かつて《剣聖》と呼ばれた社畜、異世界で付与魔法を手に再び《剣聖》へと至る。

水定ゆう

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24話 クーリエは有名人?

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 俺はクーリエに睨まれてしまった。
 もはやそこにラウリィはおらず、クーリエの瞳は、俺を凝視している。
 これがヤンデレという奴なのか。
 ゴクリと喉を唾液が流れると、クーリエは口走った。

「ヒジリ様、私はヒジリ様と出会って、早三年目になります」
「うん、そうだよね」
「覚えていらっきゃるよできたらけっこうです。ですがヒジリ様、私はヒジリ様のメイドとして、これまでこなして参りました」
「うん、ご苦労様」
「ありがとうございます。大半勿体無いお言葉ではありますが、何故に、未だに、私はトゥリーフ家の・・・・・・・メイド長なのでしょう・・・・・・・・・・?」

 冷酷な冷たい視線が俺を捉える。
 眼前にナイフを突き付けられると、当然ビビる。
 何せ言葉でクーリエに勝てる気がしない。
 剣とか魔法とか、そんな次元の話ではなく、社畜として消費されるだけの人生を送って来た俺にとって、修羅場と化したこの状況、覆す手段などある訳なかった。

「落ち着いて、一回冷静になろうよ?」
「私は絶えず冷静でございますが?」
「ですよね。はい、そうですよね……メイド長、嫌?」

 俺はクーリエに訊ねる。
 その際、目を逸らしてしまっていた。
 しかしクーリエは手を出すことはせず、言葉で俺を追い詰める。

「嫌ではありませんが、満足はしていません」
「は、はぁ?」
「私はヒジリ様に助けていただき、ヒジリ様に忠誠を誓っております。それは例え、ヒジリ様が家督を継がなくとも変わりません」
「は、ははははは。そうですか」

 もう如何でも良くなった。
 こうなったらクーリアを止めるのは至難の業。
 俺は笑って誤魔化すと、クーリアのジト目が痛くて仕方がない。

「あ、あの、ヒジリさん。ヒジリさんって、一体何者なんですか?」
「えっ、今この流れでそれを訊くの?」

 絶対にこの瞬間じゃない。
 ラウリィも少し空気を読んで欲しい。
 そう思ったのも束の間、クーリエは嬉しそうな顔をして、ラウリィを見た。

「よくぞ訊いてくださいました。ラウリィさん、従者になったのであれば、覚えておいてください。この方、ヒジリ様は……」
「くたばりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 クーリエが楽しそうに話し出そうとした。
 その瞬間、クーリエにボコされていた男性が目を覚ます。
 いつの間にか腰のベルトからナイフが一本抜け落ちており、代わりに宙に浮かんでいた。

「クーリエ!」
「安心くださいませ、ヒジリ様。見えていますので」

 クーリエの死角からの一撃。
 如何やらこの男性に魔法のようで、ニヤけた笑みを浮かべる。もう勝ちを確信しているようで、甘い、チョコレートよりも甘かった。

「俺の【家系魔法:念力】で死ねぇ!」
「物騒な言葉ですね。止めてくださいますか?」

 クーリエは飛んで来たナイフを前に一切動じない。
 それどころか、ナイフを目前に手をかざすと、何事も無かったかのように、ナイフの動きが止まる。

「は、はぁ!? な、なんで動かないんだ」
風の精霊シルフが貴方のナイフを止めたんです。ですので貴方に勝ち目はありませんよ。はい、この通りです」

 クーリエは男性を前に、ナイフを落として見せる。
 圧倒的な実力差。
 男性はそれを見るや否や恐怖を覚え、クーリエの顔を見ることさえできない。

「ひいいっ!」
「ヒジリ様の前で辞めていただきたいですね。次、なにかあれば命はありませんよ」
「は、はい。はぁはぁはぁはぁ……ああ」

 男性は過呼吸になり、意識を失ってしまう。
 とんでもない精神的ダメージを与えてしまったらしい。
 俺はご愁傷様と手を合わせると、ラウリィが口元に手を当てて驚いていた。

「凄いです」
「クーリエはただのメイドじゃないから」
「あの、ヒジリさん、もしかしてクーリエさんって、クーリエ・L・エレメントさんでしょうか?」
「??」

 俺はポカンとしてしまった。
 クーリエ、L、エレメント? 誰だろう。
 正直、クーリエが何者であるかは、ざっくりとしか知らない。そんな俺だったが、クーリエの顔を窺うと、「はい、そうですが」と言いたそうにしている。

「やっぱりですか!? えっ、凄い、ええ、本人ですか」
「はい、私はクーリエ・L・エレメントです。が、今はただのメイド。ヒジリ様に忠誠を誓う専属メイドに過ぎませんので」
「あ、そこは譲らないんだね」

 クーリエが何者であるのか、まだまだ分からないことだらけだ。
 とは言えラウリィのこと興奮具合。
 相当有名人であることは間違い無く、完全に三年のアドバンテージを上回れた瞬間だった。
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