1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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聖夜編

361.千年前に失われた味

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 ルカは困惑した。
 目を丸くしてしまい、茫然としてしまう。
 ポカンと意味を正確に理解したは良いものの、「はい?」と口走った。

「なに言ってるんですか?」

 スージーは戻り胡椒リバース・ペッパーが絶滅したと答えた。
 しかしながらそれはあり得ない。だってルカはこの目で見ているんだから。

「絶滅した? 如何言うことですか?」
「そうですよ。現にルカさんは持っていますよ?」
「とは言え戻り胡椒リバース・ペッパーと言う名前にはあまり心当たりがないのは確かです。絶滅した……なるほど、既に存在していないものだとすると、認知されていないのも納得ですよね」

 みんなは揃いも揃ってスージーの言葉の意味を深掘ろうとする。
 しかし考える必要もなかった。
 スージーの言うことは事実なのだ。

「本当の話。戻り胡椒リバース・ペッパーはもう無い」
「もう無い? 本当ですか?」
「本当。戻り胡椒リバース・ペッパーは今から数百年前には絶滅している。だからもうこの世界には存在しない」
「存在しない……ですか」

 そんなの分からないはずだ。
 人間なんてこの世界の、この惑星の隅々まで見ているわけではない。
 千年なんて、惑星の命に比べたら全然だ。

「本当に存在しないんですか?」
「疑ってる?」
「疑っているわけではないですけど、本当に無いと言う確固たる証拠でも?」

 ルカは面倒な客をしていた。
 とは言え、スージーはちゃんと乗ってくれる。
 確固たる証拠を提示してくれるようで、淡々と呟く。

戻り胡椒リバース・ペッパーは、今から千年前には普通にこの地上で生息していたらしい。その効果は素晴らしく、腐敗した細胞や元の形を失ってしまったものを復元させてしまう」
「細胞の再生ですね。戻り胡椒リバース・ペッパー特有の効果です」
「当時からその効果に注目していた料理人は多かったらしい。千年前は大戦が広がり、血で血を洗う場面も多かったそう。そんな時、戻り胡椒リバース・ペッパーの効果は重宝した」
「味を引き出してくれる=食べられないものを食べれるようにするわけではなく、痛んでしまったものの遺伝子を引き出して、味を引き上げたり、食べられるようにしてくれるんですよ」

 スージーの話に水を差すように補足を続けていくルカ。
 しかしスージーはそんなことは気にせず、淡々と話しを続けていた。
 急に雰囲気が悪くなり、言葉が重たくなり、暗くなる。

「だけど今から約五百年前。戻り胡椒リバース・ペッパーは生息域を減らし、その存在が消え始めた」
「消え始めた?」
「魔力の衰退。大気中の魔素の分量は変らないが、質が下がった。それが原因で、繊細な戻り胡椒リバース・ペッパーは成長が著しく損なわれた」

 確かにそれは言える。
 ルカも納得したようで言葉を噤んだ。

「確かに戻り胡椒リバース・ペッパーは高い魔力を要求しますね」
「そう言うこと」

 とは言え、それだけで絶滅したとは考えにくい。
 魔力の衰退はあったとはいえ、魔術は残っている。
 現に魔法だって世間的にはナタリーが使える。
 つまるところ、魔力の質は下がったとはいえ、千年前の魔術師ならば遺伝しに残る感覚的なもので魔法が使える。そのため、戻り胡椒リバース・ペッパーも同じ機構を備えているので、絶滅の一途をたどるとは考えにくいのだ。

「となると、他の要因?」
「人間のせい」
「人間? あっ、まさか……」

 ルカは想像が行き届いた。
 確かにそれなら絶滅してしまってもおかしくない。
 ルカは頭を抱えてしまい、「だよね」と独り言を吐く。

「ちょっとルカ。また一人で納得しないでよ!」
「そうですよ。私達にも説明をお願いします」

 シルヴィアとブルースターに抗議を受ける。
 ルカが説明しようしたが、スージーが代わりに答えてくれた。

「人間が雑草と間違えて刈ってしまった」

 スージーの言葉を受けて、ルカは表情を歪めた。
 シルヴィア達も神妙な顔色になるが、表情に影を落とす。
 何をするにも人間が関わっている場面は多いので、それがこうして前面に押し出されると、胸が苦しくなった。

「そのせいで戻り胡椒リバース・ペッパーは生息域を急激に減らした。そして今から二百年も昔になると、完全に生息の情報が途絶えてしまい、学術的にも絶滅したと言われるようになった。これが戻り胡椒リバース・ペッパーが絶滅したと言われる要因。如何、分かった?」

 スージーは話し終えると、満足したわけでもなく、むしろ悲しくなっていた。
 隣に立つラーマスも同じ表情を浮かべている。
 となると、今ルカが持っている戻り胡椒リバース・ペッパー。コレが本物だと知った手前、反論せざるを得なくなったのも納得だ。

「だから戻り胡椒リバース・ペッパーがあるのはおかしい」
「なるほど。でも、ここにあるのは本物ですよ」
「……まだ言う?」
「何度でも言います。コレは本物の戻り胡椒リバース・ペッパーです。舐めてみますか?」
「えっ?」

 ルカはスージーに筒を手渡す。
 千年前に失われた味。それを紐解ける絶好の機会に、スージーは目を丸くした。
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