1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

662.冒険者に絡まれました1

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 いつの間にかルカは取り囲まれていた。
 もちろん悪意がある訳ではない。
 町行く一般人達が興味本位で輪を作り、逃げ道を失っていた。

「俺にぶつかって来やがったんだ。文句は言わせねぇぞ」
「いや、私は避けたんだけどね」
「文句言ってんじゃねぇ!」

 ルカは男性冒険者に絡まれていた。
 何故こんな目に遭わないといけないのか、ルカは自問自答する。

(もしかして、私がそう言う星回り? いや、私は極力最悪を避けるように動いて来た筈。面倒事は先に処理している筈。つまりこれも面倒事? それにしては重なり過ぎていないかな?)

 たった一日で、しかもこれだけ短時間で二度も面倒ごとに巻き込まれた。
 もはや不運と言って差し支えないのだが、ルカは認めない。
 認めても何にもならないからか、ルカはこの面倒事を真っ向から叩きのめすことにした。

「はぁ。面倒だよ」
「テメェ、今溜息付きやがったな!」

 ルカは聞こえる声で溜息を吐露する。
 男性冒険者はルカの杜撰な態度に苛立った。
 如何やらせっかちな性格らしく、ルカの態度一つ一つに難癖を付ける。

「ったく、今冒険者の絶好の狩り場になってるこの島で、時間取らせんじゃねぇぞ」
「それは私も同感だよ」
「テメェは黙ってろ。今俺が話してんだぞ!」

 男性は気性が荒くなり、ルカのことを捲し立てに掛かる。
 もちろんルカは全く聞く耳を持たない。
 むしろ遠吠えの様に聞こえてしまうと、頬を指で撫でる。

「クソが、テメェのその態度が気に食わねぇんだよ!」
「気に食わないなら、どうするの?」
「実力で黙らせてやるよ。ここはテメェの様なガキが来るような場所じゃないってな」

 男性はルカのことをひたすらに煽り続けた。
 そんなものに乗ってやる気はルカには当然ない。
 けれど雑な観衆が、ルカ達を盛り立てる。

「いいぞ、やれ!」
「頑張ってねお嬢さん」
「冒険者のおっさん、負けんなよ!」
「ちゃんと手加減しろよな」
「ダウンツ、目にもの見せてやれよ。そしたら俺らのパーティーに入れてやる」
「怪我だけはしないでね。ねっ」

 様々な声が入り乱れていた。
 ルカのことを応援する人、男性を応援する人、趣味趣向も多種多様。
 完全に見世物にされてしまうと、ルカはげんなりした。

「おいおいどうした? ビビっちまったのか?」
「いや、まあ、そのね……」

 ルカはこの空気が嫌いになりそうだ。
 バカみたいな決闘、否、果し合い。
 勝っても負けても何も生まない争いに幻滅する。

「はぁ。本当にやるんだね?」

 ルカの目がジロッと睨み付けた。
 まごうことなき殺気を浴び、男性は肝が冷える。
 顔色が一瞬で青冷め血の気が引いてしまうと、指先が強張る。
 手にした大剣がプルプル震え出すと、ルカは言葉を失った男性に問い掛けた。

「いいよ。私も相手をしてあげる。大丈夫、殺しはしないからね」

 ルカはニコリと笑って見せた。
 狂気を含んだ絶妙な笑みで、男性は完全に戦意を削がれる。
 戦っても無駄。そう思い知らせると、ルカは実際に体に叩き込むことにした。

「殺してやるだと? 舐めやがって」
「舐めてないよ。威勢を張るだけ」
「ハッタリかよ。面白くねぇな、とっとと終わらせてやるぜ!」

 男性はルカとの距離を一気に詰める。
 駆け出した動きはやや鈍重。
 けれど体の大きさと大剣の分厚さで慄かせると、高速で動いたように錯覚させる。

(上手い技術だね。でもさ……)

