毒も薬も紙一重〜総合魔術大学の日陰者は、何故か今日も慎ましく生きられない!?

水定ゆう

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28.今ある情報の精査

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「あの、シャウワさん」
「アダバナさん。どうでしたか?」

 アダバナはシャウワの下に戻った。
 とりあえず一通り話をしてみた。
 けれど個人的な収穫は〇に近い。
 一体如何するべきか、シャウワにとりあえず伝える。

「えっと、話しをしてみました」
「ですね。見ていましたよ」
「見ていたって……シャウワさんはなにをしていたんですか?」

 アダバナはここまで助け船を出してくれなかったシャウワに訊ねた。
 するとシャウワはシャウワで仕事をしていたらしい。
 職務放棄をしていた訳ではなく、観察をしていたのだ。

「観察、ですか?」
「はい。周りを見ていて、表情や魔力の空気を見ていたんです」

 表情や魔力の空気を見ていた。
 首を捻ってしまうと、ポカンとしてしまった。
 
 確かに表情の変化は分かりやすいかもしれない。
 もしかすると、アダバナが話しをしている最中、話しを終えた後の表情。
 そこにシャウワの求めている物があったのかもしれない。

「表情とか魔力の変化? で、なにか分かったんですか?」
「幾つかです。容疑者の二人、アシェラさんとキャレラさんの二人はいつも一緒のようです。ミツリさんはアダバナさんと同じで、少し自信が無さ気……シャムシエルさんは、妙です。ただ、もっと深い部分で、ですよ」

 シャウワは表情や魔力の変化を見ていた。
 その結果、面白いことが分かった。
 アシャラとキャレラの関係。ミツリがアダバナに似ている。シャムシエルは異質。
 疑いの目を向ける部分はたくさんあった。
 
「えっと……よく分からないです」
「分からなくても大丈夫です! さてと、アダバナさんが聞いた話しを聞いてもいいですか?」

 ハキハキとした口調で、シャウワはアダバナに訊ねる。
 今度はアダバナが手に入れた情報を伝える番だ。
 けれどよく分からなかったので、とりあえず聞いたことをシャウワに伝えた。

「……ってことみたいです」
「なるほど……難しいですね」

 口元に手を当てた。
 帽子の下の耳がピクピク動いている。
 騎士警察のシャウワでも分からない。実際、それで分からないのなら、アダバナには手の施しようがない。

「あの、シャウワさん。あの四人の中に、犯人がいるんですか?」
「そうですね」
「どうしてハッキリ言えるんですか? やっぱり、その時間帯に同じ階層にいたのが、あの四人だからですか?」

 正直、アダバナは夜遅くまでアカデミック総合魔術大学に居た記憶が無い。
 けれど学校の仕組み上、夜間は警備が強化されているのは学校手帳にも記載されていた。
 それがどれだけの効果を持っているのかは分からないが、騎士警察が信頼を寄せる程のものらしい。

「当然です。ただ、疑うのも無理はないですね。ですが、あの四人以外に候補はいません」
「どうしてですか? 警備システムが凄いんですか?」
「はい。この学校の結界は、特に強力なもののようで、なにか起こればすぐさま作動するそうです」
「結界……それで閉じ込めちゃうってことですね」
「そうです。なのであの四人以外に、犯行は不可能です」

 絶対の信頼を寄せていた。
 そんな凄まじい結界が存在しているようだ。
 今の時代にも続く、結界魔術。原型となったのは、千年前の魔法使いらしいが、それを魔術として改良を施し、今ではこうして警備システムとして広く使われていた。

「でも、みんな慕っているんですよ。シャムシエルさん以外は……」
「では、シャムシエルさんが犯人だと思いますか?」
「わ、分からないです。私はただの生徒で……ただ」
「ただ?」

 何故かシャウワはアダバナの意見を訊いていた。
 一つでも多くの可能性を考慮しておきたいのだろう。

 そのせいか、アダバナは責任重大だった。
 心臓が止まってしまうそうな感覚に陥る。
 下手なことを言えば、誰かに疑いの目が向いてしまいかねない状況だ。

 言葉は慎重に選ぶ必要があった。
 だからこそ、シャムシエルが別の意味で疑わしいが、それがサティウスとの間に、直接的な関係があるとは思い辛い。

「サティウス准教授は、どうして襲われないといけないのかなって……」

 結局は犯人の目的が見えて来ない。
 そのせいか、犯人の輪郭も未だに定かではない。
 ムッとした表情を浮かべると、シャウワも考えていた。

「確かにそうですね。サティウスさん……サティウス先輩が何故?」
「シャウワさん……」
「すみません、情けない表情を見せましたね。大丈夫です!」

 シャウワの表情が、何故か暗かった。
 もしかしなくても、騎士警察の職務の前に、先輩後輩の関係で心配している。
 だからだろうか。アダバナは本当に分からなくなった。

「もしかして、サティウス准教授の持っている物が欲しかった、とか?」
「やはり物取りですか?」
「わ、分からないです」

 サティウスが襲われた理由が分からない。
 けれど可能性があるとすれば、物取りだ。
 一体何が欲しかったのだろうか? 国の機関かそれとも特定の企業のものなのか。

「仮にそうだとしても、一体どうして……」
「決まっていますよ」

 急にアダバナでもなければ、シャウワの声も聞こえた。
  ピキンと耳が立つと、アダバナとシャウワは体を動かした。
 薄っすらと開いた扉。アダバナが閉め忘れた……訳ではなく、開けられていた。

「「カモミール教授!?」さん!?」

 何故か会議室に現れたのはカモミールだった。
 アダバナとシャウワは視線を送った。
 何故こんな所に居るのか分からないが、それでもアダバナとシャウワは、突然の存在に驚いた。
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