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終戦と出会い
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祐名 留以は、死ぬつもりで八階のマンションの屋上から飛び降りたのだが、目を覚ますと見たこともない場所にいた。
あたり一面が緑色で、驚いたことに樹の幹や岩までが、星型の苔に覆われて緑だった。側に流れる小川の底も苔むしていて、エメラルドグリーンに輝いている。
泣きそうになりながら森の中を彷徨ううちに、ジプシーの一団に拾われ、薬師の老人に育てられることになった。
ジプシーたちは親切というほどでもなかったし、他人に無関心だった。けれど、父親のように意味もなく殴ったり、理不尽な命令はしない。
薬師の老爺は留以を可愛がる節もなかったが、薬学の知識を授けてくれた。とくに好きだったのが薬香の勉強で、これは睡眠導入や消化促進などの効能のある薬草を調合して、焚くというものだった。
しかし、やはり薬は薬に違いなく、とても臭い。
留以はハーブや茶葉、乾燥果物を混ぜることで、とても良い匂いの薬香を調合する技術を生み出した。
ジプシーたちは留以をいないもののように扱ったけれど、留以の薬香だけは喜んでくれる。留以にとって、薬香だけが他人とコミュニケーションをとる手段だった。
「ユナ・ルー」
この世界の人々は、留以をユナ・ルーと呼ぶ。
ユウナルイと名乗っても、どうしてもそういうふうに聞こえてしまうようだった。
留以も、いつしかこの世界の発音に慣れてしまい、自分の名前をユナ・ルーだと思うようになった。もう、日本語でユウナルイと名乗ることは、彼自身にも出来ない。
ユナ・ルーは薬香の研究をするために、ジプシーの薬師を訪ねて回っていた。
十四歳になるその時までは。
この国、アチェンラと隣国のラハトは昔から小競り合いが絶えないらしい。
けれども数年前から始まった戦争は、なかなか終わる兆しを見せず、ジプシーの若者は残らず徴兵されてしまった。ユナ・ルーも例外ではない。
ジプシーたちは薬学の知識に長けていて、アニムノイズたちの圧倒的な力を無効化することができる。彼らの使うアニムは微生物であるがゆえに、その活動を抑制することが可能なのだ。
それに、ジプシーは火薬の扱いにも長けているので、その火力はアニムノイズを上回ることもある。
様々な効果の薬弾を放つ単発式の銃を抱えた彼らは、ジプシー長筒部隊と呼ばれていた。
はじめは人について懸命に援護するばかりだったユナ・ルーも、五年もすると戦場に慣れ、十年する頃には、すっかりベテランの兵に成長する。
長筒兵は大量の火薬を、伝統の鮮やかな織物の下に装備しており、アニムノイズの攻撃を受けると高確率で爆発し、近くにいる長筒兵に誘爆する。
そのため、長筒兵は味方と一定の距離を保ち、煙幕を張りながら、一人で戦うのが常だった。一人で戦えるようになって、長筒兵はようやく一人前なのだ。
しかし、一人前の長筒兵となった今でも、ユナ・ルーはどうして自軍が敵と戦っているのかを知らない。
分かっているのは味方を守り、敵を倒せばいいということだけ。
「あいつ、気味が悪いよな」
野営地で銃の手入れをしていたユナ・ルーの耳に、同じ長筒兵の声が聞こえてきた。
「何を話しても、まともな返事はねえ」
「にこりともしねえし、泣きもしねえ」
「聞いたとこによると十年くらい姿が変わってないらしいぜ。年をとらねえみたいに。あの硝子玉みたいな黒い目で見られると、背筋がぞっとする――――」
こんなふうに嫌われるのは、一度死ぬ前からずっとのことなので、ユナ・ルーは何とも思わない。
ただ、この時に陰口を言っていた片割れは、後になって負傷して、部隊においてけぼりを食らった。
ユナ・ルーは遮蔽物の影に彼を引きずってゆき、火薬弾を放りながら槊杖で弾をこめていた。
「おい、お前なにやってんだよ」
アニムノイズに焼かれた脇腹を痛そうに抱えている彼が、信じられないといった顔でユナ・ルーを見上げている。
応戦に忙しいので返答しないでいたが、おい、としつこく声をかけられるので、
「時間を稼いでいる」
簡潔に答えた。
「なんでだよ。味方は全員、退却したじゃないか! お、お前だって……」
