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44.試験管が無くなりました?
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「さてと、とりあえず名簿の確認ですね」
「そうですね。では、名簿を確認しましょうか」
まずは名簿を確認することになった。
如何やら二人分の生徒にはアリバイのようなものがあるらしい。
逆に首を絞めることになるかもしれないが、少なくとも情報になる。
「恐らくは、魔術が関係している筈ですが」
「なんですかね、特異な魔術があるとか?」
「そこまでは把握できていませんね。ですが、一つ気になることもできました」
「気になることすか?」
カモミールには気になることがあった。ある種の違和感だ。
名簿に関係がある訳ではなく、何故荒らされているのが本棚だけなのか? しかも一部だけで、床には何冊もの本がバラバラに散らばっている。
「この散らばった本ですね。恐らくは、ここに隠れていたのでしょうが……」
「お、おかしいです、よね!?」
「はい、アダバナさんの言う通りです。これだけ本が崩れていれば、確実に視界に入る筈です。にもかかわらず、警備員の方は気にも留めなかった」
騎士警察の男性は、警備員に話を伺った。
その中で、崩れた本には一切の言及が無い。つまるところ、崩れて床に散らばった本は関係がない。気にも留めない程で、特に意識をする必要は無かった。
「単なるカモフラージュだとは思いますが、魔術が断片的に残っています」
「そうですね。私達が散らしてしまったとは言え、わざとらしく残っています」
「本当、わざとらしいですね」
目を向ける部分が間違っているのかもしれない。
それでも視線を奪われてしまうのは仕方のないことだ。
アダバナも違和感の一つとして捉える中、カモミールはもう一つ増えた違和感の正体をアダバナに訊ねた。
「アダバナさん。一つ伺ってもよろしいですか?」
「は、はい、な、なんですか?」
「先程試験管の話をしていましたよね? アレはなんのことでしょうか?」
カモミールが感じた違和感。それはアダバナの言葉だ。
何故か試験管の話題を口にしたので、関係があると思ったらしい。
実際にはそうではなく、まだカモミールに伝えていなかった事実を、このタイミングで明らかにする。
「実は、昨日カモミール教授の研究室にあった試験管を一つ、その、割ってしまったんです」
「そうでしたね。ですが気になさらなくても構いませんよ?」
「えっと、実はその前にサティウス准教授が来て……えっと、その……私、零した薬品をなんとか誤魔化そうとして、置いてあった試験管にイチゴ牛乳を混ぜたんです」
アダバナは反省しつつも、勇気を振り絞って答えた。
あまりにも安価でその上子供騙しにも程がある偽装工作だ。
正直アダバナらしいと言えばらしいのだが、カモミールは瞬きをして理解しようと試みる。
「い、イチゴ牛乳ですか?」
「はい。サティウス准教授は笑っていて、イチゴ牛乳の入った試験管を、自分の研究室に持ち帰って、その……」
「なるほど。道理でこの部屋の中は、イチゴ牛乳の香りが充満したんですね」
キョトンとした顔をするカモミール。まさか試験管の中に、イチゴ牛乳を入れて、薬品の代わりとして誤魔化そうとするとは思わなかったのだろう。
おまけにイチゴ牛乳の入った試験管を、先に研究室にやって来たサティウスに看破され、持って行かれてしまった。そのせいだろうか? シャウワは鼻が利くので、薄っすらと幕を張るように上澄み部分で充満していた、イチゴ牛乳のニオイを今更言及する。
「そうですね。サティウスの研究室なので、特に気にも止めませんでしたが」
「はい。サティウス先輩は、イチゴが好きですから」
如何やらニオイについては気が付いていたが、誰も疑いを持たなかった。
学生時代から、サティウスがイチゴを好きなことは承知しており、研究室に愛飲しているイチゴ牛乳の香りで満たされていても何ら不思議ではない。
「ですが、私の研究室から試験管を持ち出していたんですね」
「本当に、その、ごめんなさい! サティウス准教授なら、後でその、責任を持ってカモミール教授に返してくれるって思って、つい……止められなかったんです。ごめんなさい!」
アダバナは精一杯謝った。誠意を込めて頭を下げ続けた。
少しだけ目尻に涙が溜まっている。涙目になってしまうと、この状況で叱れない。
意図せず、ましてや悪気もなく完全に空気を作り出すと、カモミールはクスッと笑った。
「(ふふっ)構いませんよ、試験管の備品は何本もありますので」
「そうです。サティウス先輩ではないです」
「そうですよね。サティウスさんは、自分専用に特注品を用意していますから」
アダバナが心配し、酷になることは無かった。
サティウスとは違い、カモミール特別な場合以外、所持している自前の試験管を使わないのだ。そのため、学費を払っている以上、備品が無くなっても問題は無い。
「ですのでお気になさらなさいでください。試験管が一本程度無くなったとしても、私も大学も咎めませんので」
「よ、よかったぁ~」
アダバナは力が抜けて、床にペタンと座り込んでしまう。
ここが事件現場ではあるものの、シャウワの魔術が掛けられている。
