1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

文字の大きさ
424 / 733
聖夜編

420.サンタ・ク・ロースはお終い

しおりを挟む
 しんみりとした空気とピリピリとした痛い空気が流れていた。
 ルカ達は孤児院の庭先で立ち尽くしていると、ルカが空に視線を預けた。

「そろそろ日が昇るね」

 空が薄っすらと明るくなりつつあった。
 それもそのはずここまでで時間を使い過ぎた。
 冬空の暗さに明け暮れ、時間を読み違えていた。

「後三十分もすれば空は明るくなっちゃいますね」
「そうね。そろそろ戻らないと、私達も勝手に宿を抜け出してしてきちゃったから」

 ルカ達もそろそろ戻らないとマズい。
 サンタ・ク・ロースは伝承でなければならないと、気持ちが馳せる。
 だからだろう。ブルースターはジルア達に釘を刺した。

「すみませんが皆さん。私達のことは内緒にしていただけると助かります」

 綺麗な礼をしてお願いした。
 しかしここまでのことをしたんだ。
 ジルア達も快く了承してくれた。

「はい、分かりました。孤児院には誰も来ていない、そう言うことにしておきますね」
「いえ、サンタ・ク・ロースが来たと伝えてください」
「サンタ・ク・ロースですか?」
「はい。それでは皆さん戻りましょうか」

 ブルースターは一応の口止め作業も済んだことで満足した。
 けれど一つ取り残しちゃいけないプレゼントがある。
 庭先で転がる縛られた男達だ。

「ライ、全員に糸を付けて。千切れないやつ」
「いいよー……んでなにするの?」
「運ぶんだよ。こんなところに放置は怪しまれるから、この町の騎士たちの宿舎の前に出も置いておこうよ。ついでにこれも貼り付けてさ」

 ルカが亜空間から取り出した紙には、いつかいたのか分からないが文字が書かれていた。
 “未来を奪う不届き者”と、書かれている。流石にコレを見れば怪しんで調べるに違いなかった。
 ルカはボスであるレーヴの額に押し付けるようにして貼り付けると、ルカとシルヴィア、ライラックの三人で運ぶことになった。

「それじゃあ私達は行きますね。よいクリスマスを」
「あっ、はい。ルカさん達も」

 ルカ達は空を駆けて行く。それぞれ飛び方は全然違った。
 けれどジルア達はその光景を目の当たりにすると、格好も相まってか脳裏をよぎってしまう。
 その姿はまるでサンタ・ク・ロースの御使い達で、なんだか夢を見ているような尊い感情に胸を打たれるのだった。


 ルカ達は空を飛んでいた。
 サンタ・ク・ロースのバイト、これが最後の仕事だ。
 壁の側によると中くらいの大きさの宿舎があった。
 流石に夜間の警備は薄いようで、大きな欠伸をして今にも寝オチしてしまいそうな騎士一人を外に置き、残りは暖かい宿舎の中で眠っている。

 嬉しいのは真っ暗なことだった。
 つまりは誰も起きていないことを意味している。
 悲しいのはそれまでの間こんな寒空の中男達を放置すること。
 流石に倫理的に叩かされそうで怖くなり、ルカは仕方がないとばかりに、亜空間から毛布を三枚分取り出す。

「朝までこれで耐えてよ。大丈夫、私の魔術で温かくしてあるから」

 この毛布を一枚被れば全身がポカポカになる。
 ルカからしてみれば大したことはしていないのだが、シルヴィア達は相変わらず呆れてしまった。

「本当。どうしてそんな魔術ばかり使えるのよ」
「どうしてって、基礎の応用だよ?」
「その基礎が身についてないとできないでしょ!」
「なに言ってるの? みんなはクラスの中でもトップクラス。基礎はもう十分の筈だよ。特にシルヴィ、基礎を上手く使ってる。自分だけの魔術に昇華してる」
「もう、煽てないでよ。ほら、もう行くわよ。こんなところに居たら、寒くて凍えちゃうわ」

 シルヴィアは顔を背けた。何やら恥ずかしがっている。
 さっきまでは一瞬の険悪にシルヴィア自身がルカから距離を置いていた。
 けれどルカから近づかれたことでその均衡が解かれてしまい、一瞬で赤面へと変化する。
 可愛い以外の何者でもない。

「ですがこれで終わりですね。ふはぁー、眠たいです」
「そうだねー」
「ライはいつもでしょ」

 ルカ以外は欠伸を掻きそうになっていた。
 けれどルカ自身も魔力の使い過ぎで疲れてしまった。
 そろそろ寝たい。遺った魔力を使い全員で宿まで向かうと、バレないように扉を潜りそれぞれの部屋へと戻る。
 ここまでずっと緊張状態で、それぞれが部屋の前に来ると安堵する。

「それじゃあ少しだけおやすみなさい」
「おやすみ」

 ルカ達は部屋に戻ると同室のリネアを起こさないようにベッドに入る。
 全身がくたびれていて動けそうにない。
 目を瞑ると魔力の枯渇に訴えかけられ一気に睡魔が過った。

「本当、凄く長い夜だったよ」

 ルカはポツリと呟いた。そのまま眠ってしまった。
 欠伸なんかは掻かないけれど、体を動かすのが億劫になっていて、深い眠りにすぐ就いた。
 ようやく解放されたおかげか、しがらみが取れて行き、満足感に満ちていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

処理中です...