1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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聖夜編

327.森の中には何か居そう

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 教会まで続く一本道へと足を踏み出す。
 地面は少しぬかるんでいて、湿りっ気があった。
 足跡が十分地面に付く程のぬかるみ加減で、靴の裏側がべっとりなのは諦めるしかなかった。

「ううっ……靴の裏べっとり何だけど」
「諦めるしかないよ」
「むっ……そう言うルカは汚れていないみたいだけど?」
「私の靴には泥が付かないようにコーティングしてあるからね。これくらい普通だよ」
「普通じゃないわよ。何処でそんな靴……」
「自分でコーティングを掛けたんだよ」
「ルカさんは前もって準備ができる魔術師何ですね」

 ジルアはルカを褒めてくれる。
 だけどルカにとっては普通のことで、あまり褒められているのかと、素直に受け入れることができない。

 ルカは「うーん」と唸り声を上げる中、シルヴィアは周囲を気にする。
 何か出てきそうな雰囲気で、少しだけ身構えてしまっていた。

「何か出てきそうね」
「確かにそうだよねー。モンスターでもいるんじゃないのー?」

 シルヴィアの恐怖心をライラックは煽る。
 しかしながらルカからすればモンスターらしき魔力は森の中からは感じなかった。
 それもそのはず、この森にはモンスターが居ないのだ。

「大丈夫ですよ。この森にモンスターは居ませんから」
「そう何ですか?」
「はい。断言して言います」

 その根拠が何処にあるのか、シルヴィア達は疑問を呈する。
 ルカだけは木の幹や地面に視線を向けると、小さな石柱が立っていた。
 如何やらこの森にも結界が施されているらしい。

「結界が張られているんですね」
「はい。ルカさんは目の付け所が良いですね」
「モンスター避けの結界がそこら中に重なるように張り巡らされていますね。さっきとは少し違うけど」

 ジルア曰く、もともとこの森には凶悪なモンスターがたくさんいた。
 しかしこの町の市長であるサンタ・ク・ロースが結界を何重にも張り巡らせたことでその被害を激減させた。
 モンスターの嫌う効果のある結界はモンスター達を外へと追いやり、この森の平和を担うことに貢献したのだ。

「こんなに広い森にまで対応できる結界を常に維持できる何て……凄い魔術ね」
「この石柱が秘密何だよ。雷の魔術を掛けられた石板見たでしょ? アレとやっていることは同じで、等間隔に森の外側と内側に置くことで結界の強度を上げているってことかな」

 ルカの見立てでは外側に薄い結界を張り、中にはより濃い結界を交互に張っていた。
 そのせいもあり魔力の流れが不安定になるところをあえて安定させる。
 人には無害かつ魔力を多く持つ凶悪なモンスターだけを弾けるように細工がしてあった。こんな真似、今の魔術師にはなかなか難しく、流石に千年前の魔法使い、いや契約した精霊ドリアードの手慣れた技だと解釈した。

「とは言え、森の奥には弱いモンスターは潜んでいると思うよ」
「そう何ですか? 今までモンスターと遭遇したことはありませんが……」
「この道の周りにはモンスターができないんですよ。二重の結界とは言っても、その根源に当たる石柱が道の近くに設置されているんです。ここが一番安全に決まっていますよ」

 ジルアが謎を抱いたので、ルカは優しく解説する。
 この森の結界は外側に大きな円を描き、内側はこの道を挟み込む形で九十度反対向きに形成されている。そのおかげでこの道だけは絶対安全領域と化していた。

「まああくまでモンスター避けだから、人には無害。その点だけは注意してくださいね」
「如何いう事よ?」
「単純な話だよ。モンスターが居ないということは自ずと敵は二種類に絞られる。人か、それ以外か」

 シルヴィアの疑問にも率直に返した。
 あくまでもこの森の結界はモンスター専用。つまるところ、人やそれ以外には全くではないにしろ効果が薄く設定されていた。
 逆に言えば、それだけ相手を絞り込むことで長期間の使用を可能にしているので、結界を張る専門の魔法使いでもないのにこの手の施しようは異常だとも捉えられた。

「つまりこの町の市長は相当凄いってこと」
「……確かに達観はしてたけど、まさかこれほどまでって……驚きね」

 シルヴィアも言葉を紡ぐのを恐れた。
 それだけ魔術師としての位の高さを肌で感じたのだろうが、ここでルカは一つ助言を送る。

「過去の魔法使いや魔術師の栄光にすがるのは構わないけど、それで絶望して至って始まらないよ」
「急に如何したのよ?」
「実力の差を物語っていても始まらない。自分で進んだ道を引き返すなんてできない。それなら最初から進まなければいいんだから」
「詩人?」
「要は市長に負けるなって話。魔術省の官僚を目指すなら、この程度で止まるなって話だよ」

 ルカはそれを言うと、再び前を向いた。
 その背中は哀愁が漂うとともに常に前を見ていた。
 シルヴィアは「分かってるわよ、そんなこと」と少しツンな態度を取ってしまうものの、ただ続くだけの一本道を歩きながら考えることを止めた。考えたって仕方ないから自分の武器を磨こう、そう心で悟った証拠だった。
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