69 / 733
魔術運動会編1
69.静かな居城
しおりを挟む
居城の中はあまりに静かだった
気持ち悪いと思うほどで、道中では襲って来た二人だけだった。
難なく倒したルカは、居城の中を散策する。
「居城の中がここまで静かなことがあるのかな。ナタリーの話だと、黒の狩猟者は確か三十人弱の大所帯のはずなんだけど。まさか、デマ情報?」
いや、ナタリーに限ってそれはない。
色々考えた挙句、ルカはこんな結論を浮かべた。
「おそらく、サブリーダー? が反乱でも起こしたんだろうけど、やっぱり一枚岩じゃなかったんだ。こういう組織は、一枚が剥がれれば、雪崩式に剥がれていくから、中を潰すのが早いんだろうけど、弱ったなー。多分、血の気が多いよね」
そうなると、戦闘になりかねない。
もしも相手が魔術を使うなら、《アンチスペル》で止められる。それ以外なら肉弾戦が筆頭格。だけど、もしもそれ以外だったら、ルカは使わざるおえないかもしれない。
しかし、大人げなかった。
「でも仕方ないんだよね。それが、命懸けの戦闘なんだから。それに、そう立ち回らなければ、いいってだけ? 何だろ、この床に落ちた赤い液体。うん、血だね」
ルカはしゃがみ込んで、床一面に散らばる血液を見つけてしまった。
カなら新しい。
まだ赤々としていて、ルカは血の痕を辿ることにした。
すると、見えてきたのは、何やら物騒な光景だった。
「ん? あれは……」
見えてきたのは、対立する二組だった。
一方は柔らかい金色の髪をした少年。青い眼が、聡明そうで、その後ろには誰もいない。
しかし対するは赤い髪のいかにも喧嘩っ早そうな男だった。後ろには、取り巻きがたくさんいる。
だけど気になるのは、転がっている人の数だ。少年の方に頭を向けて倒れている。何やら、怪しかった。
「如何したよ、フィラ。情けない姿だな」
「そんなことはいいよ、マヒート。それより、如何してこんなことをしたんだ。あれほど、悪人以外は殺すなって言ってたよね」
「それはお前の考えだろ。俺に指示を出すな、兄弟」
「だったらもう容赦はしないよ。でも、僕を殺したっていいことはないはずだけどね」
「それはお前の頭が悪いのか? 少し考えたらわかるだろ」
「わかるけど、考えたくはないかな」
「そうかよ。だったら、大人しく俺の踏み台になってもらおうか!」
そう言って、マヒートは手のひらを燃やした。
あまりの熱量だ。後ろの取り巻きたちも、身を退いた。
「そっちがそう来るなら、僕もやるしかないね。蒸発の魔術師として、君を倒す」
「やってみろよ、兄弟。この俺は、熱量の魔術師だ!」
お互いの手のひらから魔力が高まる。
それだけではない。全身から、凄まじい量の魔力が込み上げると、お互いの炎がぶつかり合った。
一つは、単純な火力。しかしもう一人は絡めてのような、炭酸のようにしゅわしゅわしていた。
「マズいかな。これは……」
それを見ていたルカは危険を感じた。
そこで悪意の塊であり、言動からも悪人だと判断した、赤髪の男を狙った。
手のひらを向け、短く唱える。
「《アンチスペル》」
《アンチスペル》は使えた。
相手はおそらく固有魔術を使っていない。出し惜しみではなく、特に理由もなく単純な火力勝負に出たんだ。
固有魔術なら、流石にこの魔術、《アンチスペル》だと止めることはできないんだ。
「な、なんだ!」
「ま、魔術が解けた?」
二人は目を丸くする。
しかしその隙にルカは取り巻きの男達の意識を刈り取ることに成功すると、マヒートと呼ばれていた赤い髪の男の首筋に、手のひらの手刀を当てた。
「動かない方がいいよ。お前の負けだから」
「な、なんだお前は……」
「お前たちを捕まえに来た、魔術師かな。と言うことで、大人しく落ちてね」
ルカはマヒートの意識を刈り取った。
残ったフィラは身構えたままで、ルカを睨んでいたが、既に勝ち目はないと、異様な魔術に怯えていた。悪意のない、単純なものではない、複雑な魔力だったからだ。
気持ち悪いと思うほどで、道中では襲って来た二人だけだった。
難なく倒したルカは、居城の中を散策する。
「居城の中がここまで静かなことがあるのかな。ナタリーの話だと、黒の狩猟者は確か三十人弱の大所帯のはずなんだけど。まさか、デマ情報?」
いや、ナタリーに限ってそれはない。
色々考えた挙句、ルカはこんな結論を浮かべた。
「おそらく、サブリーダー? が反乱でも起こしたんだろうけど、やっぱり一枚岩じゃなかったんだ。こういう組織は、一枚が剥がれれば、雪崩式に剥がれていくから、中を潰すのが早いんだろうけど、弱ったなー。多分、血の気が多いよね」
そうなると、戦闘になりかねない。
もしも相手が魔術を使うなら、《アンチスペル》で止められる。それ以外なら肉弾戦が筆頭格。だけど、もしもそれ以外だったら、ルカは使わざるおえないかもしれない。
しかし、大人げなかった。
「でも仕方ないんだよね。それが、命懸けの戦闘なんだから。それに、そう立ち回らなければ、いいってだけ? 何だろ、この床に落ちた赤い液体。うん、血だね」
ルカはしゃがみ込んで、床一面に散らばる血液を見つけてしまった。
カなら新しい。
まだ赤々としていて、ルカは血の痕を辿ることにした。
すると、見えてきたのは、何やら物騒な光景だった。
「ん? あれは……」
見えてきたのは、対立する二組だった。
一方は柔らかい金色の髪をした少年。青い眼が、聡明そうで、その後ろには誰もいない。
しかし対するは赤い髪のいかにも喧嘩っ早そうな男だった。後ろには、取り巻きがたくさんいる。
だけど気になるのは、転がっている人の数だ。少年の方に頭を向けて倒れている。何やら、怪しかった。
「如何したよ、フィラ。情けない姿だな」
「そんなことはいいよ、マヒート。それより、如何してこんなことをしたんだ。あれほど、悪人以外は殺すなって言ってたよね」
「それはお前の考えだろ。俺に指示を出すな、兄弟」
「だったらもう容赦はしないよ。でも、僕を殺したっていいことはないはずだけどね」
「それはお前の頭が悪いのか? 少し考えたらわかるだろ」
「わかるけど、考えたくはないかな」
「そうかよ。だったら、大人しく俺の踏み台になってもらおうか!」
そう言って、マヒートは手のひらを燃やした。
あまりの熱量だ。後ろの取り巻きたちも、身を退いた。
「そっちがそう来るなら、僕もやるしかないね。蒸発の魔術師として、君を倒す」
「やってみろよ、兄弟。この俺は、熱量の魔術師だ!」
お互いの手のひらから魔力が高まる。
それだけではない。全身から、凄まじい量の魔力が込み上げると、お互いの炎がぶつかり合った。
一つは、単純な火力。しかしもう一人は絡めてのような、炭酸のようにしゅわしゅわしていた。
「マズいかな。これは……」
それを見ていたルカは危険を感じた。
そこで悪意の塊であり、言動からも悪人だと判断した、赤髪の男を狙った。
手のひらを向け、短く唱える。
「《アンチスペル》」
《アンチスペル》は使えた。
相手はおそらく固有魔術を使っていない。出し惜しみではなく、特に理由もなく単純な火力勝負に出たんだ。
固有魔術なら、流石にこの魔術、《アンチスペル》だと止めることはできないんだ。
「な、なんだ!」
「ま、魔術が解けた?」
二人は目を丸くする。
しかしその隙にルカは取り巻きの男達の意識を刈り取ることに成功すると、マヒートと呼ばれていた赤い髪の男の首筋に、手のひらの手刀を当てた。
「動かない方がいいよ。お前の負けだから」
「な、なんだお前は……」
「お前たちを捕まえに来た、魔術師かな。と言うことで、大人しく落ちてね」
ルカはマヒートの意識を刈り取った。
残ったフィラは身構えたままで、ルカを睨んでいたが、既に勝ち目はないと、異様な魔術に怯えていた。悪意のない、単純なものではない、複雑な魔力だったからだ。
30
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です
宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。
若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。
若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。
王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。
そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。
これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。
国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。
男爵令嬢の教育はいかに!
中世ヨーロッパ風のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる