1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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聖夜編

383.男達の足音①

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 夜も遅く、月夜も出ていない空の下。ジルア達は孤児院の外に居た。
 ジルアの手にはランタンが握られている。
 中には火がポツポツと灯っていて、まるで提灯や行灯のような揺らめきを幻想的に放っていた。その情景はホーリーの静寂とした空気には見事にマッチしていて、仄かな心の余韻を与えてくれる。

「それではジルア。俺達はこれで失礼します」

 ゴライアスはジルアに行った。
 帰る格好をしており、これから帰路に着くのだ。

「はい、お気をつけて」

 ジルアは笑みを浮かべて見送る。
 申し訳なさそうな顔をするわけでもなく、ムスッとした硬い表情のままのゴライアス。
 その隣にはライザーが居た。緩い表情を浮かべて、尻尾を揺らしている。

「それじゃぁお願いねぇ」
「はい、任せてください」
「でもごめんねぇ。クリスマスなのにぃ、一人で任せちゃってぇ」
「いえ、これも仕事の内ですから」

 クリスマスと言うこともあり、今日一日はとても大変だった。
 それでも全員の力で何とか乗り切ることができた。
 しかしながら全員で見回りはできない。いつものことながら、順番通り一人で見回りになる。
 誰か一人は保護者が居ないとダメなのでこうなったのだが、やはり不安だった。

 それもそのはずジルアは魔力が見える程度で、魔術と言ったものにあまり精通していない。
 今まで何事もなかったのできっと大丈夫だろうと高を括ってはいるものの、流石に実力不足は否めない。
 そんなジルアにライザーは優しく語り掛ける。

「何かあったら連絡してよぉ。まあねぇ、変な奴は来ないと思うけどぉ」
「そうですね。ゴライアスさんとライザーさんが仕掛けておいてくれた罠が万が一の時は発動してくれるはずですものね」
「はい。その辺りは任せてください」

 ゴライアスも自信たっぷりだった。
 念のため、万が一に備えて孤児院と教会の周りには二人が土と風の魔術で作った罠が張り巡らせてある。よっぽどのことがなければ回避は不可能。もちろん使われることはないと思うが、今日は念のためより厳重に施してあったので安心できた。

「それじゃぁ、帰るよぉ。また明日ねぇ」
「失礼します」
「夜道は気を付けてくださいね」
「「はい」」

 二人を見送るジルア。ゴライアスは一礼をし、ライザーは何処までも振り返って手を振ってくれる。尻尾も当然左右に揺れていた。
ドンドン視界から姿を消す。遠ざかる二人の実体を後にし、一人取り残されたジルアは「さて」と息を一つ入れた。

「見回りに行きましょうか」

 ジルアはランタンを手にし、孤児院の中に戻る。
 これから見回りで、仮眠を交えつつ朝までの業務だ。
 とても疲れているから眠たいけれど子供達の安全のため、ジルアはせっせと見回りを頑張るのだった。



 夜の静寂が心地よい。
 全身をピリピリとした衝動が襲う。
 これは恐怖ではない。むしろ高揚感でしかなく、男達は今か今かと男の合図を待ちわびていた。

「ボス、ピリピリしてきましたねー」
「そうだな。だがこれは好機だ」
「好機っすか?」
「ああ。夜の静寂は俺達の味方だ。コレを好機と見る以外ないだろ。それより、準備はできているな」
「んなもん、もちろんですよー。さあ行きましょう。今すぐ行きましょう!」

 小男はボスと呼ばれる男に威勢を示した。
 今か今かと待ちわびている様子は変らず、体が衝動でウズウズしている。
 白い歯をニヤつかせ、軽く作った拳に汗が混じる。

「そうだな。今すぐ行っても良いが……おい、お前ら。準備は良いな」

 ボスと呼ばれた男は振り返り、残りのメンツに声を掛けた。
 黒いローブを着た男、棍棒を持った男。
 どちらもまともに話を聴いているのか聴いていないのかは分からない。
 しかし棍棒を持った男は「うっす」と短く返答するが、一方のローブを着た男は何も言わない。完全無視を決め込んでいるのか、それとも単に返事をしたくないだけなのか、実力の高さは折り紙付きなものの、コミュニケーション能力の欠如した奴だった。

「おい、お前聴いてるのかよ!」

 コクコクと首を縦に振る。つくづく喋りたがらないが、話は通じていた。
 小男はその態度に嫌気がさしイライラしていたが、ボスと呼ばれた男はそんなことは如何だっていいらしい。
 全てを放り投げてでも今やることは変らない。
 ニヤリと笑みを浮かべながら、孤児院を眼下に構える。

「行くぞおまえら。ここからが俺達の戦場だ」
「「はい!」」

 ボスと呼ばれた男の合図とともに、部下達は声を張り上げた。
 夜の静寂に暗雲立ち込め、胸糞悪い真っ赤な熱が迸った。
 それは音の波となり暗闇を震わせ、その野望をけたたましく響かせた。
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