寂れたパン屋で店番をしていたら、見知らぬ美少女がやってきました。

水定ゆう

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第2話 美少女来店

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 驚いた。まさかこんな店に客が来るなんて。
 しかもかなりの美少女で、俺と同い年か少し年下ぐらいの少女だ。

 とは言え欲情などしない。
 ましてや俺の意識は、「どうしてこんな店に?」と首を捻った。

 もしも俺ならこんな客の居ない寂れた店に入ったりはしない。
 普通にスルーして、コンビニで適当な菓子パンを買うだろう。

「いらっしゃいませ」

 とりあえずほかに客が誰もいないので、挨拶はしておいた。
 すると俺のことを見てにこりと微笑んだ。
 可愛いと心から思ったので、俺はこんな子が来てくれて嬉しいと思った。

 しかしやっぱり拭いきれない。
 ただの気まぐれだろうが、如何してこの店にやって来たのか。
 外から見ても廃れていて、繁盛していないのは明白だ。
 なのに如何して、トレイを手に取りトングでパンを乗せていく。

「しかも同じパンばっかり。確かクリームパンだっけ?」

 そう言えば焼いてから時間がかなり経っているはずだ。
 そろそろ取り替えないとマズいので、悪いけど引き下げさせてもらう。

「あの、すみません」

「はい?」

「そちらのパン、店頭に置いてからしばらく経っているので硬くなっていると思うんです。なのでお客様にお買い求めいただくことは……」

「ダメなんですか? こんなに美味しそうなのに」

「味は問題ないでしょうが……」

「ちなみにこのパンは?」

「そうですね。俺は要らないので、廃棄になるかと……」

「だったら私これを買います。捨てるなんて勿体ないです」

 急に向きになって食らいついてきた。
 まあ、少し値段を下げて提供する分にはいいかもしれない。
 そこで俺は値札表示を変えることにした。

「では……このくらいに」

「は、半額ですか!」

「は、はい? ご不満でしょうか?」

「いえ。あの、本当にいいんですか?」

 如何してそんなに割引になることを意外に思うのか。
 俺にはよくわからなかったが、とにかく表情が可愛い。
 だけど何処か見覚えがあるような気がするのは気のせいだろうか?
 俺は失礼だがジッと顔を見てしまった。

「あ、あの!?」

「あっ、すみません。それでは会計を済ませますね」

 俺はそう言うとトレイを預かりレジで会計を済ませる。

「袋はご利用になられますか?」

「はい。お願いします」

 俺は袋を取り出し、パンを袋の中に詰めていく。
 全部クリームパンなのが何故か引っかかるが、この店の唯一の売れ筋商品、メガメンチカツチーズバーガーを堂々と入り口正面に置き、さらにはPOPまでレジ横に置いているのにまるで見向きもしない。

「他にもこちらの商品がおすすめですよ?」

「大丈夫です。私はクリームパンを買いに来ただけですから」

「そうですか……あっ!」

 クリームパンが一つ崩れていた。
 表面が破けていて、流石にこれを売るのは忍びないと俺の脳が訴える。
 一言申してから下げようとしたが、何故か止められてしまった。

「待ってください。如何してそのパンだけ下げるんですか!」

「すみません。少し崩れてしまっているので。流石に久々に来ていただいたお客様にお売りするわけにはいきません」

「私は気にしませんよ?」

「俺が気になるんです。やっぱりパン作りはもういいや」

「ではここにあるパンは……」

「このクリームパンはまあ俺が作りましたよ。ただ店内のほとんどは外注で知り合いのパン屋さんに頼んで作って貰ったものですけどね」

 そんなことができるのはうちが実は大手だからだ。
 たくさんの子会社があり、その中には昔営業危機から救ったパン屋もある。
 この際、投資していた甲斐があったと俺は胸を撫で下ろす。

「ということは、やっぱり貴方が作ったものなんですね」

「そうですけど、何か問題でも?」

「いいえ。むしろ嬉しいです。また買いに来ますね」

 おっ、これはお得意様を作るチャンス。
 俺はにやりと笑みを浮かべて「ありがとうございます」と頭を下げた。
 それにしても美少女だったなと思い、店から出ていく後姿を思い出す。
 次はいつ来てくれるのか。客がいないとつまらない。
 そう思った俺だったが、次の日から毎日やって来るのは予想外だった。
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