「俺のすべきことは、味方を守って敵を倒すことだ」
煙幕の中、かなり接近してきた敵兵の足音を聞き分け、ユナ・ルーはそちらへ発砲する。鋭い銃声が響いた。
「手が離せない。自分で処置してくれ。必要なら、傷を焼け。死ぬよりはいい」
「そんな……ことより…………お前は逃げろ」
「あんたが動けるなら、逃げる」
ユナ・ルーには、なぜこの男が逃げろと言うのか、それさえ理解できなかったし、理解しようとも思わなかった。
そのうち、ひゅー……と伸びる音が聞こえた。
それは空高くで破裂し、三度鳴る。
「………」
ユナ・ルーは煙避けのゴーグルを外して、自らが放った煙幕に覆われた空を仰ぐ。
「停戦だ」
どうやら自軍は敗北したらしい。
ユナ・ルーは素早く男の容態を診た。とても自力で動ける状態ではない。死んだふりをしていても、アニムノイズは生者の息吹を嗅ぎとることができる。
アニムの索敵を回避する、アニム除けの薬草もあるのだけれど、先ほどの戦闘ですべて使いきってしまっていた。
ユナ・ルーは懐から小瓶を取り出し、その中身を口に含んで、男の唇を塞ぐ。
「げほっ……が、は、げっ」
嫌な呻きを漏らし、男は白目をむいて息絶えた。
殺した訳ではない。数時間すれば息を吹き返す。ユナ・ルーは男に応急処置だけ施して、薄くなりつつある煙幕の向こうへ歩みだした。
廃墟と化した市街地は、味方の死体の山の上、敵軍の兵だけで埋めつくされている。彼らは戦う素振りのないユナ・ルーに困惑気味だ。
ユナ・ルーはこの場で一番偉い士官を探していたのだが……
ふと、抜き身の剣を担ぐ背の高い青年を見つけて、吸い寄せられるように彼を目指した。
「なんだ?」
戦場では珍しいような、優男である。
ただし目つきは鋭く、見ようによっては人相が悪いとさえ言えた。
「あなたが、この場の指揮官だろうか」
「だとしたら、何だ? 大人しく投降するのか」
「逃げた仲間を見逃してあげてほしい」
それが叶うなら、捕虜になるのもこの場で首を落とされるのも、構わない。
青年は眉を顰めた。
「どのみち、戦は終わった。追う理由もねえよ。お前もさっさと何処かへ消えな」
ユナ・ルーは子供の頃にしみついた癖で、ぺこりと青年に頭を下げた。
その動作を、どう思われたのか。
青年が鋭く剣を繰り出した。
戦場に慣れたユナ・ルーの体は、無理な体勢からでも即座に反応し、銃口を青年に向ける。
「………」
ユナ・ルーの喉首に切っ先をつきつけた青年は、ばつが悪そうな顔をした。
「悪い。お前が攻撃してくんのかと思った。誤解だ。もう何もしねえから、今度こそ行けよ」
ユナ・ルーのお辞儀が、彼を脅かしてしまったらしい。
確かにこの世界の人間はあんな動作はしない。ユナ・ルーのほうが悪いだろう。
「ゼルバルト! まだここにいるか?」
「いや、撤収する!」
仲間の呼び声に叫び返し、ゼルバルトと呼ばれた青年は踵を返す。
ゼルバルト。どこかで聞いた名前だ。
そういえば味方が、噂していたかもしれない。
最年少剣聖。大陸で五本指に入る剣客、ゼルバルト。
生身で強い人間より、アニムノイズのほうが多い今の世で、剣で名声を得た存在は珍しかった。
ユナ・ルーは敵軍にも置いてゆかれ、たった一人死体の山の上で彼らの去る姿を見送っていた。
戦争は終わった。
もう、どこへ行っても脱走兵だと謗られ、罰を受けることもないだろう。
ユナ・ルーは先ほど負傷した者をしっかり治療してから、味方が逃げた方角とは逆へ歩みだした。
ジプシーはもともと、定住せず世界を放浪する人種。
行くところがないならば、後はどこへなりと彷徨うだけだった。
とはいえ、ユナ・ルーは緑の国アチェンラを出たことがない。
どうやらいつの間にか、少し前まで十五年も戦っていた隣国ラハトへ迷い込んでしまったらしく、ユナ・ルーは今、石畳の街にいる。
一面が灰色の街で、どこか、子供の頃住んでいたトーキョーの雰囲気があるように思えた。
ジプシーは財を持たない。
定住する者を不自由な者と言い、財を求むる者を金の奴隷と呼ぶ。
ゆえに、食べるものを確保するにはどうしたものか、ユナ・ルーは建物と建物の間に出来る影の中、食べ物と交換できそうな薬草を探っていた。
――不意に走ってきた子供が派手に倒れて、ユナ・ルーは顔を上げる。
「捕まえたぞ、このガキ!」
がらの悪い男がみすぼらしい服装の子供を掴みあげ、腕を振り上げた。
