1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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悪魔教会編

179.潜入調査

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「おい、新入り。きびきび歩け。ここは我らが母なる聖地。新たな歴史を告げる由緒正しき門出の場なのだぞ」
「「はい」」

 白装束に身を包み、立派な教会を先導して歩く男がいた。
 その後ろを少し背の低い2人組が付いて来ている。
 覇気はなく、ただそこにいるだけの屍のような雰囲気があるが、その裏ではこの教会に来られたことにホッとしている。
 素振りには出さないが胸を撫で下ろしていた。

「ところでお前たち2人はここに何しに来た」
「新しい門出を祝うためです」
「歴史的瞬間に立ち会うためです」

 2人は似たようなことを言った。
 すると先導する白装束の男は不敵に笑みを浮かべる。
 まるで同志を歓迎するような気持ちを抱いていた。

「そうか。お前たちも苦労してきたんだな」
「「はい。それはもう」」
「そうかそうか。俺も同じだ。この姿のせいで俺の故郷では昔から差別があった」
「そうだったんですか」
「私たちはこの国の人間でしたので差別のようなものは受けてきませんでした」
「お前たちはこの国の人間か。確かにスカーレット王国は人種差別のない良い国だな。とは言え、そう上手く行かないのが世の中だ」
「はい。身に染みています」
「心得ています」
「そうか。そうかそうか……」

 男は同情を誘うような声掛けに感動していた。
 涙は出ていないが、心は感涙も滝壺の中に浸かっていた。
 とは言え、彼女たち新入りには何も響いていない。
 そもそもの話、同情など鼻っからしていないのだから。

『無事に潜入で来たね、ライ』
『でもここからだよー。バレないようにしないとねー』

 2人の少女はアイコンタクト片手間にお互いの意思疎通をかわしていた。
 どうしてこうなったのか。それは今から数日前に遡る——

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 古い教会の中。ルカの提案に真っ先に反対したのは、ライラックの親友のシルヴィアだった。

「何言ってるのよルカ! そんなの危険すぎるわ」
「だろうね。だけどやるしかないでしょ」

 ルカは淡白な回答を返した。
 とは言えこのままでは何も情報が出てこない。もっと核心的なことを掴まなければ国は動いてはくれない。
 ダリアの口添えで女王陛下は動いてくれるかもしれないが、そうなれば異変を真っ先に察知した連中が何をするかわからない。
 そのため無暗な行動は禁物になり、動きが制限されてしまう。
 その状況を打破する手段の一つとして一番簡単な作戦を言ってみたまでに過ぎない。
 それがルカなりの判断だった。

「別にこの作戦を押すわけじゃないよ。もっと安全な作戦があるのなら、そっちに越したことはない」
「そんなの急に言われても……」
「じゃあさー、尋問でもしてみるー?」
「尋問ですか!」
「そうそう。敵の人間を少しずつ捕らえて尋問するのー。爪とか剥がしたりしてさー」
「それは拷問だよ、ライ」
「あれー、そうだっけー」
「流石にないわね。そんな非人道的な真似」

 非人道的。誰に対して言っているのか。
 ルカとライラック。それからブルースターの3人はシルヴィアの発言に苦言を呈する。
 とは言え気が付いていないのならそれでいい。ここで発狂されても面倒なだけだ。
 そこで話の振り口をダリアに委ねてみた。

「ダリアはどう?」
「私ですか! そ、そうですね……」

 突然話を振られてしまい、ダリアは困惑する。
 焦りの色は額から流れる汗でわかるが、この限られた情報戦の中では強硬手段も手段の一つと割切ってみせる。

「私はルカさんの作戦に賛成です。ですが一つだけ納得がいきません」
「納得? 何かな」
「どうしてライラックさんなのでしょうか? それにルカさんだって」
「それは……まあ一番リスクが少ないからかな」
「そうだねー。この中なら最適解かなー。正直、ルカも要らないけどね」

 まさかライラックの方から切り離されるとは思ってもみなかった。
 ルカは相当の自信をライラックから感じ取り、火花を散らすことなくその理由を問うた。

「よっぽど自信があるんだね。根拠とかある?」
「潜入に関して私より得意な人いないでしょ」

 まさか直球の答えだった。
 ルカもさることながらブルースターでさえ驚愕な表情を抱く。
 とは言え、シルヴィアだけは長年の仲故にこうなることを予感していた。
 溜息交じりにやれやれと額に手を当てた。お手上げみたいだ。

「潜入調査なんて燃える作戦。私やりたいなー」
「捕まった時のリスクもあるんだよ。どうしてそんな……」
「何言ってるのさ。。捕まるなんてことないよ」
「はっ?」

 ルカは呆気に取られた。
 ライラックの表情が真顔になっていて、空気が一変する。
 強烈な殺気と冷気に襲われ、身震いしそうになる。肌感が恐ろしい。
 とは言えライラックは一言添えた。

「捕まったら、全員その場で殺せばいいんだよ」

 あまりに辛辣すぎる凶器をはらんだ言葉に、全員凍り付いてしまった。
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