1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

680.密猟者を拘束せよ

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「ぐはっ!」

 ルカの拳がクリンヒットした。
 明らかに魔術師らしくない戦い方だった。

「うっ……がはっ!」
「それっ!」

 四つん這いになる男性冒険者。
 シルドンの仲間の一人で、ルカが顔面を殴り飛ばした。
 あまりの痛みに立っていることさえできなくなると、ルカは追い打ちを仕掛けた。
 爪先で蹴り上げると、口から白い泡を吐き出す。

「ふぅ。これでお終いかな?」

 周囲を見回せば、シルドン達冒険者の姿。
 けれど全員グッタリしている。
 体を強く打ちつけたせいか、もはや戦意の前に、意識が途絶えかけていた。

「あっ……あっ」
「つ、強ぇぇ」
「強すぎるだろ……がはっ!」

 ルカに対して、もはや絶望しかなかった。
 体がバキバキになってしまうと、肺で呼吸が出来ていない。
 もはや息をすることさえ激痛で、圧倒的な実力差を叩き込まれた。

「悪いけど、私は強くないよ。当然のことをしただけ……かな」

 ルカは決して悪気が無かった。
 けれどその言葉の破壊力は、敗れた冒険者には大きな意味を与える。
 “決して勝てない”。ただそれだけの、重たい業が身を焼いた。

「嘘……だろ。クソがっ」

 そんな折、ようやくまともに口を開いたシルドン。
 盾を構えて気絶していたが、流石に起きたらしい。
 もちろん、ルカから浴びた殺気に全身を蝕まれている。
 言葉を交わすだけで実力の差に恐れ慄くも、ルカには関係がない。

「どうする? まだ密猟を続ける?」

 ルカは当然の問い掛けをした。
 けれど、これではシルドン達を見下しているようだった。
 ルカは気分的にはあまりよくないので、頬を掻くも、シルドンは何とか立ち上がる。

「俺達は冒険者だ。冒険者のルールに従う」
「冒険者のルールって、密猟は問題になってるよ?」
「知るか。そんな話、ギルドマスターの爺からも聞いてねぇよ!」

 冒険者は冒険者のルールに従う。郷に入っては郷に従えと同じ。
 けれど冒険者のルールと言うより、密猟が禁止されているのは世界のルールだ。
 ギルドマスターである、ゴードもそれが承知していた。筈だが、シルドン達には伝わっていなかったらしい。

(あー、これ面倒な奴だ)

 ルカは素直にそう思った。
 一つ一つを説明していると時間が掛かる。
 その間に反撃を喰らうかもしれない。ましてやより一層敵意を剥き出しにするかもしれない。ルカは首を捻ると、一度ストレートに答える。

「知らないのも無理はないよ。君達が冒険者ギルドを後にしてから判ったことだからね」
「はっ? そんなのますます信じられるかよ」
「そんなこと言われてもな……」

 知らないのも無理はない話だ。
 ゴードやリュマミールが知ったのもつい先程。
 それ以前に冒険者ギルドを発ったとなれば信じられる証拠もない。
 ルカは困ってしまうと、腕を組んだ。
 
「それじゃあ、どうしたら……はっ?」

 ルカは逆にシルドンに訊ねた。
 如何したら信じてくれるのか問うのだ。
 けれどシルドンに視線を向けた瞬間、剣を手にし、ルカに襲い掛かって来た。

「さっきからうるせぇんだよ。俺達には金と地位がいる。邪魔してんじゃねぇよ」

 シルドンの本音が爆発した。
 鈍い鉛色の剣を突き立てると、ルカの腹を突き刺した。
 盾を捨て、筋骨隆々な肉体を引っ提げ、突撃したのだ。

「そっか……そうなんだ」
「……あっ……」

 シルドンは驚いていた。何を隠そう、ルカが平然としているからだ。
 それもその筈、シルドンは確かにルカの腹を貫いた。
 剣でグサリと刺し、赤い血が流れて……いなかった。
 想像の真逆のことが起こると、冷静さを失い、混乱してしまう。

「奇襲ね……面白いけど、つまらないな」

 ルカは剣なんて刺さっていなかった。
 そもそも見えていた攻撃を受ける訳がない。
 最初から避けつもりで、半歩、剣が突き刺さる瞬間に身を逸らしていた。

 おかげで傷一つ付いていない。
 寧ろシルドンのマヌケ顔が見られただけよしとする。
 この時点で奇襲ではないのだが、それもよしとした。

「クッ。何処まで、俺達を愚弄する気だ。俺達はAランク冒険者だぞ!」
「知らないよ、そんなの」

 否、ルカは知っている。何故ならBランクのジョーグと戦ったから。
 それにしては……言わないでおこう。
 シルドン達の名誉のために目を伏せると、ルカは軽くチョップした。

「はい、もうお終い」
「がっ……あっ……あっ」

 ルカが軽く頭にチョップをした。
 するとパカンと頭がスイカのように割れた。
 中から大量の血が噴き出ると、意識を失って倒れる。
 
「ヤバッ。軽くやったつもりなんだけどな」

 昔ならこんなことは無かった。ルカは以前にも増して力が付いている。
 そのせいか、加減を間違えてしまったらしい。
 急いで治療すると、証拠隠滅を図った。

「これでよし。で、四人はどうしたら……」

 ルカは計四人の冒険者を楽々撃破した。
 冒険者の面子は丸潰れだろうが、そんなこと知らない。
 泣き崩れた冒険者達を視界に収めると、ルカは亜空間を展開した。
 とりあえず縛って、この場所に放置する。

「赤斜まで戻るの面倒だから、ここに放置しよう」

 まさかの放置プレイを敢行した。
 あまりにも危険。ここはれっきとしたダンジョンだ。
 ボロボロになったシルドン達に試練を与えると、ルカは全員縛り上げ、近くの樹の幹に括り付けた。

「ふぅ。面倒事を増やさないで欲しいな、全く」

 ルカは悪態を付いた。
 シルドン達はもはや身動き一つ取れず、自力での脱出は不可能に近い。
 後はルカが赤斜の冒険者ギルドに報告するか否かの話で、命の手綱を握った。

「さてと、これから……どうしようかな」

 ルカは踵を返した。視線の先を赤斜山に向ける。
 この先にはより強力なモンスターが生息している筈。
 恐らくシルドン達の腕では無理だ。
 ルカはそう悟ると、より一層森の先、山の奥地が楽しみになった。
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