ユナ・ルーは反射的に長筒で男の腕を弾き、路地から飛び出て銃を構える。
突如、ジプシーに長筒を向けられた男はその場に硬直した。
「ジプシーの長筒兵がなんでこんなとこに……」
その疑問には答えずユナ・ルーは背後にやった子供を一瞥し、無事を確認した。
「てめー何なんだ。正義の味方きどりか!?」
「せいぎ……?」
馴染みのない単語を不思議に思う。
だが、そういえばこのラハトは、正義の神に守護された国だったような。ラハト軍はことあるごとに、正義の戦いを、と叫んでいた。戦場に正義も悪もなかろうに。
男は舌打ちする。
「違うなら、なんなんだ。てめーには関係ねえだろう!」
確かに事情も飲み込めないし、本当はこの子供のほうが悪いのかもしれない。
それでもユナ・ルーは銃を降ろさなかった。
「……なにしてんだ、お前ら」
膠着状態を破ったのは、第三者の声音だった。
耳に心地よく響くその低い声音は聞いたことのあるもので、
「ゼルバルトの旦那……」
男が言うように、剣聖ゼルバルトだった。
終戦の際に出会って、ひと月ぶりの再会である。
彼は三人を順繰りに眺めると、腰に手を当てた。
「おいガキ。懐のものをこいつに返してやんな」
彼がまず初めに、子供に話しかけるとは思わなかった。
ユナ・ルーから見ると彼は被害者のように見えたので。
小さな子供は震え、おそるおそる足元に膨らんだ袋―――おそらく財布を置いて、一目散に逃げ出した。
「ったく」
ゼルバルトは苦笑し、男の背を叩いた。
「ま、財布も戻ったしこいつのことは許してやんな。そりゃいきなり大の男が子供追いかけ回してたらよ、驚くさ」
彼に諭されると男も納得したらしい。
ユナ・ルーもどうやら悪かったのは子供のほうだと理解して、背後に置かれた財布を拾い、男に差し出す。
男は再度舌打ちして奪うように財布を掴むと、のしのし怒ったような足取りで引き返していった。
ゼルバルトは、これで役目は済んだとばかりに歩き出すので。
ユナ・ルーもその後をついてゆく。
彼が右に曲がれば、右へ。
彼が左に曲がれば、左へ。
そうこうするうちになぜか同じ大通りへ戻ってきて、ユナ・ルーは首を傾げる。
「なに不思議そうにしてやがんだ」
振り返ったゼルバルトは不機嫌そうだった。
「どこまでついてくんのかと思ったら、一向に離れる素振りもねえ。お前、何の用でついてくんだよ」
「?」
「? じゃねえよ! 何か用かよ」
とくに、なにも。
ゼルバルトはその金色の髪をぐしゃぐしゃかき混ぜると、
「とにかく、もうついて来んな。分かったな!?」
「わかった」
彼が去る姿を、その場で見送った。
「なあ」
ゼルバルトと別れて、その背が消えるより先に、見知らぬ者に声をかけられて振り返る。
「あんた、良い匂いがするな。ジプシーの薬香師かい」
へらへらと笑う細身の男に、ユナ・ルーは頷いた。
その男は付近にいた仲間と思しき男たちを手招きする。
「どうよ、これ」
「へえ」
ラハトの男は、身長が高い。
ニホンジンのユナ・ルーはただでさえ体が大きいほうではなく、覆われて周囲が見えなくなるほどだった。
「あのさ。ちょっと良い店があるんだよ。行こうぜ」
腕を引かれて、逆らうこともなくついてゆく。
こうした輩は初めてではない。ラハトについてからは格段に増えた。
アチェンラにも盗賊は多かったけれど、ラハトには盗賊とまではいかない、がらの悪い軽犯罪者が多くいた。
なんの店かも判然とせぬ建物へ連れ込まれそうになり―――
「おいこら」
行ってしまったはずの、ゼルバルトの声が背後からした。
今度はひどく機嫌が悪そうで、地を這うように低い。
ゼルバルトはよほど有名人らしく、彼の顔を見ただけで男たちは怯んだ。
「それ、ツレだから。勝手に連れてかないでくんない」
迫力ある脅しに、男たちはそそくさと退散してゆく。
ユナ・ルーはというと、ゼルバルトに腕を引かれ、路地へ入った。
どんと壁に叩きつけられるように押される。
「何でさっきみたいに抵抗しねえんだよ!」
「さっき……?」
さっきもなにも、何かに抵抗した覚えはない。
「さっきガキの前に立った時みてえにだよ。お前ほどの腕があんなら、チンピラくらいどうにでもなんだろ!?」
「?」
「だから、? じゃねえよ! 何考えてんだてめーは」
「とくになにも……」
「ちったあ頭使えや!!」
