武器屋無双〜どんな武器でも作れる【武器屋】の俺、勇者パーティーを追放されたのでやけに明るい最強ヒロインとパーティー組んで無双してしまった!?

水定ゆう

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5章

第52話 とりあえずお疲れ様

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 俺とエクレアは客を何とかさばき切り、夜を迎えていた。
 外はもう暗い。
 店の中の片づけを終えて気が付いたことだが、1日の売り上げが凄まじいことになっていた。

「ふぅー、これで何とかなったな」
「本当助かったよ。ありがとう、カイ君!」
「それはいいがちゃんと払えよ。こっちはタダで手伝っているわけじゃないんだ」
「わかってるってー」
「本当にわかっているのか? 天然はわからん」

 俺は飽きられるように項垂れた。
 しかしエクレアも自由奔放だがきちんとしている節はある。
 周りを巻き込む癖は相変わらずだが、それでも楽しそうにしていた。
 人の笑顔は気持ちが良ければいいほど、他人への影響力を持つ。特にエクレアの笑みは町中を元気づける力を持っていた。

「それはいいけどねカイ君。これからも手伝ってくれないかな?」
「金さえ出せば手伝ってやる」
「ありがとう。じゃあ冒険者活動も」
「人数割りでいい。貢献度は踏まえるな」
「了解。それじゃあ今日はもうお開きにしよっか。そうだカイ君、何か食べてく? 私料理できるよ」
「それはいい。俺は食いたいものは決めているんでな」

 俺は一早く店を出ると森の方に向かって歩き始めた。
 空には満点の星が浮かび、新月ではないので月明かりが差し込んでいる。
 昼間に張っておいたハンモックを見つけ、俺は気に登ってハンモックに飛び込む。すぐさま横になると、携帯食料をかじった。糞マズい。

「相変わらず、人が食えたもんじゃないな」

 とは言え食えているんだから食えたものではある。
 そんなくだらないことは置いておくとして、俺は月明かりを受けながら瞼を閉じた。
 正直意識がハイになっていて、全然眠気がやって来ない。だからこそ、こうして1人で過ごしている。
 エクレアと出会う前。それこそリオンたちとも慣れ染める前前の話だ。
 俺が冒険者になり、旅をしていたころはよくこう過ごしていた。
 あの時から随分と俺の景色も変わってきている。

「とは言え俺は陰者でいい。あんまり人と関わって目立つと面倒だ」

 この前のファフニール戦だってそうだ。
 あの時結局俺が倒したことにならなければ、俺の存在が間接的にも噂で広がることはなかっただろう。
 とは言え妥協はできない性分だ。ファフニールを倒したことが広まってしまうのなら仕方がない。
 だが俺は危惧していた。勇者パーティーに知られるとあの女が無視しないだろうからだ。

「あの女は絶対にヤバい。俺の警戒意識が最初からそう言っていた」

 そう言えば顔を隠していたのはアイツの気配に気が付いたからだ。
 今頃リオン達は大丈夫だろうか。我の強いフレアや変に平穏馬鹿なバレットなら問題ないだろうが、馬鹿真面目なリオンはきっと大変だろう。
 今頃、体が悲鳴を上げるようなことになっている。

「まあ、今の俺には関係ないけどな」

 そう言いながら香水の瓶を取り出すと、俺は懐かしく思うのだった。

 *

 勇者パーティーも夜が遅くなったので眠りについていた。
 その中でフレアとバレットはマーリィから離れて寝ており、リオンは昼間の疲れもあるのに見張りをしていた。

 マーリィは優雅にふかふかの毛布に体を包んで寝ている。
 余分なことをしたくないので誰の回復もしない回復役など必要ないのに。

「カイ、僕たちは頑張ってるよ。今頃君は何をしているのかな」

 別れた恋人を引きずるみたいに香水の瓶を取り出すと、中身を嗅いでいた。
 ピンク色の香水が若干灰色に見えている。かなり疲れが溜まっている証拠だ。

「あはは……君にもよく言われていたね。適材適所を守れって」

 カイが教えたことはリオンの胸に突き刺さっている。
 本当は動物を放牧したりしたい。畜産がやりたいと心から願っているリオンがモンスターを狩るなんて、何とも皮肉な話だった。
 心も体も砕けそうになりながらも、今は使命感だけがリオンを動かしていた。

「とは言え魔王だっけ……本当に悪い奴なのかな? そんなの本当にいるのかな」

 最近は凄く怪しんでいる。
 黒龍を相手にしたのもあるが、魔王軍に関する敵とは未だに戦ったことがない。
 世間のことを知らないが、【勇者】がいるなら【魔王】がいてもおかしくない。そんなありきたりなパターンの枠にはめてしまってもいいのだろうか。
 リオンは足りない頭で考えていた。こんな時カイがいたらなんというだろうか。

「多分カイなら、そんなもいてもいなくても関係ない。敵なら切る、そうでないなら取り込む。それだけだ……とか言うんだろうな」

 ちょっとだけ笑みを零した。
 今は考えても仕方がない。
 リオンは無駄なことを考えるのを止めにして、星の聖剣を握った。
 太陽の聖剣、月の聖剣、それから星の聖剣。この三剣が揃えば何かが起こる、そんな伝説もあるが今何処にあるかもわからない聖剣に何となく語り掛けてみた。

「ねえ、君はどう思う?」

 リオンは冷たい吐息を掛ける。
 それは星空に響き、一線の星を流したんだ。
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