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8章
第78話 猟銃は進化する
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面倒なことになった。
俺は今更ながら後悔している。
「はぁー。引き受けるんじゃなかったな」
俺は目の前の作業台の上に置かれた壊れた猟銃に溜息を吐いた。
「こんなもの、どうやって直せばいいんだよ」
流石に俺の本分じゃない。
何せ俺は【武器屋】と呼ばれていたが、“直す”が専売特許ではなく、“作る”がメインだった。
にもかかわらずここに来て、今まで知識としてでしか知らないものを、ましてやこんな骨董品の修理依頼されてしまうとは。本当、感情的に浸って引き受けるんじゃなかったと後悔が募る。
「とは言え、直さないとエクレアに焼き殺されるからな。仕方ない、命が惜しいからやってやるか」
アイツならそれぐらいするだろう。
つまり俺に逃げ道などはなく、とにかくやるだけやるしかない。
まずはバラしてみることにした。
専用の工具などはないので、隙間を見つけて分解してみる。
すると中の部品から相当錆び付いていて、今までどうやって撃っていたのかわからなくなった。
「なるほど、内部にスプリング機構が搭載されているのか。このレバーは空薬莢を排斥するための装置……弾は同時に6発。怖いな……」
ただの猟銃ではないとは察していたが、まさかここまでとは思わなかった。
構造としてはシンプルで大量に弾を装填できることと、レバーが二つ付いていること以外に気になる点はない。
引き金を引くと、ハンマーが落ちて弾薬の後ろを叩いて空気圧と一緒に加速させて撃ち出す。北の大陸では一般的なものだった。
とは言え、こっちでは滅多に見られない。
猟銃のような近代兵器ではなく、未だに弓やボウガンで狩りをするからだ。
「しかもパーツも壊れてるな。これはパーツの総入れ替え……いや待てよ。どうせなら、俺が改造してもいいんだよな」
ちょっと楽しくなってきた。
俺は依頼人のことなどお構いなしに、猟銃をいじってやろうと思う。
もはや猟銃ではない。完全なスナイパーライフルにしてやる。
「ということで欲しい機構だが……基本は遠距離。どうせなら300メートルは離れたとことから撃ちたいな」
そのためには弾の形状を変えたり大型化が要求される。
しかしその辺りには特に気を遣わない。最初から変形機構は考えていた。
「銃身自体の長さと変更できるようにすればそれだけ質量の軽減と射程距離を誤魔化せる。これで近距離と遠距離の両立ができるはずだ」
まずは銃身と本体の接続部がスライドして伸びるようにした。
これで軽さを生み出すことができる。
「次は弾数だな。どうせなら12発ぐらいは撃てた方がいいだろ」
ちょうど余っていた部分があるので、残弾を溜めて置けるようにした。
さらにこのレバーだ。引いた回数によって中に溜め込む空気圧を変化できるようにすれば、足りない加速力と飛距離が稼げる。
「後はこの謎のパーツ。それから発熱だな。少し穴を空けて肉抜きするとして、熱も逃げるようにするか」
俺は試行錯誤を続ける。
すると次第に楽しくなっていることに気が付いた。
結果、「どうせなら外見も変えるか」ということで、面影が完全になくなってしまう。
「この後ろのレバーを引くと指を当てるようなガラス板が出て来るな。この奥には……ああ、なるほど、コイツは魔力を食って魔弾を生成する装置だな」
初めて見たが面白い仕組みだ。
どうやらレバーを引くとガラス板が出てきて、そこに親指を押し当てると特殊な弾丸を生み出せるらしい。
この生み出した弾丸は魔弾と言って、込めた魔力によって威力や形状が変化する特殊な代物だと俺は記憶している。
「まさか骨董品でもここだけは生きていたんだな。とは言え、排熱処理が行き届いていないで、一発撃ったら白化するけどな」
なるほど。それで銃身が白く溶けていたのか。
俺は白化した原因が閃いて解決した。
「ここも掃除しておいてやるか」
ガラス面は指圧を測る仕組みになっているらしい。
ここまで来たなら磨いてやろうと思い、俺は塗装や研磨をしておいてやった。
「こんなものだろ。意外に楽しかったな」
俺はかつて猟銃だったなにかを修理した。
元の面影は完全になくなっていて、これで満足されるかはわからない。
一応魔弾も常時装填できるようには改造したが、アイツの性格的にどうだろうな。
「そう言えば、アイツの名前を聞いてなかったな」
まあ名前何てどうだっていい。
俺はそう思うと、窓の外を見た。もう朝陽が昇っている。
「マジか。6時間も経っていたんだな。道理で眠いわけだ」
俺は睡魔に襲われた。
流石に今日は1日中寝ておこう。
そう思った俺は作業を終了して寝ることにした。
「ふはぁー。今日はよく眠れるぞー」
そう言ってベッドに入った俺は、アイマスクをして完全に光をシャットアウトした。
作業台の上にはアイツの新しい相棒が置きっぱなしにされていた。
しかし俺には関係ないので、明日にでも渡しに行こうと決めた。
「すぅーはぁーすぅーはぁー」
