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雷鳥編
283.認識阻害は効きませんよ
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「はぁはぁ……まさかこんなことになろうとは思いませんでしたよ」
長身の男は馬車に乗り急ぎ早に逃げていた。
予想外のことが起こってしまい、非常に焦っていた。
「ここまで使えない方達とは思っていませんでしたよ」
奥歯を噛み、苛立ちを露わにしていた。
今まで上手く行っていたはずが、こうも唐突に終わりを迎えるとは思わなかった。
全てはあの学生達がやってきたせいだ。
おまけに〈ミスト〉の連中が嗅ぎ付けてきたせいでこんなことになってしまった。
また新しい顧客と密猟者を捜すしかなかった。
「まあいいです。希少種のモンスターを欲している変態方は幾らでもいますから」
ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
気色悪い笑みだったが、不意に男に戦慄が走った。
冷たい空気が首を掠めた。
ここは雪山だから仕方ないかもしれないが、男が首を左に傾けた瞬間、全身を悪寒が襲い掛かり首が吹き飛ぶイメージが脳を支配した。
「はっ!」
男は気が付くと馬車から飛び降りていた。
何故体がそうさせたのか分からないが、頭がフリーズしているので理解できていなかった。
(な、何だ……)
体がピクリとも動かなかった。
指先から凍り付き、血管が収縮して筋肉が動かなかった。
首がピンとしていて、目だけが開いたまま地面に叩きつけられてしまった。
(マズい……)
男は固有魔術を使いことにした。
指先が地面に付いた瞬間、活動していた思考回路の全て魔術を行使するために使った。
(《繁茂する蔦》)
男の体を地面から生えた蔦が支えた。
凍り付いて動かなくなった体が蔦に絡められ、優しく受け止めて貰った。
全身に痛みを堪えながらも、生きていることに安堵した。
「た、助かった……」
男が声に出して生きている実感を味わった。
しかし突然体が凍り付いたのは何故だろうか? 男は考える余裕を取り戻したので考えた。
「まさか〈ミスト〉の連中が……」
「御名答。お前を捕らえに来た」
「はっ!」
男は顔を上げた。
目の前から突然形の無い攻撃が降り注いだのだ。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
顔面の骨が一部砕けた。
右肩、左腕、肋骨が数本折れてしまった。
何が起きたのか。男には分からなかった。
顔を上げた瞬間、突然降り注がれた無慈悲な攻撃を男に凌ぎ切る術など最初からなく、目から血を流していた。
「死ななかった……残念」
「ミヨンの魔術を防ぐのか。とは言え戦う意欲は無いみたいだな。……ソーン!」
ソーンは驚いていた。
如何して誰にも言ってこなかった俺の名前を知っているのか、まさかそこまで調べ上げていたのか、様々な思考が脳を支配し、言葉を伝える力を失っていた。
目が真っ赤に染まり、何も見えなかった。
脳の一部を損傷してしまったのか、音が半分聞こえなかった。
指先すら動かず、完全に神経を損傷し麻痺していた。
ソーンには戦う力など残っていなかったが、エシュナとミヨンは一方的に口にした。
「まさか初激で死なないとは」
「エシュナの腕も落ちた?」
「そんなことは無い。……とは言え、私も甘かったな。懺悔の余地を与えようなど思ってしまうとは……なっ!」
エシュナは地面を軽く踏んだ。
すると再び見えない攻撃がソーンの体を突き上げた。
エシュナとミヨンはさも当然のような対応だった。
もの凄くドライで、どんな理由が有ろうと許さない姿勢だった。
それもそのはずエシュナにとっては親友の生徒が、ミヨンにとっては友人が傷つけられたのだ。
完全に私情ではあったが、許しては置けない相手だった。
そんなことなどソーンは知る由もなかった。
死へとゆっくり近づいていく最中、頭の中をあることが支配した。
「如何してだ……」
「「ん?」」
「如何して名前を知っている……認識阻害の魔術は全域に掛かっていたはずだ!」
ソーンは最後の力を振り絞って激高した。
最大の長所を完封され、男は頭に血が上っていた。
血管が詰まり始める中、如何しても納得がいかなかったのだ。
今まで自分の存在がバレたことは無かった。
どんな時でもどんなピンチな状況でも自分だけは逃れ、他者をほくそ笑んできた。
そんな自分の魔術に絶対の信頼を寄せていた。
人の記憶を改竄する蔦の毒素を免れる術などあるはずが無かった。
現に〈ミスト〉の人間も何度自分を捕らえようと画策しても失敗してきたのだ。
それが何故唐突にと、ソーンは激しく動揺していた。
「認識阻害は一度種が明かされれば効果は薄れる」
「そんなことは分かっている……」
「喋ると死んじゃうよ?」
「うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさい!」
ソーンは子供の様に駄々をこねた。
エシュナはソーンの額に指を当てた。
魔術を使って脳機能を停止させるのだ。
「黙れ。それ以上叫ぶと如何なるか分かるな?」
「うるさい!」
男は癇癪を立てて訴えた。
そこで最後の手向けにエシュナは教えてやった。
「良い土産だ。お前の魔術が効かない奴が居たと言えば信じるか?」
「そんな奴が居るはずない。絶対にありえない……」
「そうか。残念だ」
エシュナは【顎鮫の魔術師】らしかった。
何人たりとも容赦しなかった。
ソーンの額を魔術が襲った。
激高していたソーンの脳が完全に機能しなくなった。
事件の黒幕が落ちた時、空気がやけに冷たくなった。
こんなことで何が強くなれるのか、エシュナにはもう分からず、全てを見失っていた。
長身の男は馬車に乗り急ぎ早に逃げていた。
予想外のことが起こってしまい、非常に焦っていた。
「ここまで使えない方達とは思っていませんでしたよ」
奥歯を噛み、苛立ちを露わにしていた。
今まで上手く行っていたはずが、こうも唐突に終わりを迎えるとは思わなかった。
全てはあの学生達がやってきたせいだ。
おまけに〈ミスト〉の連中が嗅ぎ付けてきたせいでこんなことになってしまった。
また新しい顧客と密猟者を捜すしかなかった。
「まあいいです。希少種のモンスターを欲している変態方は幾らでもいますから」
ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
気色悪い笑みだったが、不意に男に戦慄が走った。
冷たい空気が首を掠めた。
ここは雪山だから仕方ないかもしれないが、男が首を左に傾けた瞬間、全身を悪寒が襲い掛かり首が吹き飛ぶイメージが脳を支配した。
「はっ!」
男は気が付くと馬車から飛び降りていた。
何故体がそうさせたのか分からないが、頭がフリーズしているので理解できていなかった。
(な、何だ……)
体がピクリとも動かなかった。
指先から凍り付き、血管が収縮して筋肉が動かなかった。
首がピンとしていて、目だけが開いたまま地面に叩きつけられてしまった。
(マズい……)
男は固有魔術を使いことにした。
指先が地面に付いた瞬間、活動していた思考回路の全て魔術を行使するために使った。
(《繁茂する蔦》)
男の体を地面から生えた蔦が支えた。
凍り付いて動かなくなった体が蔦に絡められ、優しく受け止めて貰った。
全身に痛みを堪えながらも、生きていることに安堵した。
「た、助かった……」
男が声に出して生きている実感を味わった。
しかし突然体が凍り付いたのは何故だろうか? 男は考える余裕を取り戻したので考えた。
「まさか〈ミスト〉の連中が……」
「御名答。お前を捕らえに来た」
「はっ!」
男は顔を上げた。
目の前から突然形の無い攻撃が降り注いだのだ。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
顔面の骨が一部砕けた。
右肩、左腕、肋骨が数本折れてしまった。
何が起きたのか。男には分からなかった。
顔を上げた瞬間、突然降り注がれた無慈悲な攻撃を男に凌ぎ切る術など最初からなく、目から血を流していた。
「死ななかった……残念」
「ミヨンの魔術を防ぐのか。とは言え戦う意欲は無いみたいだな。……ソーン!」
ソーンは驚いていた。
如何して誰にも言ってこなかった俺の名前を知っているのか、まさかそこまで調べ上げていたのか、様々な思考が脳を支配し、言葉を伝える力を失っていた。
目が真っ赤に染まり、何も見えなかった。
脳の一部を損傷してしまったのか、音が半分聞こえなかった。
指先すら動かず、完全に神経を損傷し麻痺していた。
ソーンには戦う力など残っていなかったが、エシュナとミヨンは一方的に口にした。
「まさか初激で死なないとは」
「エシュナの腕も落ちた?」
「そんなことは無い。……とは言え、私も甘かったな。懺悔の余地を与えようなど思ってしまうとは……なっ!」
エシュナは地面を軽く踏んだ。
すると再び見えない攻撃がソーンの体を突き上げた。
エシュナとミヨンはさも当然のような対応だった。
もの凄くドライで、どんな理由が有ろうと許さない姿勢だった。
それもそのはずエシュナにとっては親友の生徒が、ミヨンにとっては友人が傷つけられたのだ。
完全に私情ではあったが、許しては置けない相手だった。
そんなことなどソーンは知る由もなかった。
死へとゆっくり近づいていく最中、頭の中をあることが支配した。
「如何してだ……」
「「ん?」」
「如何して名前を知っている……認識阻害の魔術は全域に掛かっていたはずだ!」
ソーンは最後の力を振り絞って激高した。
最大の長所を完封され、男は頭に血が上っていた。
血管が詰まり始める中、如何しても納得がいかなかったのだ。
今まで自分の存在がバレたことは無かった。
どんな時でもどんなピンチな状況でも自分だけは逃れ、他者をほくそ笑んできた。
そんな自分の魔術に絶対の信頼を寄せていた。
人の記憶を改竄する蔦の毒素を免れる術などあるはずが無かった。
現に〈ミスト〉の人間も何度自分を捕らえようと画策しても失敗してきたのだ。
それが何故唐突にと、ソーンは激しく動揺していた。
「認識阻害は一度種が明かされれば効果は薄れる」
「そんなことは分かっている……」
「喋ると死んじゃうよ?」
「うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさい!」
ソーンは子供の様に駄々をこねた。
エシュナはソーンの額に指を当てた。
魔術を使って脳機能を停止させるのだ。
「黙れ。それ以上叫ぶと如何なるか分かるな?」
「うるさい!」
男は癇癪を立てて訴えた。
そこで最後の手向けにエシュナは教えてやった。
「良い土産だ。お前の魔術が効かない奴が居たと言えば信じるか?」
「そんな奴が居るはずない。絶対にありえない……」
「そうか。残念だ」
エシュナは【顎鮫の魔術師】らしかった。
何人たりとも容赦しなかった。
ソーンの額を魔術が襲った。
激高していたソーンの脳が完全に機能しなくなった。
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