どうして彼は怒っているのだろう。
ゼルバルトは苛々しながら、足で石畳を叩く。
「分かった。宿まで送ってってやっから。どこだ」
「宿はとらない」
「あ?」
「大抵は、その辺の物陰で、立ったまま眠る」
「……そんなことしてたら、さっきみたく悪い輩に引きずり込まれるよね?」
笑っているのだが、ゼルバルトのこめかみに青筋が浮かんでいる。
「なんで自衛しようと思わないのかな? そのうち強姦された挙句、殺されたり売られたりするって分からないのかな?」
「?」
「だから、? じゃねえっつってんだろ!!!」
ゼルバルトの唾を飛ばさんばかりの剣幕に、ユナ・ルーは目を瞬くばかり。
「強姦されるのは、別にめずらしくない」
「………なんで黙って強姦されてんの?」
「?」
「ああもう、お前と話すの疲れるわ」
それでもゼルバルトは見限って去るということはしなかった。
「来な。今夜は同じ宿に泊めてやる。今夜死なれるとなんか寝覚めが悪いから」
よく分からないが、先ほどのように「ついて来るな」と言われなかったので、ゼルバルトの後を追ってゆく。
少しずつ暗くなってゆく陽の下で、ゼルバルトの背中を見つめていた。
ついた宿は質素だが綺麗なところで、ユナ・ルーは此方の世界に来て以来、こんな清潔そうな建物に入ること自体初めてだった。
ゼルバルトがフロントで何やら話している間、扉の側を飾る観葉植物を眺める。
「剣聖の旦那。うちは連れ込み宿じゃないんだけど」
「連れ込むか馬鹿野郎。男じゃねえか」
「あんな変に綺麗な男を急に連れてきたら、連れ込みにしか見えないってのよ」
と、フロントから小動物が出てきた。
ネコと兎のあいのこみたいな生き物で、この世界ではぺットとして飼われている。
手を出してみると、よく人馴れしているらしく、愛想よくユナ・ルーの上に飛び乗ってきた。
ふかふかしていて暖かく、とてもかわいい。
「ったく……」
呑気に獣と戯れるユナ・ルーに、ゼルバルトは溜息ついた。
「おう。鍵やる。部屋は同じな、金かかるから。俺はこれから一杯呑みにいくんで」
じゃあな、と手を振って宿を出るゼルバルトを、小動物を下ろして追った。
「っておい。だから、なんでついてくる!」
間近から噛み付くように見下された。
「今度は ? ってのはなしだぞ。ちゃんと理由を言え。まさかとは思うが、秘宝を狙ってきたんじゃねえだろうな」
「ひほう?」
「違うんなら理由を言え」
ユナ・ルーは迫るゼルバルトの顔を見つめながら、考え込んだ。
理由。理由。ついてゆく、理由。
「あなたのことが、好きだから」
「は」
ゼルバルトが一歩後ずさる。
唐突といえば、唐突すぎた。なぜこんな告白をしてしまったのか、自分でもよくわからない。
けれども口にしてみると実感が湧いた。
好き。この男が、好きだ。
ゼルバルトは引きつり笑いながら、「人間として好きって意味だよな?」と重ねて尋ねてくる。
「たぶん、恋愛だと思う」
「いやいやいやいや……俺、駄目だから。ラハトじゃ男もばっちこいな奴多いけど、俺は抱く方も抱かれる方も駄目だから」
「そう」
「お付き合いとか一晩のお付き合いとかも、もちろん駄目だから」
「そう」
「分かってくれるんなら良いけどよ」
胸を撫で下ろして街へ繰り出す彼の後を追っ……
「だから、なんでついてくんだよ!」
こう怒られるのも、本日何度目だったか。
今度は胸ぐらを掴み上げられてしまった。胸ぐらというか、頭から被った織物だが。
ユナ・ルーは吊られた状態で、首を傾げた。
「あなたが好きだか」
「それはもういい!!」
とうとう、ゼルバルトはしゃがみこんで頭を抱え込んでしまう。
夜の道行く人々が、あの有名な剣聖がと不審な目を向けていた。
「………お前なんかヘンな奴っていうか、ちょっとおかしい奴だよな? なんか会話してる気がしねえんだ」
「よく言われる」
「やっぱ言われてんじゃねえか。改善しろよ。確認してえんだけど、お前は俺に求愛したりしねえよな? 抱けとか言わないよな」
「言わない」
「……抱かせろともいわねえよな?」
「言わない」
ユナ・ルーからすれば、ゼルバルトがなにをこんなに確認をするのか、何に懊悩しているのかも、分からない。
お互い困惑していた。
「とにかく、お前は部屋に帰って寝ろ。それとも酒呑みたいのか?」
「いや」
「じゃあ、帰れ」
「わかった」
ゼルバルトが言うなら、そうする。
尤も、ユナ・ルーは誰が言っても、大抵はそのとおりに行動するのだが。
あたり一面が緑色で、驚いたことに樹の幹や岩までが、星型の苔に覆われて緑だった。側に流れる小川の底も苔むしていて、エメラルドグリーンに輝いている。
泣きそうになりながら森の中を彷徨ううちに、ジプシーの一団に拾われ、薬師の老人に育てられることになった。
ジプシーたちは親切というほどでもなかったし、他人に無関心だった。けれど、父親のように意味もなく殴ったり、理不尽な命令はしない。
薬師の老爺は留以を可愛がる節もなかったが、薬学の知識を授けてくれた。とくに好きだったのが薬香の勉強で、これは睡眠導入や消化促進などの効能のある薬草を調合して、焚くというものだった。
しかし、やはり薬は薬に違いなく、とても臭い。
留以はハーブや茶葉、乾燥果物を混ぜることで、とても良い匂いの薬香を調合する技術を生み出した。
ジプシーたちは留以をいないもののように扱ったけれど、留以の薬香だけは喜んでくれる。留以にとって、薬香だけが他人とコミュニケーションをとる手段だった。
「ユナ・ルー」
この世界の人々は、留以をユナ・ルーと呼ぶ。
ユウナルイと名乗っても、どうしてもそういうふうに聞こえてしまうようだった。
留以も、いつしかこの世界の発音に慣れてしまい、自分の名前をユナ・ルーだと思うようになった。もう、日本語でユウナルイと名乗ることは、彼自身にも出来ない。
ユナ・ルーは薬香の研究をするために、ジプシーの薬師を訪ねて回っていた。
十四歳になるその時までは。
この国、アチェンラと隣国のラハトは昔から小競り合いが絶えないらしい。
けれども数年前から始まった戦争は、なかなか終わる兆しを見せず、ジプシーの若者は残らず徴兵されてしまった。ユナ・ルーも例外ではない。
ジプシーたちは薬学の知識に長けていて、アニムノイズたちの圧倒的な力を無効化することができる。彼らの使うアニムは微生物であるがゆえに、その活動を抑制することが可能なのだ。
それに、ジプシーは火薬の扱いにも長けているので、その火力はアニムノイズを上回ることもある。
様々な効果の薬弾を放つ単発式の銃を抱えた彼らは、ジプシー長筒部隊と呼ばれていた。
はじめは人について懸命に援護するばかりだったユナ・ルーも、五年もすると戦場に慣れ、十年する頃には、すっかりベテランの兵に成長する。
長筒兵は大量の火薬を、伝統の鮮やかな織物の下に装備しており、アニムノイズの攻撃を受けると高確率で爆発し、近くにいる長筒兵に誘爆する。
そのため、長筒兵は味方と一定の距離を保ち、煙幕を張りながら、一人で戦うのが常だった。一人で戦えるようになって、長筒兵はようやく一人前なのだ。
しかし、一人前の長筒兵となった今でも、ユナ・ルーはどうして自軍が敵と戦っているのかを知らない。
分かっているのは味方を守り、敵を倒せばいいということだけ。
「あいつ、気味が悪いよな」
野営地で銃の手入れをしていたユナ・ルーの耳に、同じ長筒兵の声が聞こえてきた。
「何を話しても、まともな返事はねえ」
「にこりともしねえし、泣きもしねえ」
「聞いたとこによると十年くらい姿が変わってないらしいぜ。年をとらねえみたいに。あの硝子玉みたいな黒い目で見られると、背筋がぞっとする――――」
こんなふうに嫌われるのは、一度死ぬ前からずっとのことなので、ユナ・ルーは何とも思わない。
ただ、この時に陰口を言っていた片割れは、後になって負傷して、部隊においてけぼりを食らった。
ユナ・ルーは遮蔽物の影に彼を引きずってゆき、火薬弾を放りながら槊杖で弾をこめていた。
「おい、お前なにやってんだよ」
アニムノイズに焼かれた脇腹を痛そうに抱えている彼が、信じられないといった顔でユナ・ルーを見上げている。
応戦に忙しいので返答しないでいたが、おい、としつこく声をかけられるので、
「時間を稼いでいる」
簡潔に答えた。
「なんでだよ。味方は全員、退却したじゃないか! お、お前だって……」
「俺のすべきことは、味方を守って敵を倒すことだ」
煙幕の中、かなり接近してきた敵兵の足音を聞き分け、ユナ・ルーはそちらへ発砲する。鋭い銃声が響いた。
「手が離せない。自分で処置してくれ。必要なら、傷を焼け。死ぬよりはいい」
