1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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ナタリーの喜ばしい日常

221.「ルカさん、一緒に食事でもいかがですか?」

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 「ルカさん、一緒に食事でもいかがですか?」
 
 校長室で1人、ポーズを決めながら練習に励む姿があった。
 ナタリー・ルラン、彼女はこの学校の校長を務めているエルフである。
 本来高貴な存在であるはずのハイエルフであるはずの彼女だが、千年前から命の恩人でもあるルカにべったりだった。

「こんな感じでしょうか?」
「台詞は良いけど、ポーズがあざといなー」
「そ、そうでしょうか?」

 大きな欠伸をかきながら、同じく千年前の魔法使いであるニッカは退屈気味だった。
 寝ることが本分であるはずの彼女にとって、起きている状態での活動には限界がある。

「あっ、まだ眠らないでくださいね」
「もうー、どうしてナタリーはいつもこうなのかなー?」
「いつもこうとは何がですか?」

 ナタリーは首を捻った。
 自分ではわかっていなう様子だ。
 しかしニッカは長年連れ添って来たので、ナタリーの性格を知っている。
 だけど昔はもっと“孤高”だったはずだ。

「ナタリーはハイエルフだよー? 人間の私やルカにどうしてそこまで入れ込むのさー」
「そんなもの、気心が知れている相手が近くにいないからですよ」
「そう言うものかな? ハルーラとかこの間はワイゼンに会って来たんでしょー?」
「《テレポート》は流石に疲れるんですよ」

 ナタリーはニッカに説明した。
 《テレポート》の魔法は魔力の消費も多い上に、飛べる場所が限られる。
 けれど《テレポート》が使えない人にとっては何も変わらない。

「よくわからないけど、大変なんだねー。ふはぁー、眠い」
「もう! 仕方ありませんね」
「ごめん。私もう限界だから、このソファ借りるねー」

 ニッカはナタリーが了承する前に、ソファに辿り着くと横になっていた。
 あっという間に眠ってしまい、ナタリーは大きな溜息を吐く。
 いつもの事なので、ナタリーは何も気にしなかった。

「いつもの事ですからね。全く、罰が睡眠はどうなんでしょうか?」

 ナタリーはあらかじめ用意しておいた毛布を掛けてあげた。
 ニッカが寝ることは最初から予想していたので、準備がいい。

「とは言っても、聞こえているんでしょうね。ニッカはそういう罪ですから」

 ここから先は隠し事は無しだ。
 全て筒抜けになってしまうので、余計なことは喋らないことにした。

「そうだ。私、こういうのを始めたんですよ」

 ナタリーは自分しか起きている人がいない中、まるで誰かに話しかけるみたいなテンションで語り出した。
 机の一番下の段から取り出したのは、裁縫セットだった。

「最近趣味を変えたんです。盆栽は流石に飽きました」

 この千年以上の月日で、ナタリーはたくさんの趣味を経験した。
 釣りに盆栽、千羽鶴耐久。それから登山に写生、アクロバティック、そして今が裁縫だ。

「ちょうど3体目のぬいぐるみを作っているところなんですよ。可愛い虎ですよね」

 色合いは黒っぽい。
 怖い感じではなく、可愛い感じでぬいぐるみを作っていた。

「おっと……そうですね、1体目は猫でした。2体目はライオンでしたね」

 ナタリーは遠い目をする仕草をした。
 普通にツッコミ待ちの構えを取ると、背中が急に冷たくなる。

「最初は作りたかったものを作ったんですよ」

 ナタリーは裁縫の続きを始めた。
 なかなか上手くできていて、指先が器用で繊細な性格のナタリーだからこその技量だ。

「ここまで20日かかったんですよ」

 ナタリーは時間がない。もちろん寿命としてではなく、色々な厄介ごとが控えているので前倒したり片づけたりしていると、結局1日に使える時間は限られてしまう。
 なのでここまで作るにも結構苦労したのは言うまでもない。

「ちなみにモチーフはバルトラです」

 バルトラを小さく可愛らしく見えるようにデフォルメしていた。
 バルトラという名前だから猫科だと思うのはあまりに安直かもしれないが、実際真っ黒な虎だ。
 それが人間が抱いたバルトラのイメージ像で、ナタリーはそれに準拠しているに過ぎない。

「不謹慎ですよね。でも、バルトラをモチーフに選んだのは実際教会のことがあったからです」

 バルトラを模したぬいぐるみは教会騒動の最中に作り始めた。
 その話を聞いていた何者かは、ナタリーの目の前に置かれていたペン立てを倒す。

「おっと。ペンが欲しいんですか?」

 紙を机に置き、万年筆の蓋を取ると、勝手にペンが動き始めた。
 すると紙を目の前にして、何か文字を書き始める。
 奇妙なポルターガイスト。ではない。ナタリーは知っているので、何も動じることはなかった。

「えーっと、どうでもいい?」

 オチがつまらないということらしい。
 とは言ってもオチとして喋っていたわけではないので、ナタリーがどうにかできるような話ではない。
 そこで「では、何か面白いオチを付けてみてくださいよ」と口にした。
 するとペンが止まり、ポトッと落ちた。

「逃げないでください! この振りをどうやって収集付けるんですか!」

 とは言っても誰も返事はしてくれない。
 そこでナタリーは水性ペンを取り出すと、眠っていたニッカの顔に落書きをすることにした。
 髭を描いたり牙を描いて、猫っぽく仕上げると猫耳カチューシャを付けて、どうにかこうにかオチにした。

「オチてはないですけどね」

 ナタリーは自分でもわかっていた。
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