1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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悪魔教会編

209.ウルフストン②

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 天井に巨大な岩が展開されていた。
 どうやらこれがルカの言っていた落石らしく、ウルフストンが吠えるとゆっくりと落ちてきた。

「これはマズいね。流石にこの大きさとなると、並大抵じゃダメかもね」

 フィラは落石が降ってくる前に対処することにした。
 このままだと自分も潰れてしまうし、刑期が長くなってしまう。
 色々な面で考慮した結果、血飛沫を天井に向かって放った。

「仕方がないね。《蒸発する血飛沫ブラッディ・エヴァー》!」

 フィラの血飛沫が天井に浮かぶ落石に降りかかった。
 落ちてくる前に蒸発してしまえばいい。そう考えたのだが、どうやらウルフストンは知能が高いらしい。
 落石に夢中になっているところに噛みつきに来た。

「危ないな!」

 しかしフィラも余った左手でウルフストンに顔に触れると、綺麗な灰色の体毛が蒸発する。フィラの《蒸発》の魔術は、触れることで最大の力を発揮する。

「僕に触れて来るなんていい度胸だね。でも、流石に甘いよ」

 フィラが触れると体毛がジリジリと音を立てて、少しずつ短くなっていた。
 どうやら燃えだしているようだが、ウルフストンもすぐに対処すると、フィラの左腕に噛みつく。

「痛ったい! この野郎!」

 フィラは噛みつかれた腕で《蒸発》の魔術を掛けると、ウルフストンに恐怖を叩きつけた。
 鋭い剣士がちょっとずつ溶け出していて、体は床に叩きつけられる。
 しかしウルフストンはそれでもフィラの腕から話そうとせず、むしろ深く噛みついた。
 落石もゆっくり落ちてきていて、このまま動かなかったら自分も巻き込まれるかもしれない。

「まさか僕ごとやる気! それは困るな。僕はこんなところで死ねないんだよ」

 柔らかい金髪をかき上げて、汗をウルフストンに飛ばした。
 すると滴った汗がウルフストンの血走った目に入った矢先、飛びあがるみたいにウルフストンは吠えだした。のたうち回っているが、同時にフィラの左腕を放す。自由になった左腕をダラーンとして、フィラは説明口調になった。

「まさか僕の汗まで《蒸発》の魔術が掛かっているとは思わなかったよね? これでその右目の機能は死んだよ」

 フィラはにやりと笑みを浮かべた。
 けれどウルフストンはそれがきっかけで怒りを顕わにし、高らかに吠えだした。
 天井付近でゆっくり停滞していたはずの落石がかなりの速度で落ちてくる。

「まさかここに来て落ちてくる! いいや、落としたって言うのが性格かな」

 フィラだけを巻き込む気だ。明らかに距離を取っていて、自分だけは無事を決め込んでいる。ずる賢いなとフィラは睨み、死なばもろともと機動力を削ぎにかかる。

「だったらせめて君ごと巻き込むよ!」

 フィラは落ちていた天井の破片を掴むと、《蒸発》の魔術を付与する。
 《付与蒸発エンチャント・エヴァー》によって常に溶け出している天井の破片を片手に、ウルフストンに投げつける。
 グラグラと変な挙動で空気を裂くと、ウルフストンは避けようとした。
 しかし、溶けだしていたため破片は実妙な調整で、運よくウルフストンの右前脚に命中する。一瞬だけ動きを止めると、今度はフィラの反撃だった。

「流石に僕は死にたくないからね。死なばもろともは嘘だよ」

 フィラはバックステップでウルフストンと徐々にスピードを増す落石を回避した。
 ただしこれではウルフストンを倒せない。
 そこで考えついたのは、最初に放っておいた《蒸発する血飛沫ブラッディ・エヴァー》。今こそ出番だ。

「《爆裂する血飛沫エクスプロージョン・ブラッド》!」

 指を鳴らすと、最初に放っておいた血飛沫が急に爆発した。
 落石の破片がとてつもないスピードでウルフストンの体に突き刺さる。
 全身に被弾したウルフストンは動かなくなり、フィラも——

「まあ、僕は死なないんだけどね」

 フィラは全身に落石の破片を浴びた。
 痛みが走るかと思えば、服だけを貫いて落石の破片は消滅した。落石の破片は蒸発してしまったようで、跡形もなくきれいさっぱり無くなった。
 そこに残るのはウルフストンの亡骸だった。

「ふぅ、流石に厳しかった。幹部との戦闘の後だと尚更魔力が残ってないね」

 フィラの体がよろめいた。きっと凄い地響きがしたはずで、足元がふらつく。
 教会の中は落石の影響でボロボロになっていて、もはや人間の死体とかも何もかもわからなかった。

「はぁはぁ……ナタリーさんこれでいいんですよね? 僕はやりましたよ。ちゃんと刑期、短くしてくださいね」
『上出来です』
「はっ!?」

 フィラは意識を失いかけたがすぐに復帰した。
 聞こえてきたのはナタリーの声だった。

『貴方は十分やってくれましたよ。後は彼女たちに任せましょう』
「流石に僕の活躍にみんなの命が懸かっているんでね。やるしかないですよ。でも約束は……」
『わかっています』
「本当ですか?」

 フィラは眉根を寄せた。しかし首輪を突かれた状態では、猟犬も飼い犬同然だ。
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