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雷鳥編
264.密猟者を追っていた?
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オフホワイトコートが目の前に揺らめく。
両手をそれぞれの顔の前に出し、魔力が集まっていた。
この魔力をルカは知っていた。
やはりと確信したと同時に実証が目の前で起きた。
氷がキラキラと輝いていたのだ。
「やっぱり貴女の氷は誰よりも綺麗ですね」
「ん?」
「冷たくて生気の抜けたような瞳をしているけれど、実際はそうじゃない。魔力には仲想いが宿っている。冷たく人に当たるのは誰のためでもない。相手のことを冷たくさせないため……それがいつも空回ってしまう。そうじゃないですか?」
「何が言いたいの?」
「とぼけないでください」
ルカの素顔は割れている。
つまり向こうからはルカだとバレている。
だから下手にとぼけなくても良かった。
「そうですよね、ミヨン」
「……気が付いてた?」
「もちろんです」
フードを被っていて顔を直接見えた訳ではなかった。
けれどその冷たい生気のない瞳や異様に白い肌は間違いなくミヨンだった。
ここが寒いので分かりづらいが、息が白かった。
吐く度に吐息が氷になり、空気を冷やしていた。
「こんなことができるのはミヨンだけでしょ?」
「……そう」
ミヨンはフードを外した。
全員の目にミヨンの姿が映り、シルヴィアは「えっ!?」と声を上げた。
「どうも、ミヨン・ブリザード」
「凍結の魔術師は如何した」
「それは異名。知らなくてもいい。言わなくてもいい」
隣にいたもう一人のオフホワイトコート姿の女性が訂正した。
しかし嬉しくないのでミヨンはジト目になった。
人形のような生気のない瞳が凝視した。
「すまない」
「ううん。もういい」
ミヨンはシンプルだった。
特に言葉を交わすわけでもなく間が発生し、隣にいた女性が代わりに声を出した。
「もしかして知り合いだったのか?」
「うん」
「珍しいな、ミヨンが友達と呼称する相手とは」
ミヨンは恥ずかしいのか、生気のない目に別の感情が魔力として灯った。
ルカはそのことに気が付いたが、ミヨンはルカ達に視線を向けた。
「こっちはエシュナ」
「エシュナ? 何処かで聞いたことがあったような……」
軽い自己紹介をしたが、ルカは首を捻った。
するとシルヴィアが反応した。
「エシュナってエシュナ・スクワーロさんですか!」
「誰だっけ?」
「誰って、ノーブル先生の親友でしょ!」
「「「ああ」」
ルカとライラックは納得した。
そう言えばロッセルを倒す前にノーブル先生がそんなことを言っていたと、ルカとライラックは思い出した。
これまで色々なことがあったのですっかり忘れていた。
しかしシルヴィアとライラックには確証がなかった。
ミヨンが特殊部隊〈ミスト〉のメンバーであることを知っているルカ以外は——
「ノーブル? 【秩序】か」
「はい。私達の担任です」
「担任? 確かに教員免許は持っていたが……そうか。敵討ちを代わりに……すまないことをしたな。あの時は私も自暴自棄になっていた」
「そのせいで今も笑わなくなった」
「お前が言うな」
あの時のノーブルは怒りの炎に燃えていた。
今ではそんな気迫は一切ないが、憎悪は人を変えてしまうとルカもよく知っていた。
最初に会った時のナタリーは黒くどよめいていた。
ルカはエシュナの顔を見ると、優しく微笑みかけていた。
「エシュナさん、ご冥福をお祈りいたします」
「その必要はない。もう終わった話だ」
「強い人ですね……」
「……ふん」
そうは言いつつもルカは気が付いていた。
エシュナの瞳が澄んでいたが、それは同時に抜け落ちたようだった。
一度付いた悲しみの炎は憎悪とは違ってなかなか取れない。
それを如実に表していた。
澄んでいた眼が急にギロッと牙を剥いた。
ルカ達のことを睨みつけ、厳しい口調に様座変わりした。
まるで鮫のように恐ろしかった。顎鮫の魔術師の名は伊達ではなかった。
「それより如何してこんなところに?」
「それを答える必要はない」
「そうですか。じゃあ私たちの邪魔は……」
「それはできない。ここに一般人の立ち入りは禁止されているから」
本気で勝手に入って来たと思っていた。
ルカは亜空間から許可証を取り出した。
ブルズの朱印が押されていて、立ち入り許可が許されていることを伝えた。
「あの、これで信じて貰えますか?」
ルカはミヨンに手渡した。
するとまじまじと許可証を凝視した後、「本当だったのか」とエシュナが驚いた。
「すまないことをしたな」
「本気で勝手に入ったと思ってた。友達を捕まえなくて済んで良かった」
二人はそれぞれ謝ったり安堵したりしていた。
けれどルカは思いもよらないことを言ってしまった。
「大丈夫ですよ。その場合は私に勝てないですから」
「随分な自信だな。戦った私は分かるが……」
「もっと謙虚だと思ってた」
「それは違いますよ。私は私を持っているだけです」
ルカはにやりと笑みを浮かべた。
