1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

693.マグマ石

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 マグマ石。それは魔石と呼ばれる、魔力を持った石である。
 とは言え、魔結晶や露結晶のような、魔術の名残がある訳ではない。
 単に魔力を孕んでいる。ただそれだけの鉱石だった。

「予想通りだね。マグマ石、あると思ったよ」

 赤々と輝きを放つ石、それがマグマ石だ。
 ルビーのような煌めきと光沢感を持っている一方、純粋な炎に近い熱を放出している。
 鉱石内部に蓄えられた魔力を消費し、まるで天然のマグマのように、その存在感を放っている。まさしく、マグマ石という名前に相応しい魔石だった。

「とは言え、このサイズだったとはね、知らなかったよ」

 けれど一つだけ、ルカの想像を超えていたものがある。
 それは、見つけたマグマ石の大きさだ。

 ルカとしてみれば、頭の中で軽く想像していたつもりだ。
 もちろん、それほど大きくはない。
 所詮は手のひらサイズだと勝手に思い込んでいた。

「手のひらサイズなら、簡単に処理できたんだけどね……」

 水中で溜息を付く。コポコポ小さな気泡が浮かぶ。
 こうなってしまうのも無理はない。
 何せ、目の前のマグマ石の大きさは、優に一メートルを超えていた。

「まさか、一メートル越えのマグマ石と対面できるなんてね。夢にも思っていなかったよ」

 流石にルカとしても、一メートルを超えるマグマ石は見たことが無い。
 この千年間で、どれだけのマグマが固まったのか。
 そもそも、マグマ石はマグマを元とする魔石だ。これだけのサイズになると、魔力もそうだが、大量のマグマが必要になる。

「マグマの供給先は分かっている……けどさ」

 もちろん、マグマの供給先は知っている。
 この島には、赤斜山がある。今でも活動を続けている火山だ。
 活火山を目の前にすれば、大抵の場合一定の周期で噴火が起こる。
 そうして流れ出たマグマが、池の水によって冷えて固まる。
 その結果生まれた物であり、内包している魔力も、土地柄が関係していれば、決して不思議な話でもない。

「流石にこのサイズは無いよね?」

 ルカが真面目に返答するレベルだった。
 それだけ異常なことが起こっている。
 この事実を知らない魔術師ならば分かるが、流石のルカは知識を有していた。
 だからこそ、如何したらいいのか悩む。

「どうしようか。壊すのは……色々とマズいかな」

 目の前のマグマ石を壊してしまえば万事解決。
 そんな甘い話で済めばいいのだが、流石にそうも行かない。
 何せ、この辺り一帯の魔力を活性化させているのは、十中八九このマグマ石のおかげだ。
 密猟者が頻繁に出入りをし、密猟を盛んに行っているとはいえ、土地を豊かに実らせていることは間違いない。つまりは、マグマ石自体に罪は無い。

「壊してしまうのはよくないね。愚かな行為だよ」

 もしマグマ石を壊して解決すると思い込んでいる人間が居るとすれば、それはあまりにも杜撰な発想だ。バカ気ていると言ってもいい。
 単に愚かな行為で片付けることも可能だが、取り返しのつかないことではある。
 少なくとも、この池は本来の形を取り戻し、温泉ではなくなってしまう。
 それはルカの個人的な意見だが、絶対に阻止したい。

「私の欲が出ているね。まぁ、それはいいことだよ」

 自分自身のことを、ルカは棚に上げていた。
 欲望を放出すると、内心決めたことがある。
 目の前のマグマ石。壊すのではなく、魔力を抑え込めるようにしようと、ある種の細工を施すことにした。

「決めた。幸いにも、これは魔石だ。私の魔法で上書きができる」

 ルカは伊達に千年間も魔法使いをやっていない。
 慣れた作業を見せると、マグマ石に手を触れた。
 猛烈に熱いが気にも留めない。これ程までに、実力以前の壁が存在していた。

「魔石なら、書き込んでしまえばいい。魔力を無駄に放出させて、熱エネルギーに変換しない方法をね」

 人差し指でマグマ石の表面を軽く撫でた。
 すると虹色の線がマグマ石の表面に刻まれていく。
 一体何を描くのか。傍から見ればそうだろうが、完全に古代文字だった。

「古代文字なら、大抵の人間は解読できない。理に適っているよ」

 わざわざ古代文字にする必要は無い。
 けれどルカは敢えて、古代文字を選んで刻み付ける。
 理由は単純で、知識が無ければ解けないようにしておかなければ、下手に興味を持った人間に壊される可能性があったからで、ルカは何も間違ってはいなかった。

「後はこのまま魔力を散らせば……」

 ルカは古代文字を刻み終えた。
 両手を合わせ、不意に魔法を唱える。
 あまり使ったことが無いが、上手く行って欲しいと願う。

「《リリース》」

 ルカは魔法を唱えた。
 マグマ石に刻み付けた古代文字が活性化される。
 するとマグマ石の中に溜まっていた大量の魔力がほんの少しずつ放出され、露出する魔力量のが格段に減った。

「よし、とりあえず、これで一安心かな」

 ルカは自分ができることはとりあえずやり遂げた。
 少なからず、これにより赤壱島でハチャメチャに巻き起こっていた魔力の暴走は止まる筈。
 もしも止まってくれなければまた別の原因を探すことになる。
 ルカはそんな面倒巻き込まれたくないと思いつつ、水面に浮上することにした。
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