180 / 733
悪魔教会編
179.潜入調査
しおりを挟む
「おい、新入り。きびきび歩け。ここは我らが母なる聖地。新たな歴史を告げる由緒正しき門出の場なのだぞ」
「「はい」」
白装束に身を包み、立派な教会を先導して歩く男がいた。
その後ろを少し背の低い2人組が付いて来ている。
覇気はなく、ただそこにいるだけの屍のような雰囲気があるが、その裏ではこの教会に来られたことにホッとしている。
素振りには出さないが胸を撫で下ろしていた。
「ところでお前たち2人はここに何しに来た」
「新しい門出を祝うためです」
「歴史的瞬間に立ち会うためです」
2人は似たようなことを言った。
すると先導する白装束の男は不敵に笑みを浮かべる。
まるで同志を歓迎するような気持ちを抱いていた。
「そうか。お前たちも苦労してきたんだな」
「「はい。それはもう」」
「そうかそうか。俺も同じだ。この姿のせいで俺の故郷では昔から差別があった」
「そうだったんですか」
「私たちはこの国の人間でしたので差別のようなものは受けてきませんでした」
「お前たちはこの国の人間か。確かにスカーレット王国は人種差別のない良い国だな。とは言え、そう上手く行かないのが世の中だ」
「はい。身に染みています」
「心得ています」
「そうか。そうかそうか……」
男は同情を誘うような声掛けに感動していた。
涙は出ていないが、心は感涙も滝壺の中に浸かっていた。
とは言え、彼女たち新入りには何も響いていない。
そもそもの話、同情など鼻っからしていないのだから。
『無事に潜入で来たね、ライ』
『でもここからだよー。バレないようにしないとねー』
2人の少女はアイコンタクト片手間にお互いの意思疎通をかわしていた。
どうしてこうなったのか。それは今から数日前に遡る——
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
古い教会の中。ルカの提案に真っ先に反対したのは、ライラックの親友のシルヴィアだった。
「何言ってるのよルカ! そんなの危険すぎるわ」
「だろうね。だけどやるしかないでしょ」
ルカは淡白な回答を返した。
とは言えこのままでは何も情報が出てこない。もっと核心的なことを掴まなければ国は動いてはくれない。
ダリアの口添えで女王陛下は動いてくれるかもしれないが、そうなれば異変を真っ先に察知した連中が何をするかわからない。
そのため無暗な行動は禁物になり、動きが制限されてしまう。
その状況を打破する手段の一つとして一番簡単な作戦を言ってみたまでに過ぎない。
それがルカなりの判断だった。
「別にこの作戦を押すわけじゃないよ。もっと安全な作戦があるのなら、そっちに越したことはない」
「そんなの急に言われても……」
「じゃあさー、尋問でもしてみるー?」
「尋問ですか!」
「そうそう。敵の人間を少しずつ捕らえて尋問するのー。爪とか剥がしたりしてさー」
「それは拷問だよ、ライ」
「あれー、そうだっけー」
「流石にないわね。そんな非人道的な真似」
非人道的。誰に対して言っているのか。
ルカとライラック。それからブルースターの3人はシルヴィアの発言に苦言を呈する。
とは言え気が付いていないのならそれでいい。ここで発狂されても面倒なだけだ。
そこで話の振り口をダリアに委ねてみた。
「ダリアはどう?」
「私ですか! そ、そうですね……」
突然話を振られてしまい、ダリアは困惑する。
焦りの色は額から流れる汗でわかるが、この限られた情報戦の中では強硬手段も手段の一つと割切ってみせる。
「私はルカさんの作戦に賛成です。ですが一つだけ納得がいきません」
「納得? 何かな」
「どうしてライラックさんなのでしょうか? それにルカさんだって」
「それは……まあ一番リスクが少ないからかな」
「そうだねー。この中なら最適解かなー。正直、ルカも要らないけどね」
まさかライラックの方から切り離されるとは思ってもみなかった。
ルカは相当の自信をライラックから感じ取り、火花を散らすことなくその理由を問うた。
「よっぽど自信があるんだね。根拠とかある?」
「潜入に関して私より得意な人いないでしょ」
まさか直球の答えだった。
ルカもさることながらブルースターでさえ驚愕な表情を抱く。
とは言え、シルヴィアだけは長年の仲故にこうなることを予感していた。
溜息交じりにやれやれと額に手を当てた。お手上げみたいだ。
「潜入調査なんて燃える作戦。私やりたいなー」
「捕まった時のリスクもあるんだよ。どうしてそんな……」
「何言ってるのさ。。捕まるなんてことないよ」
「はっ?」
ルカは呆気に取られた。
ライラックの表情が真顔になっていて、空気が一変する。
強烈な殺気と冷気に襲われ、身震いしそうになる。肌感が恐ろしい。
とは言えライラックは一言添えた。
「捕まったら、全員その場で殺せばいいんだよ」