「そんな……ことより…………お前は逃げろ」
「あんたが動けるなら、逃げる」
ユナ・ルーには、なぜこの男が逃げろと言うのか、それさえ理解できなかったし、理解しようとも思わなかった。
そのうち、ひゅー……と伸びる音が聞こえた。
それは空高くで破裂し、三度鳴る。
「………」
ユナ・ルーは煙避けのゴーグルを外して、自らが放った煙幕に覆われた空を仰ぐ。
「停戦だ」
どうやら自軍は敗北したらしい。
ユナ・ルーは素早く男の容態を診た。とても自力で動ける状態ではない。死んだふりをしていても、アニムノイズは生者の息吹を嗅ぎとることができる。
アニムの索敵を回避する、アニム除けの薬草もあるのだけれど、先ほどの戦闘ですべて使いきってしまっていた。
ユナ・ルーは懐から小瓶を取り出し、その中身を口に含んで、男の唇を塞ぐ。
「げほっ……が、は、げっ」
嫌な呻きを漏らし、男は白目をむいて息絶えた。
殺した訳ではない。数時間すれば息を吹き返す。ユナ・ルーは男に応急処置だけ施して、薄くなりつつある煙幕の向こうへ歩みだした。
廃墟と化した市街地は、味方の死体の山の上、敵軍の兵だけで埋めつくされている。彼らは戦う素振りのないユナ・ルーに困惑気味だ。
ユナ・ルーはこの場で一番偉い士官を探していたのだが……
ふと、抜き身の剣を担ぐ背の高い青年を見つけて、吸い寄せられるように彼を目指した。
「なんだ?」
戦場では珍しいような、優男である。
ただし目つきは鋭く、見ようによっては人相が悪いとさえ言えた。
「あなたが、この場の指揮官だろうか」
「だとしたら、何だ? 大人しく投降するのか」
「逃げた仲間を見逃してあげてほしい」
それが叶うなら、捕虜になるのもこの場で首を落とされるのも、構わない。
青年は眉を顰めた。
「どのみち、戦は終わった。追う理由もねえよ。お前もさっさと何処かへ消えな」
ユナ・ルーは子供の頃にしみついた癖で、ぺこりと青年に頭を下げた。
その動作を、どう思われたのか。
青年が鋭く剣を繰り出した。
戦場に慣れたユナ・ルーの体は、無理な体勢からでも即座に反応し、銃口を青年に向ける。
「………」
ユナ・ルーの喉首に切っ先をつきつけた青年は、ばつが悪そうな顔をした。
「悪い。お前が攻撃してくんのかと思った。誤解だ。もう何もしねえから、今度こそ行けよ」
ユナ・ルーのお辞儀が、彼を脅かしてしまったらしい。
確かにこの世界の人間はあんな動作はしない。ユナ・ルーのほうが悪いだろう。
「ゼルバルト! まだここにいるか?」
「いや、撤収する!」
仲間の呼び声に叫び返し、ゼルバルトと呼ばれた青年は踵を返す。
ゼルバルト。どこかで聞いた名前だ。
そういえば味方が、噂していたかもしれない。
最年少剣聖。大陸で五本指に入る剣客、ゼルバルト。
生身で強い人間より、アニムノイズのほうが多い今の世で、剣で名声を得た存在は珍しかった。
ユナ・ルーは敵軍にも置いてゆかれ、たった一人死体の山の上で彼らの去る姿を見送っていた。
戦争は終わった。
もう、どこへ行っても脱走兵だと謗られ、罰を受けることもないだろう。
ユナ・ルーは先ほど負傷した者をしっかり治療してから、味方が逃げた方角とは逆へ歩みだした。
ジプシーはもともと、定住せず世界を放浪する人種。
行くところがないならば、後はどこへなりと彷徨うだけだった。
とはいえ、ユナ・ルーは緑の国アチェンラを出たことがない。
どうやらいつの間にか、少し前まで十五年も戦っていた隣国ラハトへ迷い込んでしまったらしく、ユナ・ルーは今、石畳の街にいる。
一面が灰色の街で、どこか、子供の頃住んでいたトーキョーの雰囲気があるように思えた。
ジプシーは財を持たない。
定住する者を不自由な者と言い、財を求むる者を金の奴隷と呼ぶ。
ゆえに、食べるものを確保するにはどうしたものか、ユナ・ルーは建物と建物の間に出来る影の中、食べ物と交換できそうな薬草を探っていた。
――不意に走ってきた子供が派手に倒れて、ユナ・ルーは顔を上げる。
「捕まえたぞ、このガキ!」
がらの悪い男がみすぼらしい服装の子供を掴みあげ、腕を振り上げた。
ユナ・ルーは反射的に長筒で男の腕を弾き、路地から飛び出て銃を構える。
突如、ジプシーに長筒を向けられた男はその場に硬直した。
「ジプシーの長筒兵がなんでこんなとこに……」
