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雷鳥編
229.窓の外は雪山
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竜車の中に視点を戻そう。
ルカはぐったりした面々の顔色を再び窺う。
「まさかこの時期に雪山に登る羽目になるなんてね」
「しかもここまで遠いとなると話しも変わって来るね」
「荷物もたくさん必要でしたね」
「「「ねー」」」
ルカとシルヴィア、それからダリアは同調した。
竜車を借りてからかなり時間が経っている。
既に慣れたと言ってもいい。
けれど狭い竜車の中、しかも半分以上を荷物が敷き詰められて奪っているので、みんな圧迫されてしまっていた。
けれどシルヴィアはふとルカの姿を見て疑問を抱いた。
ルカだけは荷物が一切ない。
それなりに広いはずの竜車の荷車部分を圧迫し、居住空間を奪い、夜間は仕方なく外で野宿しているにもかかわらず、ルカの荷物だけがないのは不思議で仕方なかった。
「如何したの、シルヴィ?」
「ねえルカ。如何して貴方だけ荷物がないの?」
思っていたことをこの際吐き出したシルヴィアは、素直に尋ねる。
ダリアやブルースターも今更だが同じ疑問を抱いた。
みんな抜けているなとルカは思ったが、一つクイズを出してみた。
「何だそんなことか。じゃあここでクイズ。私の一番得意な魔術は何?」
「えっ? そんなの決まっているじゃない」
「時空系魔術ですね」
「正解。私は力が強いから、魔術を多用しすぎても凄い影響が出るから自重しているけど……」
ルカは本当のことを口にした。
しかしシルヴィアはその言い分を聞いて眉根を寄せる。
「何それ、自慢でもしているの?」
「自慢じゃないよ。それに私はこれぐらいしか使わないでしょ?」
「そのレベルが飛んでいるのよ。まあこの際、ルカが強いのはわかっているからいいけど……」
「何だか釈然としない」
「それはこっちの台詞よ」
ルカとシルヴィアのつまらない口論が荷車の中に響いた。
けれど大人の対応でルカはするりと切り返すと。シルヴィアを丸め込む。
何も言えなくなり、口論はものの10秒で収まった。
「まさかとは思うけど、荷物を空間の中に仕舞っているの?」
「正解。流石シルヴィだね」
ルカは盛大に拍手をして讃えた。しかし嬉しそうでもない。
隣をチラッと視線を移動させると、ダリアとブルースターも表情が硬かった。むしろ納得しているようで達観している。
「う、うん。私の魔術は時空間に干渉するからね。この通り……」
ルカは咳払いをして調子を取り戻し、説明と合わせて空間に腕を突っ込む。
突然黒い小さな穴が出現し、まるで袋の入り口のように何か探していた。
「こんな風にしてね。《テレポート》みたいな大技は流石に慣れていないから、魔力の消費が多くて好きじゃないけど、短距離ならこの魔術の方が使いやすいんだよ」
「《テレポート》は転移系の魔術だけど、時空系にも繋がるのよ?」
「そうなんだ。興味なかったから、そこまで詳しくはなかったよ」
本当は知っていた。そもそも千年前から知っていた。
けれど面倒に巻き込まれないために知らないふりをする。
シルヴィアはドヤ顔をするが、ダリアとブルースターはルカが嘘をついたことを見破った。
ルカが知らないはずがないと見抜いていたからだ。
「それでまあ、基本的には道具を入れておくんだけど。こんな風に食べ物も入れられる」
ルカは亜空間からおにぎりを取り出した。
賞味期限も過ぎていない。入れたのが早かったおかげで、型崩れなどもなく普通に食べられた。
「まあこんな感じかな。はむっ。うん、梅干しがすっぱい!」
おにぎりを頬張るルカ。
その姿を見たシルヴィアは一つ腑に落ちなかった。
「ねえルカ。その魔術で私たちの荷物をまとめて収納してくれてたら……」
「まあそうなんだけど、頼まれなかったからね。別にいかなと?」
「よくないわよ。もう少し気を遣ってよね!」
何故か怒られてしまった。
拍子にライラックが一瞬目を覚ましたが、面倒に発展する前に二度寝を決め込むところをルカは見逃さなかった。
それから丸1日。
少し肌寒い気がしてきた。
「ねえ、昨日よりも寒くない?」
「今日は冷え込む日なんじゃないかな? もう11月だよ?」
「それだけが理由じゃないわ、きっと。何かもっと別の理由が……」
シルヴィアは慌ただしかった。
ふとダリアも駆られて窓の外を見てみると、大きな山が見えて来た。
「皆さん見えてください。大きな山が見えてきましたよ」
「ん? あっ、本当だ。雪山だね」
ダリアとルカの声に釣られて起きたのか、ライラックが駆け寄る。
窓の外には大きな山が見えて、頂上の方は白くなっていた。
「うわぁ、本当だー。ガチの雪山だねー」
「如何やら雷山に着いたみたいですね。いよいよですか」
「いよいよだね。みんな気を引き締めよう。少しでも油断したら、自然は人間何て軽く呑み込むよ」
これは経験談。千年前も自然災害に巻き込まれたことがあったルカならではの信憑性が高いものだった。
シルヴィアは奥歯を噛んだが、緊張から来るものだからだろう。
これだけの迫力だ。流石に3千メートル級の登山初挑戦は怖いんだと思った。
「そんなに心配しなくてもいいよ、シルヴィ」
「そ、そう?」