俺の意識は闇の中に落ちていた。
次に起きた時、また朝陽が昇っていたのは言うまでもない。
俺は今更ながら後悔している。
「はぁー。引き受けるんじゃなかったな」
俺は目の前の作業台の上に置かれた壊れた猟銃に溜息を吐いた。
「こんなもの、どうやって直せばいいんだよ」
流石に俺の本分じゃない。
何せ俺は【武器屋】と呼ばれていたが、“直す”が専売特許ではなく、“作る”がメインだった。
にもかかわらずここに来て、今まで知識としてでしか知らないものを、ましてやこんな骨董品の修理依頼されてしまうとは。本当、感情的に浸って引き受けるんじゃなかったと後悔が募る。
「とは言え、直さないとエクレアに焼き殺されるからな。仕方ない、命が惜しいからやってやるか」
アイツならそれぐらいするだろう。
つまり俺に逃げ道などはなく、とにかくやるだけやるしかない。
まずはバラしてみることにした。
専用の工具などはないので、隙間を見つけて分解してみる。
すると中の部品から相当錆び付いていて、今までどうやって撃っていたのかわからなくなった。
「なるほど、内部にスプリング機構が搭載されているのか。このレバーは空薬莢を排斥するための装置……弾は同時に6発。怖いな……」
ただの猟銃ではないとは察していたが、まさかここまでとは思わなかった。
構造としてはシンプルで大量に弾を装填できることと、レバーが二つ付いていること以外に気になる点はない。
引き金を引くと、ハンマーが落ちて弾薬の後ろを叩いて空気圧と一緒に加速させて撃ち出す。北の大陸では一般的なものだった。
とは言え、こっちでは滅多に見られない。
猟銃のような近代兵器ではなく、未だに弓やボウガンで狩りをするからだ。
「しかもパーツも壊れてるな。これはパーツの総入れ替え……いや待てよ。どうせなら、俺が改造してもいいんだよな」
ちょっと楽しくなってきた。
俺は依頼人のことなどお構いなしに、猟銃をいじってやろうと思う。
もはや猟銃ではない。完全なスナイパーライフルにしてやる。
「ということで欲しい機構だが……基本は遠距離。どうせなら300メートルは離れたとことから撃ちたいな」
そのためには弾の形状を変えたり大型化が要求される。
しかしその辺りには特に気を遣わない。最初から変形機構は考えていた。
「銃身自体の長さと変更できるようにすればそれだけ質量の軽減と射程距離を誤魔化せる。これで近距離と遠距離の両立ができるはずだ」
まずは銃身と本体の接続部がスライドして伸びるようにした。
これで軽さを生み出すことができる。
「次は弾数だな。どうせなら12発ぐらいは撃てた方がいいだろ」
ちょうど余っていた部分があるので、残弾を溜めて置けるようにした。
さらにこのレバーだ。引いた回数によって中に溜め込む空気圧を変化できるようにすれば、足りない加速力と飛距離が稼げる。
「後はこの謎のパーツ。それから発熱だな。少し穴を空けて肉抜きするとして、熱も逃げるようにするか」
俺は試行錯誤を続ける。
すると次第に楽しくなっていることに気が付いた。
結果、「どうせなら外見も変えるか」ということで、面影が完全になくなってしまう。
「この後ろのレバーを引くと指を当てるようなガラス板が出て来るな。この奥には……ああ、なるほど、コイツは魔力を食って魔弾を生成する装置だな」
初めて見たが面白い仕組みだ。
どうやらレバーを引くとガラス板が出てきて、そこに親指を押し当てると特殊な弾丸を生み出せるらしい。
この生み出した弾丸は魔弾と言って、込めた魔力によって威力や形状が変化する特殊な代物だと俺は記憶している。
「まさか骨董品でもここだけは生きていたんだな。とは言え、排熱処理が行き届いていないで、一発撃ったら白化するけどな」
なるほど。それで銃身が白く溶けていたのか。
俺は白化した原因が閃いて解決した。
「ここも掃除しておいてやるか」
ガラス面は指圧を測る仕組みになっているらしい。
ここまで来たなら磨いてやろうと思い、俺は塗装や研磨をしておいてやった。
「こんなものだろ。意外に楽しかったな」
俺はかつて猟銃だったなにかを修理した。
元の面影は完全になくなっていて、これで満足されるかはわからない。
一応魔弾も常時装填できるようには改造したが、アイツの性格的にどうだろうな。
「そう言えば、アイツの名前を聞いてなかったな」
まあ名前何てどうだっていい。
俺はそう思うと、窓の外を見た。もう朝陽が昇っている。
「マジか。6時間も経っていたんだな。道理で眠いわけだ」
俺は睡魔に襲われた。
流石に今日は1日中寝ておこう。
そう思った俺は作業を終了して寝ることにした。
「ふはぁー。今日はよく眠れるぞー」
そう言ってベッドに入った俺は、アイマスクをして完全に光をシャットアウトした。
作業台の上にはアイツの新しい相棒が置きっぱなしにされていた。
しかし俺には関係ないので、明日にでも渡しに行こうと決めた。
「すぅーはぁーすぅーはぁー」
俺の意識は闇の中に落ちていた。
次に起きた時、また朝陽が昇っていたのは言うまでもない。
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