その疑問には答えずユナ・ルーは背後にやった子供を一瞥し、無事を確認した。
「てめー何なんだ。正義の味方きどりか!?」
「せいぎ……?」
馴染みのない単語を不思議に思う。
だが、そういえばこのラハトは、正義の神に守護された国だったような。ラハト軍はことあるごとに、正義の戦いを、と叫んでいた。戦場に正義も悪もなかろうに。
男は舌打ちする。
「違うなら、なんなんだ。てめーには関係ねえだろう!」
確かに事情も飲み込めないし、本当はこの子供のほうが悪いのかもしれない。
それでもユナ・ルーは銃を降ろさなかった。
「……なにしてんだ、お前ら」
膠着状態を破ったのは、第三者の声音だった。
耳に心地よく響くその低い声音は聞いたことのあるもので、
「ゼルバルトの旦那……」
男が言うように、剣聖ゼルバルトだった。
終戦の際に出会って、ひと月ぶりの再会である。
彼は三人を順繰りに眺めると、腰に手を当てた。
「おいガキ。懐のものをこいつに返してやんな」
彼がまず初めに、子供に話しかけるとは思わなかった。
ユナ・ルーから見ると彼は被害者のように見えたので。
小さな子供は震え、おそるおそる足元に膨らんだ袋―――おそらく財布を置いて、一目散に逃げ出した。
「ったく」
ゼルバルトは苦笑し、男の背を叩いた。
「ま、財布も戻ったしこいつのことは許してやんな。そりゃいきなり大の男が子供追いかけ回してたらよ、驚くさ」
彼に諭されると男も納得したらしい。
ユナ・ルーもどうやら悪かったのは子供のほうだと理解して、背後に置かれた財布を拾い、男に差し出す。
男は再度舌打ちして奪うように財布を掴むと、のしのし怒ったような足取りで引き返していった。
ゼルバルトは、これで役目は済んだとばかりに歩き出すので。
ユナ・ルーもその後をついてゆく。
彼が右に曲がれば、右へ。
彼が左に曲がれば、左へ。
そうこうするうちになぜか同じ大通りへ戻ってきて、ユナ・ルーは首を傾げる。
「なに不思議そうにしてやがんだ」
振り返ったゼルバルトは不機嫌そうだった。
「どこまでついてくんのかと思ったら、一向に離れる素振りもねえ。お前、何の用でついてくんだよ」
「?」
「? じゃねえよ! 何か用かよ」
とくに、なにも。
ゼルバルトはその金色の髪をぐしゃぐしゃかき混ぜると、
「とにかく、もうついて来んな。分かったな!?」
「わかった」
彼が去る姿を、その場で見送った。
「なあ」
ゼルバルトと別れて、その背が消えるより先に、見知らぬ者に声をかけられて振り返る。
「あんた、良い匂いがするな。ジプシーの薬香師かい」
へらへらと笑う細身の男に、ユナ・ルーは頷いた。
その男は付近にいた仲間と思しき男たちを手招きする。
「どうよ、これ」
「へえ」
ラハトの男は、身長が高い。
ニホンジンのユナ・ルーはただでさえ体が大きいほうではなく、覆われて周囲が見えなくなるほどだった。
「あのさ。ちょっと良い店があるんだよ。行こうぜ」
腕を引かれて、逆らうこともなくついてゆく。
こうした輩は初めてではない。ラハトについてからは格段に増えた。
アチェンラにも盗賊は多かったけれど、ラハトには盗賊とまではいかない、がらの悪い軽犯罪者が多くいた。
なんの店かも判然とせぬ建物へ連れ込まれそうになり―――
「おいこら」
行ってしまったはずの、ゼルバルトの声が背後からした。
今度はひどく機嫌が悪そうで、地を這うように低い。
ゼルバルトはよほど有名人らしく、彼の顔を見ただけで男たちは怯んだ。
「それ、ツレだから。勝手に連れてかないでくんない」
迫力ある脅しに、男たちはそそくさと退散してゆく。
ユナ・ルーはというと、ゼルバルトに腕を引かれ、路地へ入った。
どんと壁に叩きつけられるように押される。
「何でさっきみたいに抵抗しねえんだよ!」
「さっき……?」
さっきもなにも、何かに抵抗した覚えはない。
「さっきガキの前に立った時みてえにだよ。お前ほどの腕があんなら、チンピラくらいどうにでもなんだろ!?」
「?」
「だから、? じゃねえよ! 何考えてんだてめーは」
「とくになにも……」
「ちったあ頭使えや!!」
どうして彼は怒っているのだろう。
ゼルバルトは苛々しながら、足で石畳を叩く。
「分かった。宿まで送ってってやっから。どこだ」
「宿はとらない」
「あ?」
「大抵は、その辺の物陰で、立ったまま眠る」
