武器屋無双〜どんな武器でも作れる【武器屋】の俺、勇者パーティーを追放されたのでやけに明るい最強ヒロインとパーティー組んで無双してしまった!?

水定ゆう

文字の大きさ
19 / 94
3章

第19話 コウモリの大群

しおりを挟む
 俺とエクレアの道中はまだまだかかった。
 その間何も起きない訳もなく、平気でモンスターに遭遇した。

「そりゃぁ!」

 エクレアが太陽の聖剣を振りかざし、襲ってきた小鬼のモンスターを切り裂いた。
 緑色の体皮をしており、頭には小さな白い角が生えている。
 小鬼のモンスターは数いるが、中でも繁殖力が極めて高いのがこのゴブリンと言う種族だろう。

「エクレア。まだまだ来るぞ!」
「わかってるよ。はぁー!」

 エクレアは背後から襲い掛かるゴブリンに引きを真っ二つに引き裂いた。
 まるで躊躇がないのが怖い。
 俺は遠目でそれを確認しながら襲ってくるゴブリンの顔面を殴りつけた。

「エクレアも結構怖いことをするんだな」
「私よりもカイ君の方が怖いよ。って、今目玉が飛び出してなかった!」
「そうだな。それがどうした?」

 俺は襲ってきたものの威圧して怯ませたゴブリン目掛けて足を下ろした。
 悲鳴を上げながら、ゴブリンが絶命する。
 確かにこの状況は一方的な殺戮に見えるだろうが、こっちは襲われた身だ。仮にテリトリーに侵入したとしても見境なく襲われる時点でゴブリンたちもわかっているはずだ。
 けれど明らかに俺の戦い方を見たゴブリン達が怯えてしまっている。
 どうやら威圧が過ぎたらしい。

「そのせいで俺のところに攻撃しに来ないんだが」
「やり過ぎなんだよ。魔石ばっかり落ちてるよ!」
「そうだな。ここにいるゴブリンを狩りつくせばいくらになるだろうな」

 ふと気になったので口にしてみた。
 すると言葉を理解したのか、それとも警戒していたために俺の意図を読んだのか、自分達から森の中に散り散りに離散する。
 どうやら恐れをなして逃げたようだが、これだけ脅せば当分人間を襲うことはないだろう。
 ゴブリンは狡猾で欲望に忠実な種だ。そのため俺も畏怖を込めて少し狂暴になっていたのだが、効きすぎてしまったらしい。
 それからしばらくの間、俺達はモンスターに出くわすことはなかった。


 しばらく進むと目の前に岩肌の剥がれた山が見えてきた。
 どうやらここが西の鉱山らしい。聞いていた通り、ダンジョンとしても巨大だ。
 これは楽しめそうだと、少しだけわくわくしていた。

「エクレア、この先にあるのがそうだよな」
「うん。パフィさんから教えてもらった話しだと、鉄鉱石だけじゃなくて珍しい鉱石が埋まっているらしいよ」
「なるほどな。副産物も旨そうだ」

 俺はエクレアと共に森を抜けようとした。
 西の鉱山に行くには目の前にある一本道の森を突っ切る必要がある。
 しかし体が急に危険を察知した。エクレアの腕を掴み、先に行かせないようにする。

「待て、エクレア」
「うわぁ! どうしたの、急に腕を掴んで」
「嫌な予感がする。少しだけ光を照らせるか」

 俺はエクレアにそう指示した。
 エクレアの持つ固有魔法、《黄昏の陽射し》がどれほど効果を持っているかは知らない。
 しかし熱を光を使って自由に操れるのだとしたら試す価値はある。
 するとエクレアは特に理由を聞くでもなく、魔法を使ってくれた。

「《黄昏の陽射し》!」

 右手をかざすと森の中が眩しくなった。
 急に光が放射されたことで、森の中一帯が明るくなる。すると奥からバサバサと凄まじい羽音が聞こえてきた。

「な、何の音!」
「こっちに来いエクレア!」

 俺はエクレを抱えると森とは魔反対の方向に逃げた。
 エクレアは大人しく、森の中の一本道からはバサバサと音が聞こえていた。
 顔を覗き込み、何が来るのかと目凝らしていると大量のコウモリが飛び立っていた。

「コウモリだと? どうしてこんなところにコウモリが……」
「え、えーっと……そのー」

 エクレアの歯切れが悪い。
 ふと顔を近づけると顔色が悪いのか、赤らんでいる。
 俺は膝を抱えて走り出しただけだというのにどうしてこんな表情を浮かべられるのか。人間は些かわからない生き物だった。
 俺も人間だが、男と女でここまで違いが出るのは面白い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...