1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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村亡編

437.エルフの森の悲報

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 ナタリーはルカに頭を下げていた。
 未だに話が見えて来ないせいか、ルカはまずナタリーに顔を上げて貰うことにした。

「ナタリー、顔を上げてよ。そんな調子で話されても困るから」
「すみません、ルカさん」
「謝らなくてもいいよ」
「すみません、ルカさん」

 ナタリーは謝り倒しだった。
 この街の市長として、アルカード魔術学校の校長として、もう少しだけ堂々として欲しかった。
 普段は決して見せないような焦り顔を浮かべるナタリーからは余計に想像もできない姿に、ルカはまず話してもらうことにした。

「ナタリー、同胞を助けてくださいってどういうこと?」
「そのままの意味です」
「そのままの意味って、私をなにか誤解してないかな? 少ない情報だけで、世界の全てを見ようとすることは、私には決してできないよ」
「すみません。話を少しだけ飛ばしてしまいましたね」
「少しじゃないけどね。それで、もう少しゆっくり話してくれる?」
「分かりました。とはいえ、ルカさんでしたらこちらの手紙を読めば全て理解できるかと……」

 ナタリーはそう言うと、鞄の中から手紙を取り出す。
 この辺りでは使われない珍しい紙を使った手紙だ。
 見たところ、魔性植物を使っている。かなり貴重な代物で、前にナタリーから聞いたのだが、エルフ族特有のもので高尚な場で使うらしい。
 即ち大事な時に使われるものだった。

「魔性植物、神聖樹の葉だね。手触りも良いからインクの乗りも良い。私は好きだな、この紙」
「私もあまり使いませんが、耐火性や呪い耐性も強力ですからね。しかし大事なのは……」
「この紙の意味していることだね。それだけの事態が起こっている証拠だ」

 手紙の材質を見ただけである程度の察しが付いた。
 けれど内容を見てみないと真偽は不明。
 ナタリーに理を貰い、ルカは丁重に手紙の封を切り直し読んでみた。

「えーっとなになに……あっ!」

 ルカは小さな声を上げた。
 目を見開いて、眉根に皺を寄せる。
 ナタリーはかなり訝しむ。何か問題があったのかと思われたが、そんな段階の話じゃない。

「どうされましたか、ルカさん?」
「ナタリー。これはダークエルフの文字だよね」
「はい。ダークエルフ特有の文字です」
「だろうね。読めるけど、読み難い……」

 ルカが読む手紙にはダークエルフ特有の文字で書かれていた。
 かなり読み難い。エルフ族の文字も古代文字に程近いせいか、読み方を習得するのは大変だ。けれどダークエルフの文字は余計に複雑化する。
 文体が変わるわけじゃない。文字の意味や独特の絵文字が使われて、脳の許容を余計に使うのだ。

「えっと、エルフ族の長様。これはナタリーのことだね。ちゃんとナタリー・ルランって、本名で書かれているね」
「そうなんです。即ち私の本名を知っていることから……」
「いたずらじゃないってことだね」

 ナタリーは幾つもの名前を持っているが、基本的にはナタリーをしか言わない。
 けれどルランまで知っているということは、ナタリーの信用足りる存在のこと。
 差出人の名前を見てみると、そこにはエルフの森の長であるダークエルフ……ルカには読めなかった。

「なんて書いてあるの?」
「この方の名前はディンネル・ハルファストと言います」
「ディンネルさんね。内容をざっと読んでみたけど、森で大事になっているみたいだ」

 手紙の内容を軽く読んでみると、ディンネルからナタリーに宛ててだった。
 何でもエルフの森で原因不明の火災が近ごろ起きているらしい。
 おまけにモンスターの出現頻度も高まり、事態の収拾に向けて助力を頼みたい旨が書かれていた。

「なるほどね」
「どう思いますか?」
「どう思いますもなにも……」

 ルカは考え込んでしまった。
 顎に手を当て手紙から目を離せなくなる。
 それもそのはず、如何もおかしなことになっていた。

 千年前から言いやもっと昔からエルフ族は基本的に森で暮らす。
 エルフ族、ハイエルフ族、ハーフエルフ族にダークエルフ族。様々な変化を遂げているのも事実だ。
 けれどこの手紙によるとそのうちの一つ、ダークエルフの長から。ハイエルフとダークエルフが助け合っているのは良いことだが、何故ナタリーに助けを求めたのか。それだけ火災やモンスターが異常なのか。考えれば考えるほど、話しの見え方が変わって来る。

「ナタリー、ディンネルさんの手紙によると、エルフの森? が大変なことになっているんだよね」
「はい。私も驚きました。昔からエルフ族は華奢なため、モンスターから襲われることもありますが、火災とモンスターの異状発生が同時なことは不気味ですよね」
「うん。それもそうだんけど……」

 正直そこじゃなかった。
 ルカの一番の疑問は如何してこの手の手紙を私に見せたのかだ。
 本来なら見せるべきじゃないのは判り切っている。それを平然と破るということは、きっと何かしらの意味があるのだろう。
 ルカはナタリーを怪しんだ。同胞の助けをルカに任せる理由を考えていた。
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