 ルカはその点は褒めることにした。
 けれど動きが雑。洗練されていない、野性的な振り方だった。

「おんどりゃぁ!」
「ふん」
「なっ!」

 男性の剣捌きは荒々しかった。
 そのせいか、ルカにはまるで当たる気配がない。
 空ぶった斬撃に合わせるよう、ルカは距離を取る。

「な、なんだと。俺の剣を躱した?」
「そうだね。遅かったから」
「ま、まぐれだ! そう何度も……」
「やってみせてよ。私も手を抜くからさ」

 ルカは得意の挑発をかました。
 男性はルカの言葉に腹を立てると、冷静さを捨てる。
 獣の様に大剣を突き付けると、本気で殺しに掛かった。

「クソッ、ちょこまかと逃げ回りやがって!」
「逃げるよね、普通」
「だったら逃げ道を封じてやるぜ」

 男性は乱暴に剣を振り続けた。
 全部直線的で当たる訳がない。
 もちろん男性の狙いは当てることじゃない。当てることよりもルカのことを追い詰める。
 ただそれだけを優先すると、気が付けばルカは追い詰められていた。
 真後ろに見物に来た一般人が、観衆となっている。
 本当、後半歩下がればルカも観衆に溶け込める程だ。

「どうだ。これで逃げられないだろ」
「ああ……そうだね」

 後ろには観衆の姿もあり、ルカが適当に避ければ、最悪死傷者が出かねない。
 そんなのお構いなしで、男性は大剣を振りかざした。
 もはやルカのことしか見えていない。完全にアウトな領域だ。

「泣いて謝りやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 男性は大剣を勢いよく振り下ろした。
 豪語するだけのことはあり、迫力が備わっている。
 自分よりも劣る冒険者をビビらせるには充分で、モンスター相手にも大抵は効くだろう。
 
けれど例外も存在している。
たとえば自分よりも強者を相対する時だ。
 そう、今男性が相手をしているのは強者。圧倒的な実力を持つルカなのだ。

「ふん」

 カキーン!

 金属同士がぶつかり合う音が響いた。
 空気を叩くと、男性はニヤついていた、勝利を確信していた顔が強張る。
 自分自身が振り下ろした大剣が、何故か当たらなかった。
 エネルギーを全て殺され、時が止まったみたいに動かなくなる。
 体も剣も何もかも、その場で停滞する物体に変わった。

「なるほどね。確かに高を括るだけのことはあるよ」

 ルカは無傷だった。
 傷を負う様な攻撃でも無かったのだが、ルカにはピクリとも響かない。
 代わりに男性のことを褒めると、圧倒的な強者感を出す。

「な、なんだよ、これ。どうなってんだよ」
「どうなっているって、私が受け止めただけだよ?」
「う、受け止めただぁ! 冗談じゃねぇ。剣の刃を受け止めるなんて真似、そう簡単にできる訳ねぇだろ!」

 ルカは大剣を受け止めた。左手の指二本、一指指と中指でだ。
 その指先は金属の様な質感を実現していた。
 まるで剣と剣がぶつかり合った衝撃が音として宙を散開した。

 その技術は創作の中でしかない。今ではそう語られるようなもの。
 けれどとある国、この島にとても馴染みのある島国では今も語られている。

「それはヒノワ・ヒノモトで語られる……」
「白刃取りって奴かな?」

 流石に男性は気が付いたようで、周りが騒めいている。
 そもそもできる人間が少なく、ルカとて最初からできる訳ではなかった。
 できるように練習を繰り返した。素早く指先に魔力を集め、地面にエネルギーを分散する技術。
 もちろんそれだけではなく、指先を一時的に金属の高度と同等にする魔法。それらを工夫し、無詠唱の魔術として披露したのだが、我ながら上手く行ったと思う。

「そうだね。確かに並大抵ではできないかもしれない。でも私はできた。それだけの話だよ?」

 ルカは挑発をした。男性の本質を見極めようとする。
 いつもと姿勢は崩さない。ここで如何出て来るのか。ルカは男性を試す。
 すると男性の顔色が悪くなり、目が泳ぎ始める。
 調子が崩され、予想だにしなかった事態に困惑していた。

「そ、そんなの聞いてねぇよ。くっ、も、もう止めだ!」
「えっ?」

 何だか調子が崩れる。
 ルカは期待したのも束の間、ガッカリしてしまった。
 男性の動きが悪くなり、ルカから距離を取ろうとする。

「くっ、は、離しやがれ!」
「どうして? そっちが仕掛けて来たんだよ」
「くっ、それは……」

 完全に拍子抜けだ。
 ルカは大きな溜息を零してしまいそうになる。
 けれど二回目は流石に止め、代わりに決闘を終わらせることにした。
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