その間完全に置き去りになっていたシルヴィア達は、密猟者を追って来たのではないのかと考えていた。
両手をそれぞれの顔の前に出し、魔力が集まっていた。
この魔力をルカは知っていた。
やはりと確信したと同時に実証が目の前で起きた。
氷がキラキラと輝いていたのだ。
「やっぱり貴女の氷は誰よりも綺麗ですね」
「ん?」
「冷たくて生気の抜けたような瞳をしているけれど、実際はそうじゃない。魔力には仲想いが宿っている。冷たく人に当たるのは誰のためでもない。相手のことを冷たくさせないため……それがいつも空回ってしまう。そうじゃないですか?」
「何が言いたいの?」
「とぼけないでください」
ルカの素顔は割れている。
つまり向こうからはルカだとバレている。
だから下手にとぼけなくても良かった。
「そうですよね、ミヨン」
「……気が付いてた?」
「もちろんです」
フードを被っていて顔を直接見えた訳ではなかった。
けれどその冷たい生気のない瞳や異様に白い肌は間違いなくミヨンだった。
ここが寒いので分かりづらいが、息が白かった。
吐く度に吐息が氷になり、空気を冷やしていた。
「こんなことができるのはミヨンだけでしょ?」
「……そう」
ミヨンはフードを外した。
全員の目にミヨンの姿が映り、シルヴィアは「えっ!?」と声を上げた。
「どうも、ミヨン・ブリザード」
「凍結の魔術師は如何した」
「それは異名。知らなくてもいい。言わなくてもいい」
隣にいたもう一人のオフホワイトコート姿の女性が訂正した。
しかし嬉しくないのでミヨンはジト目になった。
人形のような生気のない瞳が凝視した。
「すまない」
「ううん。もういい」
ミヨンはシンプルだった。
特に言葉を交わすわけでもなく間が発生し、隣にいた女性が代わりに声を出した。
「もしかして知り合いだったのか?」
「うん」
「珍しいな、ミヨンが友達と呼称する相手とは」
ミヨンは恥ずかしいのか、生気のない目に別の感情が魔力として灯った。
ルカはそのことに気が付いたが、ミヨンはルカ達に視線を向けた。
「こっちはエシュナ」
「エシュナ? 何処かで聞いたことがあったような……」
軽い自己紹介をしたが、ルカは首を捻った。
するとシルヴィアが反応した。
「エシュナってエシュナ・スクワーロさんですか!」
「誰だっけ?」
「誰って、ノーブル先生の親友でしょ!」
「「「ああ」」
ルカとライラックは納得した。
そう言えばロッセルを倒す前にノーブル先生がそんなことを言っていたと、ルカとライラックは思い出した。
これまで色々なことがあったのですっかり忘れていた。
しかしシルヴィアとライラックには確証がなかった。
ミヨンが特殊部隊〈ミスト〉のメンバーであることを知っているルカ以外は——
「ノーブル? 【秩序】か」
「はい。私達の担任です」
「担任? 確かに教員免許は持っていたが……そうか。敵討ちを代わりに……すまないことをしたな。あの時は私も自暴自棄になっていた」
「そのせいで今も笑わなくなった」
「お前が言うな」
あの時のノーブルは怒りの炎に燃えていた。
今ではそんな気迫は一切ないが、憎悪は人を変えてしまうとルカもよく知っていた。
最初に会った時のナタリーは黒くどよめいていた。
ルカはエシュナの顔を見ると、優しく微笑みかけていた。
「エシュナさん、ご冥福をお祈りいたします」
「その必要はない。もう終わった話だ」
「強い人ですね……」
「……ふん」
そうは言いつつもルカは気が付いていた。
エシュナの瞳が澄んでいたが、それは同時に抜け落ちたようだった。
一度付いた悲しみの炎は憎悪とは違ってなかなか取れない。
それを如実に表していた。
澄んでいた眼が急にギロッと牙を剥いた。
ルカ達のことを睨みつけ、厳しい口調に様座変わりした。
まるで鮫のように恐ろしかった。顎鮫の魔術師の名は伊達ではなかった。
「それより如何してこんなところに?」
「それを答える必要はない」
「そうですか。じゃあ私たちの邪魔は……」
「それはできない。ここに一般人の立ち入りは禁止されているから」
本気で勝手に入って来たと思っていた。
ルカは亜空間から許可証を取り出した。
ブルズの朱印が押されていて、立ち入り許可が許されていることを伝えた。
「あの、これで信じて貰えますか?」
ルカはミヨンに手渡した。
するとまじまじと許可証を凝視した後、「本当だったのか」とエシュナが驚いた。
「すまないことをしたな」
「本気で勝手に入ったと思ってた。友達を捕まえなくて済んで良かった」
二人はそれぞれ謝ったり安堵したりしていた。
けれどルカは思いもよらないことを言ってしまった。
「大丈夫ですよ。その場合は私に勝てないですから」
「随分な自信だな。戦った私は分かるが……」
「もっと謙虚だと思ってた」
「それは違いますよ。私は私を持っているだけです」
ルカはにやりと笑みを浮かべた。
その間完全に置き去りになっていたシルヴィア達は、密猟者を追って来たのではないのかと考えていた。
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