あまりに辛辣すぎる凶器をはらんだ言葉に、全員凍り付いてしまった。
「「はい」」
白装束に身を包み、立派な教会を先導して歩く男がいた。
その後ろを少し背の低い2人組が付いて来ている。
覇気はなく、ただそこにいるだけの屍のような雰囲気があるが、その裏ではこの教会に来られたことにホッとしている。
素振りには出さないが胸を撫で下ろしていた。
「ところでお前たち2人はここに何しに来た」
「新しい門出を祝うためです」
「歴史的瞬間に立ち会うためです」
2人は似たようなことを言った。
すると先導する白装束の男は不敵に笑みを浮かべる。
まるで同志を歓迎するような気持ちを抱いていた。
「そうか。お前たちも苦労してきたんだな」
「「はい。それはもう」」
「そうかそうか。俺も同じだ。この姿のせいで俺の故郷では昔から差別があった」
「そうだったんですか」
「私たちはこの国の人間でしたので差別のようなものは受けてきませんでした」
「お前たちはこの国の人間か。確かにスカーレット王国は人種差別のない良い国だな。とは言え、そう上手く行かないのが世の中だ」
「はい。身に染みています」
「心得ています」
「そうか。そうかそうか……」
男は同情を誘うような声掛けに感動していた。
涙は出ていないが、心は感涙も滝壺の中に浸かっていた。
とは言え、彼女たち新入りには何も響いていない。
そもそもの話、同情など鼻っからしていないのだから。
『無事に潜入で来たね、ライ』
『でもここからだよー。バレないようにしないとねー』
2人の少女はアイコンタクト片手間にお互いの意思疎通をかわしていた。
どうしてこうなったのか。それは今から数日前に遡る——
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
古い教会の中。ルカの提案に真っ先に反対したのは、ライラックの親友のシルヴィアだった。
「何言ってるのよルカ! そんなの危険すぎるわ」
「だろうね。だけどやるしかないでしょ」
ルカは淡白な回答を返した。
とは言えこのままでは何も情報が出てこない。もっと核心的なことを掴まなければ国は動いてはくれない。
ダリアの口添えで女王陛下は動いてくれるかもしれないが、そうなれば異変を真っ先に察知した連中が何をするかわからない。
そのため無暗な行動は禁物になり、動きが制限されてしまう。
その状況を打破する手段の一つとして一番簡単な作戦を言ってみたまでに過ぎない。
それがルカなりの判断だった。
「別にこの作戦を押すわけじゃないよ。もっと安全な作戦があるのなら、そっちに越したことはない」
「そんなの急に言われても……」
「じゃあさー、尋問でもしてみるー?」
「尋問ですか!」
「そうそう。敵の人間を少しずつ捕らえて尋問するのー。爪とか剥がしたりしてさー」
「それは拷問だよ、ライ」
「あれー、そうだっけー」
「流石にないわね。そんな非人道的な真似」
非人道的。誰に対して言っているのか。
ルカとライラック。それからブルースターの3人はシルヴィアの発言に苦言を呈する。
とは言え気が付いていないのならそれでいい。ここで発狂されても面倒なだけだ。
そこで話の振り口をダリアに委ねてみた。
「ダリアはどう?」
「私ですか! そ、そうですね……」
突然話を振られてしまい、ダリアは困惑する。
焦りの色は額から流れる汗でわかるが、この限られた情報戦の中では強硬手段も手段の一つと割切ってみせる。
「私はルカさんの作戦に賛成です。ですが一つだけ納得がいきません」
「納得? 何かな」
「どうしてライラックさんなのでしょうか? それにルカさんだって」
「それは……まあ一番リスクが少ないからかな」
「そうだねー。この中なら最適解かなー。正直、ルカも要らないけどね」
まさかライラックの方から切り離されるとは思ってもみなかった。
ルカは相当の自信をライラックから感じ取り、火花を散らすことなくその理由を問うた。
「よっぽど自信があるんだね。根拠とかある?」
「潜入に関して私より得意な人いないでしょ」
まさか直球の答えだった。
ルカもさることながらブルースターでさえ驚愕な表情を抱く。
とは言え、シルヴィアだけは長年の仲故にこうなることを予感していた。
溜息交じりにやれやれと額に手を当てた。お手上げみたいだ。
「潜入調査なんて燃える作戦。私やりたいなー」
「捕まった時のリスクもあるんだよ。どうしてそんな……」
「何言ってるのさ。。捕まるなんてことないよ」
「はっ?」
ルカは呆気に取られた。
ライラックの表情が真顔になっていて、空気が一変する。
強烈な殺気と冷気に襲われ、身震いしそうになる。肌感が恐ろしい。
とは言えライラックは一言添えた。
「捕まったら、全員その場で殺せばいいんだよ」
あまりに辛辣すぎる凶器をはらんだ言葉に、全員凍り付いてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる