1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

文字の大きさ
93 / 733
魔術運動会編1

93.ライラックの糸④

しおりを挟む
  男は女の子を人質に取った。
 ライラックは動けなくなる。
 それを見越した男は、ニヤついていた。

「ふはぁはぁ。なんだ、ガキを一人人質に取られただけで、動かなくなるのか」
「あのさー、そういうこと本当やめた方がいいよ」
「なんだ、この期に及んで説教か?」
「いやー、そうじゃなくてさー」

 ライラックは表情を歪ませる。
 それは単純な理由だった。
 男は余裕な笑みを浮かべていたが、ライラックから放たれたのは、意外性のある一言。

「人質取ってる時点で負けなんだよねー」

 ライラックの指先が何かを捉えた。
 男はポカンとした顔をする。
 すると突然、嗚咽交じりになって、口から吐血した。

「ぶはぁっ!」
「はい、おしまーい」

 ライラックは男の口から何かを釣り上げた。
 完全に男を殺す気に来ているが、そのことにまだ気づいていない。

「あれ? つっかえてるのかな?」

 ライラックは糸を引っ張った。
 もちろん人差し指を動かしている。
 男は吐血を続け、何が起きたのかわかっていなかった。

「な、何が起きているんだ」
「言ったでしょー、最初の段階で勝負は決まってたんだよ」
「これは糸? 一体何処から、体内に」
「もちろん、耳の中から。最初の初激、覚えてるでしょー」

 ライラックが最初にぶつけた攻撃。
 左耳を怪我したその瞬間、噴き出た血管から糸を侵入させていた。
 そしてその糸は血管の長い旅を終え、最終的な目的地、心臓を捉えていた。

「心臓を拘束したとでも言うのか」
「そうだよ。だから、私の勝ちなんだー」
「くそがぁ!」

 男は、飄々とした態度で、最初から嘲笑っていたライラックを睨みつけた。
 しかしすでに勝機はなく、魔力も途切れていた。
 こうなった以上、反撃の余地はない。

「殺せ」
「ん? うーん、それはできないかなー」
「何故だ」
「うーん、殺したら情報が吐かせられないし、それにもっといたぶって殺した方が、自分が他人に与えてきた痛みは分かるでしょー」

 ライラックはそう答えた。
 そして耳打ちもする。それは人質作戦の有無だった。

「一番のミスは、私に人質なんて野暮な真似を見せたこと。人質は目の前で撮っても意味がない。やるならそれを前提にした策をしないと、効力は薄いんだよ?」
「わかった口を利くな」
「そうだねー。でも私なら、人質を取った時点で、こうするけどね」

 と言ってジェスチャーをしてみせた。
 男にはその悍ましい考えが手に取るように分かった。
 心臓の負荷が重症化し、吐血の量が多くなる。

「あちゃぁー、これは流石にやり過ぎたかなー」

 男の意識は完全に抜けていた。
 顔が真っ白だった。如何やら血を吐きすぎて、体内に残る残量が大幅に減ったらしい。
 もちろん、糸をストロー状にして、外に出してたからなんだけどね。

「さてと、この男は後でどうにでもするとして。大丈夫、怪我とかしてない?」
「う、うん」
「そっか、よかったぁー」

 ライラックは小さな女の子の目線になった。
 本当に小さい。目からは涙がこぼれている。よっぽど怖かったらしい。
 静かに、頭を撫でてあげた。

「最後まで泣かなかったのは、偉いね。でももう大丈夫だよー。えーっと、はいこれあげる」

 ライラックはポケットから飴を取り出した。
 故郷の梅干しの味がする、少し酸っぱい子供受けゼロの品だった。
 困惑した顔で受け取り、舐めた瞬間、口を酸っぱくして尖らせた。

「す、酸っぱい……」
「あははー。そうでしょー、塩分濃いんだよねー」

 ライラックは笑っていた。
 しかし、笑顔は絶やさなかった。こういう時、一番の不安は笑顔を欠かすこと。
 それだけじゃない。この町は殺伐とした空気が滲み出ている。それとは格別下、全く新しい風が吹いている。だからこそ、この町が好きなんだ。

「それじゃあお母さんのとこに戻って、きっと心配してるから」

 ライラックはそう言って送り出した。
 お母さんに抱きつく少女の姿。
 なんだかちょっと切なくて、お辞儀をされたことで、より一層歯痒くなったライラックだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

処理中です...