「……そんなことしてたら、さっきみたく悪い輩に引きずり込まれるよね?」
笑っているのだが、ゼルバルトのこめかみに青筋が浮かんでいる。
「なんで自衛しようと思わないのかな? そのうち強姦された挙句、殺されたり売られたりするって分からないのかな?」
「?」
「だから、? じゃねえっつってんだろ!!!」
ゼルバルトの唾を飛ばさんばかりの剣幕に、ユナ・ルーは目を瞬くばかり。
「強姦されるのは、別にめずらしくない」
「………なんで黙って強姦されてんの?」
「?」
「ああもう、お前と話すの疲れるわ」
それでもゼルバルトは見限って去るということはしなかった。
「来な。今夜は同じ宿に泊めてやる。今夜死なれるとなんか寝覚めが悪いから」
よく分からないが、先ほどのように「ついて来るな」と言われなかったので、ゼルバルトの後を追ってゆく。
少しずつ暗くなってゆく陽の下で、ゼルバルトの背中を見つめていた。
ついた宿は質素だが綺麗なところで、ユナ・ルーは此方の世界に来て以来、こんな清潔そうな建物に入ること自体初めてだった。
ゼルバルトがフロントで何やら話している間、扉の側を飾る観葉植物を眺める。
「剣聖の旦那。うちは連れ込み宿じゃないんだけど」
「連れ込むか馬鹿野郎。男じゃねえか」
「あんな変に綺麗な男を急に連れてきたら、連れ込みにしか見えないってのよ」
と、フロントから小動物が出てきた。
ネコと兎のあいのこみたいな生き物で、この世界ではぺットとして飼われている。
手を出してみると、よく人馴れしているらしく、愛想よくユナ・ルーの上に飛び乗ってきた。
ふかふかしていて暖かく、とてもかわいい。
「ったく……」
呑気に獣と戯れるユナ・ルーに、ゼルバルトは溜息ついた。
「おう。鍵やる。部屋は同じな、金かかるから。俺はこれから一杯呑みにいくんで」
じゃあな、と手を振って宿を出るゼルバルトを、小動物を下ろして追った。
「っておい。だから、なんでついてくる!」
間近から噛み付くように見下された。
「今度は ? ってのはなしだぞ。ちゃんと理由を言え。まさかとは思うが、秘宝を狙ってきたんじゃねえだろうな」
「ひほう?」
「違うんなら理由を言え」
ユナ・ルーは迫るゼルバルトの顔を見つめながら、考え込んだ。
理由。理由。ついてゆく、理由。
「あなたのことが、好きだから」
「は」
ゼルバルトが一歩後ずさる。
唐突といえば、唐突すぎた。なぜこんな告白をしてしまったのか、自分でもよくわからない。
けれども口にしてみると実感が湧いた。
好き。この男が、好きだ。
ゼルバルトは引きつり笑いながら、「人間として好きって意味だよな?」と重ねて尋ねてくる。
「たぶん、恋愛だと思う」
「いやいやいやいや……俺、駄目だから。ラハトじゃ男もばっちこいな奴多いけど、俺は抱く方も抱かれる方も駄目だから」
「そう」
「お付き合いとか一晩のお付き合いとかも、もちろん駄目だから」
「そう」
「分かってくれるんなら良いけどよ」
胸を撫で下ろして街へ繰り出す彼の後を追っ……
「だから、なんでついてくんだよ!」
こう怒られるのも、本日何度目だったか。
今度は胸ぐらを掴み上げられてしまった。胸ぐらというか、頭から被った織物だが。
ユナ・ルーは吊られた状態で、首を傾げた。
「あなたが好きだか」
「それはもういい!!」
とうとう、ゼルバルトはしゃがみこんで頭を抱え込んでしまう。
夜の道行く人々が、あの有名な剣聖がと不審な目を向けていた。
「………お前なんかヘンな奴っていうか、ちょっとおかしい奴だよな? なんか会話してる気がしねえんだ」
「よく言われる」
「やっぱ言われてんじゃねえか。改善しろよ。確認してえんだけど、お前は俺に求愛したりしねえよな? 抱けとか言わないよな」
「言わない」
「……抱かせろともいわねえよな?」
「言わない」
ユナ・ルーからすれば、ゼルバルトがなにをこんなに確認をするのか、何に懊悩しているのかも、分からない。
お互い困惑していた。
「とにかく、お前は部屋に帰って寝ろ。それとも酒呑みたいのか?」
「いや」
「じゃあ、帰れ」
「わかった」
ゼルバルトが言うなら、そうする。
尤も、ユナ・ルーは誰が言っても、大抵はそのとおりに行動するのだが。
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