1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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聖夜編

428.サンタ・ク・ロースはもう要らない

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 ルカは紅茶を啜った。
 スッと喉を流れると、ティーカップの中身は空になった。

 流石に三杯目はもう無理だ。
 これ以上飲むと長居が続くことになる。

「それじゃあそろそろ帰るよ」
「えっ!? もう帰るんですか?」
「うん。当然帰るよ。やりたいことと言いたいことは済んだからね」

 ルカは席を立った。
 するとドリアードは素早く立ち上がる。
 ルカのことを足止めしたいのか、腕を伸ばすが、ルカの腕を掴まえようとするが、スルリと抜けてしまった。

「うわぁ!」
「大丈夫? って、魔力が荒んでる」

 ドリアードは転んでいた。
 足がもつれたとかではない。
 体が崩れてしまい、そのままドリアードは動けなくなる。

 体が完全に壊れかけていた。
 けれどそんなのは見ていれば分かる。
 ここまでずっとあの姿を保ってきたせいで、魔力が散って大地の成分で構成できなくなっていた。

「ドリアード、魔力が枯れかけてるよ」
「そうですね。流石に体が……持たない」
「そうだね。体が終わりかけてる」

 もっとも終わりかけているのは生き物としてではない。
 ドリアードは精霊だ。早々死ぬことはない。
 何故なら魂を肉体と言う器に入れているにすぎないからだ。

 けれどその肉体が消耗しすぎていた。
 そのせいだろうか。ドリアードは苦痛を押し殺している。
 もちろん痛みなんかはない。痛みを受けた演技に違いないが、それでもいつまでもこの体が動くわけではないのだ。

「ドリアード、その器は捨てた方が良いよ」
「捨てる?」
「捨てるんだよ。ドリアードなら数日もすれば魔力も回復して、新しい器が作れるでしょ? とは言え、作れるのは魔力のコスパを考えないといけないけどね」

 ルカはルカなりにドリアードを心配していた。
 それもそのはず、これには根拠もあった。
 ドリアードは精霊だ。それを利用しないわけがない。

 形を作れない器はない。
 どんなものだって完成図に近付けることはできる。
 陶芸と同じだ。ドリアードは大地の力を借りてそれを媒介に形を作る。
 そのために必要な繋ぎ合わせるための水も焼いて形を整える火も乾かしてその姿を永遠のものにするための風も、それら全てと友達になれるのだ。

 だから単純に元の姿をベースに使えばきっと今よりも丈夫になれる。
 そうなれば、ドリアードは本来の魔法を使いこなせるはずだ。
 サンタ・ク・ロースを偽って、【聖灰】を使わずとも、十分なくらいになれる。
 けれどドリアードは何故かそれを拒んだ。

「この体を捨てるなんて、私には無理です」
「どうして?」
「それが契約だからです。私はサンタ・ク・ロースと契約をした。まだ、まだその契約を果たせてはいないですから」

 ドリアードは頑固だった。いや、人間以上に繋がりを大事にしていた。
 ルカはそれを受けて思うところがあった。
 やっぱり精霊は精霊だ。人間なんかに比べて繋がりをより大事にしていた。

「そっか。でもそれは枷だよ。自分のことを縛り付け、自由を奪い、それから苦しみだけを未来永劫残し続けるんだよ」

 契約なんてただの縛りだ。
 呪いのようなもので、それ以上でもそれ以下でもない。
 ルカは今のドリアードが可哀そうに見えてしまい、ルカはドリアードのことを思って、なにか掛けられるものは無いかと考えた。

「うん、そうだね。だから、そんなドリアードに一言だけ助言をするよ」
「助言? それで解放されるとでも」
「それは分からないけれど、一つだけ言えるのはこれかな。サンタ・ク・ロースはもう要らない」
「なっ!? な、なんてことを……」

 ドリアードは牙を剥き出しにした。
 すぐにでも手が出る構えで、ルカのことを敵視する。
 けれどルカには勝てないとも分かっていた。だからだろうか、震える手は矛を収めた。

「如何してそんなことが言えるんです?」
「如何してもなにも無いよ。サンタ・ク・ロースはもう要らない。必要なのは、ドリアード自身なんだから」

 ルカが本当に言いたいのは、欲しいのは建前なんかじゃないことだ。
 みんなが必要としているのは、サンタ・ク・ロースじゃない。
 そんな失われた過去の名前よりも、大事なのは今を変えようとしているドリアード自信。
 それを分かって欲しかったが、何故かドリアードは復唱し始める。

「必要なのは私?」
「そうだよ。サンタ・ク・ロースはもういない。だから必要じゃないんだよ。本当に必要なのは、ドリアード。貴女自身なんだ」
「私が必要? くっ、そんな訳が……」

 ドリアードは苦汁を舐めていた。
 唇をギュッと噛むと、魔力が飽和する。
 本当に魔力の流れは純粋だ。分かりやすいも何も無い。

「真に受けるも受けないも自由だよ。少なくとも私はその方がサンタ・ク・ロースのためになると思うよ」
「サンタ・ク・ロースのため?」

 余計に訳が分からなくなった。
 ドリアードは首を捻り、眉根を寄せている。
 魔力が散々散り始め、これ以上訳の分からないことで悩ませるのは止めた。

「うん。その意味を考えるのはドリアード自信。それじゃあゆっくり考えるといいよ」

 ルカはそう言うと、小屋を出ることにした。
 散々悩ませるだけでドリアードを困らせてしまった。
 けれどこれで気が付くはずだ。もうサンタ・ク・ロースの契約はとっくの昔に切れていることを。
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