、白……

「んんん!」

 ものすごく早く出た。噛み締めてた口からぶはあっと息が漏れる。

「声を出してもよい。防音になっている」

 チンコいじられてあんあん言うと、普通に誰かとセックスする時も喚きそうで嫌なんだよ。嫌じゃないか? 女みたいにあんあん腰振る男。彼女ドン引きだわ。彼女いたことないけども。

「ここもつらかろ」

 濡れた指が袋を伝い、その奥にある尻の割れ目にそっと沈んだ。思わず、生唾を呑む。指先に触れられた括約筋が、それを欲しがってきゅうきゅう収縮してるのが自分で分かるんだ。

「ここは繊細に出来ている。準備なしに触れられん。腰をこちらに向けてくれ」

「うん……」

 力の入らない腕でなんとか転がり、腰を立たせようとするも、がくっと落ちる。それを蛍が支えてくれた。

「少し我慢をしろ」

「ひっ?」

 突き出した尻に細い管っぽいものが差し込まれた。反射的にぎゅうと締め付けるが、意味はなし。

 パシュ、と軽快な音を立てて何か液体が逆流してくる。

「うあ……ぁ」

「ただの潤滑剤である。しっかりと濡らさねば傷になるのだ」

 パッケージポンプ式の潤滑剤とか聞いたことねえ!

 溢れて入り口までぬるんぬるんになったアナルに指が一本、つうと割り入れられる。痛苦しいのに、せりあがるような切ない心地よさ。あの変態にスタンプ押されてからずっと欲しかった。もっと奥まで欲しい……! 悦いところ滅茶苦茶に引っ掻いてほしい!

「弛緩作用もあるが……痛くはないか」

 問われてベッドに頭擦りつけながら首を振る。いいから早くなんとかしてくれ。頼むから!

「あうぅ」

 括約筋を指二本でぐにぐに弄り回され、足りない刺激に腰がうねる。ああなんだこれ、俺じゃないみたいだ。

 指が引き抜かれる感覚でまたぞくぞくした。焦れてまた感覚が鋭くなる。神経が下半身に集中してて痛むほどだ。

 拡げられた尻の谷間に太くて長い肉棒が押し付けられる。その熱さに溜息ついた。擦り付けられて入り口の肉が少し捲れるのが堪らない。俺は変態だったのか?

「ん、ん……」

 先端が滑りながら少しずつ肉をこじ開けていく。一番ふといカリがぬぽんと首まで入ってきた。

「揺らすな揺らすな。挿入れにくい」

 我慢が利かずに腰を動かしてたらしい。窘められて真っ赤になった。

「んっ…! はぁ、はっぅ、うう、うぅ……」

 く、く、と腰が押し進められて犯されていく。犯されてんだなあ、俺、今。変にしみじみする。

 ナノマシンがぴりっぴり送ってくる刺激と、ぶっとい肉棒にゆるく揺すられる感覚。頭おかしくなりそうなくらい悦い。尻が気持ちいいなんて変だ。変だろ。

 それと、頭の片隅で「ピストン運動しないんだな」と妙な感想抱いてた。男女のアダルトムービーでは、出し入れ激しいだろ。セックスってああいうもんだと思ってた。でも蛍は奥で揺すって、動いて、抜かない。その動作が絶妙で、奥がビリビリするほど気持ちよくて、辛い。

 俺は身も蓋もなく喘ぎながら「尻がぁ」とか「もっと」とか「奥がきもちぃ」とか叫んでた。変になっちゃう、とかアダルト女優みたいなことも言った。

「!? あ、白……なんか、ク、クる……っ、いや」

 電撃のような激しい快感が近づいてきた。今でさえ耐え難いのに、これ以上ってどうなるんだよ。本当に頭イカレるんじゃないか。目ぇ見開いてシーツ掴んで、逃げようとしてるのに腰は強請るように動いて。

「ヒッ? ん…ひィあッ…ああ、あ…ッ!?」

 疑問符いっぱい浮かべながら尻でイった。尻の絶頂って凄い変な感覚。腹の奥が気持ちいいってのがまず不可解だ。女の子なら普通なのかもしれんが、男だから、前でしかイったことないし。自分でコントロールする射精と全然違う。

 気持ちいいのがずっと続くのも、おもらしじゃない透明な液体がびしゃびしゃ飛び散るのも訳が分からない。

「……っ、……。……」

 涙と涎と鼻水で顔ぐちゃぐちゃにしながら、そのまま力尽きた。
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