「うんうん。だから大丈夫だって」
ライラックが根拠のない声をかけ、勇気付けていた。
ルカはぐったりした面々の顔色を再び窺う。
「まさかこの時期に雪山に登る羽目になるなんてね」
「しかもここまで遠いとなると話しも変わって来るね」
「荷物もたくさん必要でしたね」
「「「ねー」」」
ルカとシルヴィア、それからダリアは同調した。
竜車を借りてからかなり時間が経っている。
既に慣れたと言ってもいい。
けれど狭い竜車の中、しかも半分以上を荷物が敷き詰められて奪っているので、みんな圧迫されてしまっていた。
けれどシルヴィアはふとルカの姿を見て疑問を抱いた。
ルカだけは荷物が一切ない。
それなりに広いはずの竜車の荷車部分を圧迫し、居住空間を奪い、夜間は仕方なく外で野宿しているにもかかわらず、ルカの荷物だけがないのは不思議で仕方なかった。
「如何したの、シルヴィ?」
「ねえルカ。如何して貴方だけ荷物がないの?」
思っていたことをこの際吐き出したシルヴィアは、素直に尋ねる。
ダリアやブルースターも今更だが同じ疑問を抱いた。
みんな抜けているなとルカは思ったが、一つクイズを出してみた。
「何だそんなことか。じゃあここでクイズ。私の一番得意な魔術は何?」
「えっ? そんなの決まっているじゃない」
「時空系魔術ですね」
「正解。私は力が強いから、魔術を多用しすぎても凄い影響が出るから自重しているけど……」
ルカは本当のことを口にした。
しかしシルヴィアはその言い分を聞いて眉根を寄せる。
「何それ、自慢でもしているの?」
「自慢じゃないよ。それに私はこれぐらいしか使わないでしょ?」
「そのレベルが飛んでいるのよ。まあこの際、ルカが強いのはわかっているからいいけど……」
「何だか釈然としない」
「それはこっちの台詞よ」
ルカとシルヴィアのつまらない口論が荷車の中に響いた。
けれど大人の対応でルカはするりと切り返すと。シルヴィアを丸め込む。
何も言えなくなり、口論はものの10秒で収まった。
「まさかとは思うけど、荷物を空間の中に仕舞っているの?」
「正解。流石シルヴィだね」
ルカは盛大に拍手をして讃えた。しかし嬉しそうでもない。
隣をチラッと視線を移動させると、ダリアとブルースターも表情が硬かった。むしろ納得しているようで達観している。
「う、うん。私の魔術は時空間に干渉するからね。この通り……」
ルカは咳払いをして調子を取り戻し、説明と合わせて空間に腕を突っ込む。
突然黒い小さな穴が出現し、まるで袋の入り口のように何か探していた。
「こんな風にしてね。《テレポート》みたいな大技は流石に慣れていないから、魔力の消費が多くて好きじゃないけど、短距離ならこの魔術の方が使いやすいんだよ」
「《テレポート》は転移系の魔術だけど、時空系にも繋がるのよ?」
「そうなんだ。興味なかったから、そこまで詳しくはなかったよ」
本当は知っていた。そもそも千年前から知っていた。
けれど面倒に巻き込まれないために知らないふりをする。
シルヴィアはドヤ顔をするが、ダリアとブルースターはルカが嘘をついたことを見破った。
ルカが知らないはずがないと見抜いていたからだ。
「それでまあ、基本的には道具を入れておくんだけど。こんな風に食べ物も入れられる」
ルカは亜空間からおにぎりを取り出した。
賞味期限も過ぎていない。入れたのが早かったおかげで、型崩れなどもなく普通に食べられた。
「まあこんな感じかな。はむっ。うん、梅干しがすっぱい!」
おにぎりを頬張るルカ。
その姿を見たシルヴィアは一つ腑に落ちなかった。
「ねえルカ。その魔術で私たちの荷物をまとめて収納してくれてたら……」
「まあそうなんだけど、頼まれなかったからね。別にいかなと?」
「よくないわよ。もう少し気を遣ってよね!」
何故か怒られてしまった。
拍子にライラックが一瞬目を覚ましたが、面倒に発展する前に二度寝を決め込むところをルカは見逃さなかった。
それから丸1日。
少し肌寒い気がしてきた。
「ねえ、昨日よりも寒くない?」
「今日は冷え込む日なんじゃないかな? もう11月だよ?」
「それだけが理由じゃないわ、きっと。何かもっと別の理由が……」
シルヴィアは慌ただしかった。
ふとダリアも駆られて窓の外を見てみると、大きな山が見えて来た。
「皆さん見えてください。大きな山が見えてきましたよ」
「ん? あっ、本当だ。雪山だね」
ダリアとルカの声に釣られて起きたのか、ライラックが駆け寄る。
窓の外には大きな山が見えて、頂上の方は白くなっていた。
「うわぁ、本当だー。ガチの雪山だねー」
「如何やら雷山に着いたみたいですね。いよいよですか」
「いよいよだね。みんな気を引き締めよう。少しでも油断したら、自然は人間何て軽く呑み込むよ」
これは経験談。千年前も自然災害に巻き込まれたことがあったルカならではの信憑性が高いものだった。
シルヴィアは奥歯を噛んだが、緊張から来るものだからだろう。
これだけの迫力だ。流石に3千メートル級の登山初挑戦は怖いんだと思った。
「そんなに心配しなくてもいいよ、シルヴィ」
「そ、そう?」
「うんうん。だから大丈夫だって」
ライラックが根拠のない声をかけ、勇気付けていた。
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