おかげで指紋などは残ることなく、誰も咎めずにこの日一番ホッとしたアダバナの表情を見下ろした。
「そうですね。では、名簿を確認しましょうか」
まずは名簿を確認することになった。
如何やら二人分の生徒にはアリバイのようなものがあるらしい。
逆に首を絞めることになるかもしれないが、少なくとも情報になる。
「恐らくは、魔術が関係している筈ですが」
「なんですかね、特異な魔術があるとか?」
「そこまでは把握できていませんね。ですが、一つ気になることもできました」
「気になることすか?」
カモミールには気になることがあった。ある種の違和感だ。
名簿に関係がある訳ではなく、何故荒らされているのが本棚だけなのか? しかも一部だけで、床には何冊もの本がバラバラに散らばっている。
「この散らばった本ですね。恐らくは、ここに隠れていたのでしょうが……」
「お、おかしいです、よね!?」
「はい、アダバナさんの言う通りです。これだけ本が崩れていれば、確実に視界に入る筈です。にもかかわらず、警備員の方は気にも留めなかった」
騎士警察の男性は、警備員に話を伺った。
その中で、崩れた本には一切の言及が無い。つまるところ、崩れて床に散らばった本は関係がない。気にも留めない程で、特に意識をする必要は無かった。
「単なるカモフラージュだとは思いますが、魔術が断片的に残っています」
「そうですね。私達が散らしてしまったとは言え、わざとらしく残っています」
「本当、わざとらしいですね」
目を向ける部分が間違っているのかもしれない。
それでも視線を奪われてしまうのは仕方のないことだ。
アダバナも違和感の一つとして捉える中、カモミールはもう一つ増えた違和感の正体をアダバナに訊ねた。
「アダバナさん。一つ伺ってもよろしいですか?」
「は、はい、な、なんですか?」
「先程試験管の話をしていましたよね? アレはなんのことでしょうか?」
カモミールが感じた違和感。それはアダバナの言葉だ。
何故か試験管の話題を口にしたので、関係があると思ったらしい。
実際にはそうではなく、まだカモミールに伝えていなかった事実を、このタイミングで明らかにする。
「実は、昨日カモミール教授の研究室にあった試験管を一つ、その、割ってしまったんです」
「そうでしたね。ですが気になさらなくても構いませんよ?」
「えっと、実はその前にサティウス准教授が来て……えっと、その……私、零した薬品をなんとか誤魔化そうとして、置いてあった試験管にイチゴ牛乳を混ぜたんです」
アダバナは反省しつつも、勇気を振り絞って答えた。
あまりにも安価でその上子供騙しにも程がある偽装工作だ。
正直アダバナらしいと言えばらしいのだが、カモミールは瞬きをして理解しようと試みる。
「い、イチゴ牛乳ですか?」
「はい。サティウス准教授は笑っていて、イチゴ牛乳の入った試験管を、自分の研究室に持ち帰って、その……」
「なるほど。道理でこの部屋の中は、イチゴ牛乳の香りが充満したんですね」
キョトンとした顔をするカモミール。まさか試験管の中に、イチゴ牛乳を入れて、薬品の代わりとして誤魔化そうとするとは思わなかったのだろう。
おまけにイチゴ牛乳の入った試験管を、先に研究室にやって来たサティウスに看破され、持って行かれてしまった。そのせいだろうか? シャウワは鼻が利くので、薄っすらと幕を張るように上澄み部分で充満していた、イチゴ牛乳のニオイを今更言及する。
「そうですね。サティウスの研究室なので、特に気にも止めませんでしたが」
「はい。サティウス先輩は、イチゴが好きですから」
如何やらニオイについては気が付いていたが、誰も疑いを持たなかった。
学生時代から、サティウスがイチゴを好きなことは承知しており、研究室に愛飲しているイチゴ牛乳の香りで満たされていても何ら不思議ではない。
「ですが、私の研究室から試験管を持ち出していたんですね」
「本当に、その、ごめんなさい! サティウス准教授なら、後でその、責任を持ってカモミール教授に返してくれるって思って、つい……止められなかったんです。ごめんなさい!」
アダバナは精一杯謝った。誠意を込めて頭を下げ続けた。
少しだけ目尻に涙が溜まっている。涙目になってしまうと、この状況で叱れない。
意図せず、ましてや悪気もなく完全に空気を作り出すと、カモミールはクスッと笑った。
「(ふふっ)構いませんよ、試験管の備品は何本もありますので」
「そうです。サティウス先輩ではないです」
「そうですよね。サティウスさんは、自分専用に特注品を用意していますから」
アダバナが心配し、酷になることは無かった。
サティウスとは違い、カモミール特別な場合以外、所持している自前の試験管を使わないのだ。そのため、学費を払っている以上、備品が無くなっても問題は無い。
「ですのでお気になさらなさいでください。試験管が一本程度無くなったとしても、私も大学も咎めませんので」
「よ、よかったぁ~」
アダバナは力が抜けて、床にペタンと座り込んでしまう。
ここが事件現場ではあるものの、シャウワの魔術が掛けられている。
おかげで指紋などは残ることなく、誰も咎めずにこの日一番ホッとしたアダバナの表情を見下ろした。
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